徳川家康や織田信長、豊臣秀吉──戦国の名将たちが手にした名刀の数々が、時を越えて一堂に会する。徳川美術館・蓬左文庫の開館90周年を記念した特別展「時をかける名刀」が、6月14日(土)から9月7日(日)まで開催される。

国宝や名物刀剣を含む珠玉の名刀を通して、武家文化の精髄と歴史の記憶を辿る展覧会だ。

家康・信長・秀吉ゆかりの“語る刀剣”

同展の中核となるのは、尾張徳川家伝来の刀剣コレクション。国宝10振、重要文化財19振、名物刀剣23振を含む約700振という、国内最大級の規模を誇る。

名刀は武器であるだけでなく、贈答品・権威の象徴・祈りの対象としても扱われ、歴代の為政者たちの生き様や美意識が刻まれている。

国宝 太刀 銘 長光 名物 津田遠江長光

重要文化財 脇指 無銘 貞宗 名物 物吉貞宗

たとえば「津田遠江長光」は、信長が本能寺で斃れたのち、明智光秀によって持ち出されたとされる刀。「物吉貞宗」は、家康が勝運を願って帯びた縁起刀として知られる。

ただ展示するのではなく、“語る刀剣”として、それぞれの物語を丁寧に紐解いていく構成となっている。

伯仲の美、「本作長義」と「山姥切国広」が並ぶ奇跡

前期(6月14日(土)~7月27日(日))の目玉は、「本作長義」と「山姥切国広」の同時展示。

姿形が酷似していることから“本歌と写し”とされ、現存する唯一のペアとして名高い両刀。ともに重要文化財に指定されている。

重要文化財 刀 銘 本作長義天正十八年庚寅五月三日二九州日向住国広銘打 長尾新五郎平朝臣顕長所持 天正十四年七月廿一日 小田原参府之時従 屋形様被下置也 徳川美術館蔵

重要文化財 刀 銘 九州日向住国広作 天正十八年庚寅貳月吉日平顕長(号 山姥切国広) 公益財団法人足利市民文化財団蔵 (前期公開:6/14~7/27)

戦国時代、小田原合戦に籠城していた長尾顕長が国広に作らせた「山姥切国広」は、「本作長義」への敬意を込めた写しとも言われている。

かたや尾張徳川家、かたや足利市──それぞれの地で継承されてきた名刀が、今ふたたび並び立つ。

後期には“三日月宗近”や“日向正宗”も登場

後期(7月29日(火)~9月7日(日))には、東京の名刀たちが名古屋へ。

天下五剣の中でも最も美しいと称される「三日月宗近」や、正宗作の中でも屈指の名作「日向正宗」など、他館所蔵の名品も特別公開される。

国宝 太刀 銘 三条 名物 三日月宗近 東京国立博物館蔵(7/29~9/7)

国宝 短刀 無銘正宗 名物日向正宗 三井記念美術館蔵(7/29~8/11)

さらに、刀剣の見どころは“刀装”にも及ぶ。

儀礼用にあつらえた豪華な拵、漆黒の蝋色塗、個性の光る私的な装飾──刀剣に与えられた役割と場面に応じた美意識が浮かび上がる。

名刀を通じて、武家文化の核心にふれる

同展が届けるのは、刀剣を鑑賞するだけでなく、それぞれが歩んできた時間や使われた文脈を感じる体験でもある。

刀剣の世界に初めて触れる人も、長年の愛好家も──この夏、名古屋で“本物の時間”に出会ってみては。

徳川美術館・蓬左文庫開館90周年記念 夏季特別展「時をかける名刀」
会期:6月14日(土)~9月7日(日)
場所:徳川美術館 本館展示室・蓬左文庫展示室
所在地:名古屋市東区徳川町1017
時間:10:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:月曜(7月21日・8月11日は開館、翌火曜休館)
料金:一般1,600円
公式サイト:https://www.tokugawa-art-museum.jp/touken2025/

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000126379.html

(山之内渉)

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