昨年公開された映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」(2025年)で映画出演本数は124本に達し、デビュー以来、約65年にわたって第一線で活躍し続け、日本の映画界を代表する俳優として多くの名作に出演している吉永小百合。
吉永のファンは"サユリスト"と呼ばれ、タモリなど数多くの著名人も"サユリスト"を公言してはばからないほどの強烈な魅力を携えた大スターだ。
一方、強面の役から情けない中年男性の役まで、演技の幅の広さでは右に出る者がいない名優・三浦友和。1970年代に二枚目俳優として一世を風靡し、1980年代にはシリアスな芝居からコミカルな芝居まで硬軟いずれもこなせる演技の幅の広さを印象づけ、渋みを増してきた2000年代以降は日本アカデミー賞やブルーリボン賞など数々の映画賞の助演男優賞を獲得し、2012年には紫綬褒章を受章、2023年には旭日小綬賞を受章し、その演技力は文化的貢献度も高く評価されている。
■繊細な感情表現がストロングポイントな吉永と三浦の化学反応は必見
吉永は1957年デビュー、三浦は1972年デビューと、吉永の方がかなり先輩に当たるのだが、この2人の共通点として"繊細な感情の移ろいの表現"が巧みなところが挙げられる。そんな2人の共通するストロングポイントが堪能できる作品が、日曜劇場「小ぬか雨」(1980年、TBS系)だ。
同ドラマは、藤沢周平の短編集「橋ものがたり」に収められている一篇を砂田量爾が脚色したもので、吉永と三浦が初めて本格的に共演した切なく激しい恋の物語。追われる男性と、その男性を匿うことになった女性との、世を忍ぶ10日間の恋を描く。
おすみ(吉永)は、突然家に逃げ込んできた新七(三浦)という殺人犯を匿うことに。初めこそ、ただ放ってはおけないとそれだけの気持ちだったが、一緒に暮らしているうち、おすみは新七を愛し始めていた。10日後の小ぬか雨の降る夜、新七は見回りが打ち切られたことを知る――。
このドラマでは、時代劇という世界観の中で、いつの時代も変わらない人間らしさを描く藤沢周平作品の醍醐味が凝縮しており、それまでどこか人生を諦めていたおすみが、人生が変わるほどの運命の出会いをしたことで人生が色付くさまや、逃亡中のため長居は許されない状況にも関わらす気持ちがおすみに向いてしまう新七の揺れる思いなど、"障害が多いほど燃え上がってしまう恋心"を瑞々しく描いている。
■観る者も引き込む丁寧な演技のやりとり
そんな藤沢文学の繊細な心の機微を、吉永と三浦は丁寧に描き出している。互いに、駄目だと分かっていながらどうしても惹かれてしまう"理性と感情のギャップ"を、表情や視線、せりふ回し、所作に落とし込み、演技によって"恋に堕ちていく"ように観る者もキャラクターの感情に引き込んでいくところが圧巻。
これは"体面と本音の表現のバランス"が絶妙だからこそ成せる技で、当時の吉永は35歳、三浦は28歳と、役者としてはまだまだ若手の時代に、ここまでの域に達していることに驚かされる。
藤沢周平作品の醍醐味を、十二分に表した吉永と三浦の繊細な感情が移ろう表現に心奪われながら、2人の今に通ずる演技の奥深さに思いを馳せてみてはいかがだろうか。
文=原田健
放送情報
日曜劇場「小ぬか雨」
放送日時:2026年3月21日(土)7:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

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