アイドルグループ「なにわ男子」のメンバーとして活躍している西畑大吾。存在自体がキラキラしており、多くのファンを幸せな気持ちにさせている"ザ・アイドル"だ。
彼はデビュー前から演技の才能を開花させており、2014年の連続テレビ小説「ごちそうさん」(NHK総合ほか)でテレビドラマ初出演を果たした後、2016年には連続テレビ小説「あさが来た」にも出演。その後、2018年には「大阪環状線 Part4 ひと駅ごとのスマイル」で宇崎竜童とW主演を務めるほか、数多くの映画や舞台に出演している。そんな西畑の役者としての才能が存分に楽しめる作品が、2023年に公開された映画「忌怪島/きかいじま」だろう。
同作品は、ジャパニーズホラーの第一人者である清水崇監督が手掛ける新しいホラーで、主演の西畑は主人公の片岡友彦を熱演。
天才脳科学者の友彦(西畑)は、VR研究チーム「シンセカイ」のチーフで脳科学者の井出文子(伊藤歩)にチームへの参加を依頼され、施設がある離島「忌怪島」へやってくる。
ホラーに最先端技術を掛け合わせた世界観に、清水監督のホラーの新しい扉を開こうとする "攻め"の姿勢が十二分に感じられるのだが、その監督のチャレンジ精神に対して、西畑が役者として芝居で応えており、ホラーと最先端技術という相容れない2つの橋渡しを担っている。
西畑が演じる友彦は天才脳科学者という役柄で、天才ゆえに他人と関わるのが苦手な"コミュ障"というキャラクター。
そもそも"コミュ障"なキャラは自己表現が下手くそなため「何を考えているのか分からない」という色が濃く、物語の中心でことあるごとに思考や感情を描かれる主人公には向いていないのだが、西畑はその両者のバランスを"いい塩梅"で表現。観ていて何を考えているのかは分かるが、伝え方が間違っている&伝えようとしないという、絶妙なところを突いている。
距離を縮めようとフレンドリーに話し掛けてくるチームのメンバーに対しても、友彦は自分が聞きたいことだけを尋ね、興味のない話は最後まで聞かないところや、話している相手を見ないで話すところ、乗っていたバスが故障して山本美月演じる園田環と一緒にバスを降ろされても、声などかけずにその場からすたすたと歩き去るなど、細かいディティールにまでこだわった役作りを基に、セリフ回しから視線の動きに至るまで、丁寧な芝居で社会性のない役に命を吹き込んでいる。
何より、ステージの上でのキラキラは全く鳴りを潜め、普段の西畑とは真逆に位置する根暗で不愛想な人物像を、「こっちの方が本性?」と思ってしまうくらいリアルに表しているところに、圧倒的な演技の才能を感じざるを得ない。芝居の本質は「フィクションにどれだけ説得力を持たせられるか」なのだから。
加えて、ホラー作品の中核となる"人ならざる者との戦い"とは別に、環と関わることで人として成長していく姿も演技で描いており、"ただ怖いだけの作品"に止まらないようにしている。"しっかりと怖い"のに、人間ドラマとしても見応えがあるものに引き上げているのだ。心を刺激してゾクリとさせるジャパニーズホラーの真髄を操ってきた清水監督が描く"心の成長"を、西畑は怖さを損なわない"いい塩梅"で表現してどちらも成立させている。
(C) 2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会
西畑、山本のほかに生駒里奈、平岡祐太らも出演し、仮想世界と現実世界が交錯する戦慄のホラーに仕上がっている本作。"役者"としての西畑による"いい塩梅"の演技が作品にもたらしているものに注目してみると、より一層楽しめること請け合いだ。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
忌怪島/きかいじま
放送日時:2024年5月19日(日)9:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます