「もしこれから誰かと恋をするとしたら、それを最後の恋だと思うのはやめよう。次の恋は、最後から二番目の恋だ。

その方が、人生はファンキーだ」

小泉今日子と中井貴一のダブル主演で、古都・鎌倉を舞台に繰り広げられる大人たちの恋愛と青春を映し出すホームコメディ「最後から二番目の恋」シリーズ。2012年1月に第1期が放送されると、同年11月には「最後から二番目の恋 2012秋」と題してスペシャルドラマ版が、2014年4月には「続・最後から二番目の恋」が放送された。そして今春、約10年の時を経て「続・続・最後から二番目の恋」が放送中だ。

小泉今日子&中井貴一「続・続・最後から二番目の恋」、変わらぬ日常と、心の支えになる言葉たち
千明(小泉今日子)と和平(中井貴一)、長倉家の些細で賑やかな日常が描かれる
千明(小泉今日子)と和平(中井貴一)、長倉家の些細で賑やかな日常が描かれる

同シリーズは、大人の恋愛模様を軸に描く作品でありながらも、ロマンチックな恋愛ドラマの王道を通ってはいない。むしろ恋愛の描写に重きは置かず、ホームドラマのような親しみやすい空気感の中で、恋愛のみならず、それぞれの仕事や日常の中での些細な出来事がゆったりと描かれていくところが魅力だ。そして、そこに登場する千明と和平を始めとした等身大のキャラクターたちと、彼らの軽快なテンポの掛け合い、その会話の中にある、じんわりと胸に響く名ゼリフに、心をぎゅっと掴まれる。

4月より放送中の「続・続・最後から二番目の恋」では、キャラクターたちも年齢を重ね、千明は59歳、和平は63歳に。特に千明(小泉)は定年を間近に迎え、セカンドキャリアや今後の人生についてなど、年齢も人生経験も重ねたからこその悩みを抱える。千明と和平(中井)、そしてそれを取り巻く人たち、それぞれの悩みごとや生き方も変わっていく様子が映し出されている。現在第7話まで放送された本作を、セリフと共に振り返ってみたい。

■「寂しくない大人なんていない。大人は自分の時間が有限なことも、今から大きな素晴らしいことが起きないことも知っているから」/吉野千明<第1話>

小泉今日子&中井貴一「続・続・最後から二番目の恋」、変わらぬ日常と、心の支えになる言葉たち

社内の新規企画募集の貼り紙に書かれた歴代代表作、そこには千明の作ったドラマのタイトルは並ばない。

海外の映画祭で賞をとった後輩を祝い、祝賀会のために軍資金を渡すものの、別の後輩から皮肉を言われる...。飲みに誘った女友達は今日に限って予定が合わず、帰り道に何もないところでつまずいて転ぶ始末。そんな小さな厄日の帰り道、千明はこんな切ないことを考えていたのだ。

そんな中、帰り際に最寄りの改札前で定期券を探していると、和平が通りかかり、千明の服装を見ただけで定期券の在り処を言い当てる。そして2人は他愛もない話をしながら岐路につく...。

そんな千明の心の中には、こんな言葉が続く。「でも、こうも思うのだ。老後なのかセカンドライフなのかわからないけど、それも一緒に笑ってネタにして共に生きる人がいれば、それならば、なんとか乗り切れるんじゃないかなと。家族でも夫婦でも友人でも、隣人でも。何でもいいけど誰かいてくれれば。気の合うやつが隣に」。寂しくない大人なんていない、は切ない言葉ではなく、"寂しくても大丈夫"。

そんな前向きで優しい言葉にも聞こえる。そんなところから、「続・続・最後から二番目の恋」が始まっていく。

■「無理したい年頃ってあるんだよね。無理できてる自分が嬉しいって言うかさ」/長倉和平<第2話>

小泉今日子&中井貴一「続・続・最後から二番目の恋」、変わらぬ日常と、心の支えになる言葉たち

定年後も鎌倉市の観光課で指導監として働く和平。新人の通訳スタッフ・早田律子(石田ひかり)の言動にあたふたしたり、元部下からミスを押し付けられたりと、相変わらず困りごとが集まってくる忙しい日々。そんな中で、娘・えりなに「無理しないでよ」と言われた和平は、「無理できてる自分が嬉しい」と返す。

千明との飲みの席でも、鎌倉市の日本遺産にかかわる重要な案件を任されたことを話し、「困ったなあ」といいながらも、「嬉しいというのかな、自分の背筋が伸びているなという感じがする」と話す和平。たびたび"困りごと"を持ち掛けられ、いつもそれを放っておけないという場面がこれまでにも描かれてきたが、そんな"困りごと"はいつしか和平の原動力になっていたのだ。

一方の千明の原動力は"怒り"。新規企画募集の貼り紙に自分の作品が載っていないこと、その不甲斐なさへの怒りを糧に、「月9企画募集」に応募することを決意する。

■「すごい怖いし大冒険だと思うけど、ちょっとワクワクしている自分もいて」/水谷典子<第3話>

小泉今日子&中井貴一「続・続・最後から二番目の恋」、変わらぬ日常と、心の支えになる言葉たち

近所のコンビニで、「湯煙美人」のグラビア撮影にスカウトされた長倉家の長女・典子(飯島直子)。長倉家の面々が心配する中、千明は「典子がやりたいなら応援する」と背中を押す。"怖いけど、ワクワクしている"、そんな本音を吐露する典子。

新たな挑戦への不安や楽しさという葛藤が入り混じる一言が共感を呼ぶ。

そこから、2人の話は"働く独身女と専業主婦の対立"の話に。専業主婦の典子は時代の空気が変化する中で、「(独身女性に比べると自分は)闘っていないと思っちゃう時があるんだ」と弱音。そんな典子を千明が励ます。正直者で時に毒舌なこともいうが、自分と違った立場の人間のことも尊重しているし、肯定する。そんな千明の人間性が滲み出ている場面だ。

■「困るというのは、誠実で愛があること。あなたはいつだって真剣に困っている」/伊佐山良子<第4話>

小泉今日子&中井貴一「続・続・最後から二番目の恋」、変わらぬ日常と、心の支えになる言葉たち

鎌倉市長・伊佐山良子(柴田理恵)に呼び出され、彼女の後継者として市長選に立候補することを勧められた和平。断ろうとする和平に、市長は「鎌倉のために"困る"のが、鎌倉市長の仕事」と語る。いつも誰かのためにまっすぐに困っている和平を見込んでの話だった。戸惑う和平だったが、千明にも"困り"が和平の原動力と言われたことを思い返していた...。

一方の千明は、"千明と一緒に働くこと"だけをモチベーションに働く長倉家の次女・万理子(内田有紀)の将来を案じ、番組の企画を出すよう言ったものの、万理子の様子がおかしいことに気付く。

脚本家として成長する一方、"大好きな千明から離れたくない"という強い思いから、成長を拒否して泣きわめく万理子。そんな万理子を、千明は親離れだと褒め、「成長っていうのはさ、したくてするもんじゃなくてさ、いつのまにか成長しちゃうもんなんだよ」と優しく包み込む。

■「人としては好きだなあって思う」/長倉えりな<第5話>

小泉今日子&中井貴一「続・続・最後から二番目の恋」、変わらぬ日常と、心の支えになる言葉たち

父・和平が仕事仲間に自分のことを、"娘はいまだに親離れせず、「お父さん、お父さん」と寄ってくる"と見栄っ張りな噓をついて話していたことを知った娘・えりな。理想の娘じゃないことを申し訳なく思ったえりなは、たまにはゆっくり話そうと、和平と千明のことを長倉家のテラスに呼び出す。えりなは「私は今の親子関係、悪くないなあと思っていて」と語りだすと、和平は亡き母の分も頑張ってくれたこと、自分も思春期の時には父に八つ当たりして冷たくあたっていたことを思い返し、涙する。そんな反抗期も乗り越え、親の愛情や家族の有難さを知ったという娘の言葉に成長を噛みしめる和平。亡き妻のいる空を見上げて、「大人になったよ。素敵な大人に。君にそっくりだ」と呟く。

同シリーズに出てくるセリフの数々は、大げさな名言や人生を劇的に変えてくれるような革命的な言葉ではないかもしれない。それでも、何気ない会話の中で放たれる温かく前向きな言葉たちは、人生の支えになってくれるお守りのような言葉たちだ。

第8話以降も続いていくであろう、それぞれの日常と悩み。10年の時を経た千明と和平、そして長倉家の面々がどんな人生を歩んでいくのか、後半戦も楽しみだ。

文=HOMINIS編集部

放送情報

続・続・最後から二番目の恋 第6話
放送日時:2025年6月2日(月)21:00~ ※毎週(月)放送
チャンネル:フジテレビ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

<配信>
FODにて全話配信中:https://fod.fujitv.co.jp/title/803c/?waad=zEAtXymS

最新の放送情報はスカパー!公式サイトへ

編集部おすすめ