【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】
本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。
サイコグラフィックとは、人々の性格、価値観、ライフスタイル、興味・関心といった内面的な傾向を多角的に捉える指標です。
これは、マーケティング戦略における市場細分化(セグメンテーション)において、顧客が「なぜ」商品やサービスを購入するのかという心理的側面を明らかにするために用いられます。
特に飲食店や小売業界など、飽和状態にある業界で生き残るためには、顧客の心に響く商品やサービスを提供することが必要になるため、押さえておきたいマーケティング用語の一つです。
本記事では、サイコグラフィックの概要と重要性、データの活用法や収集方法について詳しく解説します。
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- サイコグラフィックとは
- サイコグラフィックの重要性
- サイコグラフィックとデモグラフィックとの関連性
- サイコグラフィックデータの活用方法
- ペルソナマーケティングに活用する
- ターゲットの潜在ニーズを発掘する
- WEB広告に活用する
- サイコグラフィックデータを収集する方法
- 1. 個人へのアンケートやインタビューをおこなう
- 2. グループインタビュー(座談会)を開く
- 3. アナリティクスでデータを収集する
- 4. パネル調査で長期的に調査する
- 5. 既存顧客データやWebサイト・SNSの行動履歴から推測する
- サイコグラフィックはマーケティング戦略に不可欠
目次
サイコグラフィックとは
サイコグラフィックとは、ターゲット層の心理的側面を分析する指標で、性格・価値観・ライフスタイルなどをさします。
具体的には、以下の要素が含まれます。
- ライフスタイル: インドア派・アウトドア派、都市生活者・地方生活者、健康志向、ミニマリスト志向など
- 価値観: 環境意識、社会貢献意識、質重視・価格重視、安定志向・挑戦志向など
- 性格・パーソナリティ: 外向的・内向的、慎重・衝動的、協調性・独立性など
- 興味・関心: 趣味(スポーツ、読書、旅行など)、関心のある分野(テクノロジー、アート、ファッションなど)
- 意見・態度: 特定の社会問題に対する見解、商品やサービスに対する肯定/否定的な態度など
マーケティング戦略のスタートにあたる市場分析の段階で、適した市場を見つける際に役に立つ要素です。サイコグラフィックを活用してターゲットを細かく絞ることで、効果的なマーケティングにつながります。
サイコグラフィックの重要性
サイコグラフィックは、現代のような価値観が多様化している社会において、顧客ニーズをより明らかにするうえで重要な役割を果たします。
多様な商品・サービスが供給されニーズが満たされやすい状況下では、「20代女性」といった大まかなターゲットでは顧客に刺さりません。顧客が商品やサービスを「なぜ」購入するのか、その動機や感情を理解することで、より深いニーズに応えることが可能になります。
サイコグラフィックデータを活用して、よりリアルなターゲットを想定することで、本人に直接訴えかけているような商品やサービスが開発できます。心理的なデータを得ることで、効果的にアプローチするキャッチコピーや広告の作成が可能になり、収益拡大につながります。
また、明確なターゲットを絞ることで、どこに、どのように広告を出すべきかが明確になり、効果的な販売ができます。
顧客の心理的な面を探ることでマーケティングの幅が一気に広がるため、サイコグラフィックはきわめて重要な役割を果たします。
サイコグラフィックとデモグラフィックとの関連性
サイコグラフィックとデモグラフィックの関連性は高く、両方とも活用することでターゲット層を抽出しやすくなります。サイコグラフィックは、性格・価値観・ライフスタイルなど定性的側面をもちますが、デモグラフィックデータは、年齢・性別・職業などの事実に基づいた定量的なものとなります。
デモグラフィックデータは購入者の「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「どのくらい」購入したのかを示すデータであるのに対し、サイコグラフィックデータは購入の「なぜ」を探るためのデータといえます。
たとえば、デモグラフィックデータから「30代独身女性」をターゲットにしたとします。サイコグラフィックデータを使えば、30代独身女性でも「インドア派・アウトドア派」「仕事重視・プライベート重視」「自炊派・外食派」など、さらに詳しく分類できます。
このようにサイコグラフィックとデモグラフィックの両方を考慮すれば、ターゲット層を具体的かつ正確に設定できるのです。
関連記事:デモグラフィックとは?マーケティングに不可欠な顧客理解の第一歩を徹底解説
サイコグラフィックデータの活用方法
本章ではサイコグラフィックデータの活用方法と効果について解説します。ペルソナマーケティングに活用する
サイコグラフィックで具体的なターゲット層を明確に設定することで、ペルソナマーケティングを可能にします。効率的な集客や興味・関心に合った広告制作ができるので、適切な顧客の獲得につながります。
たとえば、デモグラフィックデータだけでは「20代女性」というように無機質的な人物像となりますが、サイコグラフィックデータを加えれば「平日は働き詰めだが、休日は登山やアウトドアが好きでよく遊びに行く20代女性」とリアルな人物像を描き出せます。
心理面の特性を描き出すサイコグラフィックを活用することで、集客・広告・販売促進などのマーケティングに活かせます。ターゲット層の心理を具体的に描き出せれば、効率的な集客や興味・関心に合った広告制作ができるので、適切な顧客の獲得につながります。
ターゲットの潜在ニーズを発掘する
