喧騒を離れ、ただ静けさに身を置き、想いを“手紙”としてのこす。京都・祇園の禅寺「西来院」にて、8月1日(金)から17日(日)まで開催される夏季限定の手紙茶寮「のこす。」は、現代人のための祈りの体験空間だ。
ここで供されるのは老舗京菓子司「鶴屋吉信」の涼菓「本蕨 抹茶」。言葉と味覚が交差する17日間が、記憶に刻まれる。
心と向き合う“手紙行”という新しい祈りのかたち
「のこす。」は、訪れた人が今は会えない人へ想いを綴る“手紙行”を体験できる茶寮だ。仏教における写経や念仏と同じく、書くことを一つの修行ととらえ、静かな空間で心と向き合う。京都・祇園の禅寺「西来院」を舞台に、涼やかな縁側、臈纈染の暖簾、文机や立礼台が並ぶ演出空間が来訪者を迎える。

演出を手がけるのは、伝統文化の継承と現代的表現の融合を追求する“伝統演出家”西井将哉氏。映画の小道具美術に用いられる品々が、かつての暮らしの温度感を蘇らせる。こうしたディテールの積み重ねが、“手紙を書く”という体験に特別な重みを与えている。
鶴屋吉信「本蕨 抹茶」と祇園辻利「冷煎茶」が誘う、五感の休息
手紙行の後に供されるのは、鶴屋吉信がこの茶寮のために用意した「本蕨 抹茶」。京都府産宇治抹茶を贅沢に用いた逸品で、ぷるりとした口当たりと清々しい香りが、夏の疲れをすっと癒す。盛りつけには、本堂前の枯山水庭園「峨眉乗雲」を模した清水焼の器を使用。祇園辻利の冷煎茶とともに供される一皿は、単なる“和菓子の提供”を超え、ひとつの風景を味わう体験となっている。

この茶寮で過ごすひとときは、言葉に想いを込め、文字で感情を掘り起こし、手のひらで本蕨をすくい、口の中にひんやりとした余韻を広げる。五感すべてで味わう、いわば心と向き合う儀式だ。
文化を継ぐ、美味を残す。この夏だけの特別な時間
「のこす。」の売上の一部は、西来院の文化財修繕へと充てられる。寺院離れ、和菓子離れが叫ばれるなか、こうした体験が生む“感動の記憶”こそが、文化の未来をつなぐと信じられている。伝統とは、誰かに受け継がれてはじめて意味を持つ。

手紙茶寮「のこす。」は、観光やグルメといった従来の京都体験とは異なる、内面に触れる贅沢を提供してくれる。真に豊かな時間とは、何を得るかではなく、何を“のこす”かで決まるのかもしれない。
西来院 夏季特別公開 / 手紙茶寮「のこす。」
開催日時:8月1日(金)~8月17日(日)10:00~17:00
※8月8日(金)、9日(土)、10日(日)は13:00まで
会場:西来院
所在地:京都府京都市東山区小松町590
拝観料:500円 ※各種体験については別途金額が必要
公式Instagram:https://www.instagram.com/nocosu.official/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000127.000045479.html
(Fumiya Maki)