サイコグラフィックデータはターゲット層の潜在ニーズを引き出すのに役立ちます。潜在ニーズとは、自分では意識していないが何か明確な欲求がある状態のことです。たとえば「お洒落になりたい女性」は、「お金の余裕はないからお手頃価格の商品でお洒落したい」や「授業参観があるので子どもやほかの保護者に見られても恥ずかしくないようなお洒落がしたい」などの欲求をもっているかもしれない、と深掘りできます。
そうすることで、小学生のお子さんを持っているお母さんたちは同じような悩みを抱えている人が多いのかもしれないという仮説が立ち、ニーズにあった商品やサービスの開発につながります。
このように、サイコグラフィックデータは心理的な部分を指標とするため、表面では見えない部分から新たな可能性を引き出してくれます。本質的な部分を見いだすことで、よりターゲットに響く広告や販売戦略にもつながります。
WEB広告に活用する
WEB広告では、ターゲットの属性や行動に合わせて配信先を絞る「ターゲティング広告」が可能です。特にサイコグラフィックの情報(ライフスタイルや価値観、興味・関心など)を基に設定することで、より関心度の高いユーザーに対して直接アプローチすることができます。
多くの施策では予算に限りがあるため、無駄な配信を避けて広告効果を最大化するには、こうした心理的・行動的な特徴に基づくターゲティングが有効です。
サイコグラフィックを活用することで、限られたリソースでも効率的な集客や訴求が期待できます。
サイコグラフィックデータを収集する方法
本章では、サイコグラフィックを活用するための収集方法について4つ解説します。1. 個人へのアンケートやインタビューをおこなう
サイコグラフィックデータを詳細に収集する場合、自宅や街頭、企業オフィス、ショッピングモールなどでアンケートやインタビューを実施します。
ただ結果の質を確保するためには、誰にアンケート・インタビューを行うのか選定基準を明確にする必要があります。
回答率が高く的確なデータを収集できるでしょう。
2. グループインタビュー(座談会)を開く
テーマをある程度設定して、複数人での座談会を開くことで効率よくデータを集められます。例えばデモグラフィックデータにもとづき、ターゲットを30代既婚女性に設定し座談会を開きます。その際、参加する女性の背景(年収・職業など)を揃えるのかバラバラにするのかは、目的に応じて決めておきましょう。
そうすることで、1人ひとりに直接話を聞くよりも、的確なターゲット層の話が一度に聞けるので効率よくデータを集められます
また、テーマにそって話し合う中で、進行役が5W1Hなどを駆使して深掘りできる質問を用意しておきましょう。潜在ニーズの掘り起こしに有効です。3. アナリティクスでデータを収集する
アナリティクス調査をすることでサイコグラフィックデータが集まります。SNSのアナリティクスを参照したり、メルマガや公式LINEのデータ情報を活用しましょう。メルマガや公式LINEのデータ収集では、質問を2種類に分けて結果を分析する方法もあります。「仕掛け的な内容」と「リスク回避の無難な内容」に分けることで、メールやLINEの開封率からターゲット層の好みや関心、性格などが見えてきます。
この「仕掛け的な内容」とは、ターゲットが普段はあまり意識しないような、あるいは少し踏み込んだ「欲求」や「願望」に触れる質問を指します。
たとえば、「【無料診断】あなたの隠れた才能、まだ眠ってませんか?」や「もしタイムマシンがあったら、最初にいつ、どこへ行きますか?」といった件名や冒頭の質問がこれに該当します。
これに対する反応(開封率やクリック率)を見ることで、そのターゲットがどれだけ冒険心や新しいことへの興味があるか、あるいは自己表現欲が強いかなどを測ることができるでしょう。
一方、「リスク回避の無難な内容」は、ターゲットが日常的に抱える「悩み」や「不安」、あるいは「堅実なニーズ」に寄り添う質問です。「【要注意】〇〇(よくあるトラブル)から身を守るには?」や「忙しいあなたへ。
これに対する反応から、彼らがどのようなリスクを避けたいと考えているか、安定や安心を重視しているかなどを把握できるのです。
これらの質問例を参考に、あなたのメルマガやLINEのターゲット層に合わせて調整してみてください。件名や冒頭の文面だけでなく、その後のコンテンツが質問内容と連動していることで、より効果的な分析が可能になります。
4. パネル調査で長期的に調査する
パネル調査とは対象者を固定(パネル化)し、一定期間同じ質問をくり返すアンケート調査です。半年から数年にわたることが多く、データの変遷をたどるのに役立ちます。つまり商品をいつどこで誰がどのくらい(頻度と数量)購入したのかを把握できるのです。
ただ、長期調査なので回答者への負担が大きいのがデメリットでしょう。負担が大きければ離脱者が増えます。回避するには、謝礼やギフトがある旨を予め伝えておくなど工夫しましょう。
5. 既存顧客データやWebサイト・SNSの行動履歴から推測する
顧客がECサイトで閲覧した商品や購入履歴、Webサイトでの滞在時間、SNSの投稿内容や「いいね」の傾向、検索履歴などからも、間接的にサイコグラフィックデータを推測することが可能です。
これらのデータは、顧客の興味・関心や購買行動の傾向を把握する上で非常に有効です。ただし、あくまで推測であるため、アンケートやインタビューと組み合わせて検証することが重要です。
サイコグラフィックはマーケティング戦略に不可欠
サイコグラフィックは外見ではわかりづらいターゲット層の心理を顕在化させます。心理的要素は、購買行動の指標になるのでマーケティングには不可欠です。サイコグラフィックデータの収集・分析で顧客の思いが明らかになれば、顧客に響くCM制作や広告・チラシの作成など、適切なマーケティング戦略を立てられ、飲食や小売業界など競争が激しい業界において差別化が図れます。
自社商品・サービスのリピーターを増やす重要な要素になるため、顧客の心理的要素であるサイコグラフィックについての理解を深めましょう。
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