今回のコラムのテーマは、芦田愛菜(2004年6月23日生れ)の読書法から、読書感想文の書き方を学ぶ、である。

彼女の初の著書『まなの本棚』(小学館)を引用した
演技ブログ『でびのーと☆彡』の『演じる能力を磨く、芦田愛菜さん式読書法』を参考文献とさせてもらった。


参考文献は、読書法によって、演技に繋げているが、こちらのコラムでは応用先として読書感想文を選択した。
早速kindleで読んでみると、芦田愛菜の読書が楽しい勢いに溢れていて好感を持った。
アマゾンの低評価レビューで「読書感想文」とあったが、読書感想文をナメてはいけない。
上等な読書感想文は、本になり得るのである。
この本は、本の楽しさを知らない人のために書かれていると観た方が方向性は合っているのではないか?
旅行に行けなくなった大人が自主的に夏休みの宿題として、読書感想文を書いてみてはどうだろうか?
コツを教えてくれる筈だ。
そこで自称読書感想文達人の筆者が、芦田愛菜のこの本の活用法を解説してみる事にする。

読書嫌いは芦田愛菜の著書『まなの本棚』にまなぶべき!?芦田愛...の画像はこちら >>

(初の著書『まなの本棚』PR写真。2019年7月18日付スポニチから引用 イラストby龍女)

読書感想文を仕上げるため大事な下準備から、書き方まで伝授しよう。
まずは本選びからである。
読書感想文には、課題図書か自由に選ぶものがあると考えられるが、主流はおそらく課題図書であろう。
しかし、いきなり興味のない課題図書を読書感想文で書こうとすると、本が嫌いと感じている人にはハードルが高すぎる。
『まなの本棚』のPRを兼ねて、週刊朝日での作家林真理子との対談で、読書感想文に関しての鋭い指摘があった。


林:うちの娘、いま大学3年生なんですけど、まるっきり本を読まないんですよ。子どものころ『赤毛のアン』を渡したら、「こんなきれいごと、フン!」とか、「ウザい!」って言うんです。

芦田:アハハハ。

林:「家の本棚に本があったら、子どもはみんな読みますよ」と言う人がいたんだけど、まったくそれは間違いで、うち、渡り廊下に書棚があって、本が2千冊ぐらいあるんです。

芦田:わぁ、すごぉい!!

林:だけど娘は、そこを毎日通りながら、まったく読まないの。なんで本を読む楽しさをわかってくれないんだろうと思って、ほんとに悲しくなっちゃうんです。本が嫌いになるきっかけの一つに、夏休みに読書感想文を書かされるというのがあると思うんですけど、そういうことはありませんでした?

芦田:強制されて読む本は、自分で選んだ本よりかはおもしろさが減ってしまうというか、やっぱりあんまり積極的になれませんでしたね。

読書嫌いは芦田愛菜の著書『まなの本棚』にまなぶべき!?芦田愛菜式読書法に読書感想文が楽に書けるヒントがあった!

(2019年08月24日付の朝日新聞社系のWEB記事から週刊朝日の対談からの抜粋。右から林真理子と芦田愛菜 イラストby龍女)


このコラムのテーマを否定されかねない問いかけではある。
しかし、読書感想文を書かされるところから逃げるのはもったいない。
正直、筆者は読書感想文に関してコンクールで受賞した経験はないが、苦痛に感じた記憶もない。
対談でも指摘されたように、感想文を書きやすくなる方法はある。

自分で選んだ本を使った、読書感想文を書くのはいかがだろうか?
そもそも、本が嫌いだと読むのも辛いし、文自体が書く事も苦痛な人がいる。
本が嫌いな人はそもそも周囲に本好きな大人がいなかった人も多かろう。
本の楽しい読み方を知らないのだ。
本が好きな人は遊びの延長で数ある選択肢の中で本を選んだのに過ぎない。
本好きでも林真理子のようにどんな本を読むべきか強制すると、娘が親の反動で本嫌いになるケースも考えられる。
別の角度から推察するに、大学まで進学しているので、まったく本を読んでいない事はあり得ない。
おそらく林真理子の娘は、母親が背負っている文学少女臭が嫌いなだけで、まったく別のジャンルの本を好んでいる可能性もある。
筆者はそこそこ本好きではあるが、親と、同じ本は読まない。
母が太宰治が好きだったので、自身は三島由紀夫を選んだ。
父は歴史小説が好きだが、歴史学者の本の方が好みだ。
両親が強制せずにどんな本を読んでも良い環境を作り、読んだ本の話題が家族の会話や友人の会話に含まれていると、その子は本好きになる。
その最も分かり易い例が芦田愛菜である。


『まなの本棚』第一章 語り出した止まらない! 芦田愛菜の読書愛
この中の「背表紙がキラリと光って見えるんです」と言う項の中に重要な一文があった。

 もし、どんなふうに自分にとっての「運命の一冊」に出会えるのか考えるなら、まずは「大好き!」「これについてもっと知りたい!」と思えるような、興味の源をたどっていって、その感心にまつわる本を探していく事かなって思っています。(27頁1行目~4行目)

この後に、具体例が並べてある。
要約すると

「ゲーム好き」
①RPGのように物語形式で進む
②ゲーム攻略
③ゲーム開発者の著書

「野球好き」
①野球小説:主人公が頑張る、或いはチームのメンバー達の友情物語
②プロ野球選手が書いた本
③野球の歴史やトリビア

そこを入り口として、またつぎつぎと本の世界も自分の興味も広がっていくんじゃないでしょうか。(27頁11行目~12行目)

これを他に好きなジャンルに応用すると、
①好きなジャンルにまつわる物語
②好きなジャンルの専門家が書いた本
③好きなジャンルの歴史やトリビア
と整理される。

とここで、いったん課題図書は何だったか振り返ってみよう。
課題図書の表現形式はなんだろうか?
この三つのうちどれかに当てはまるはずだ。
課題図書はジャンルに関しては好きではないかもしれないが、「物語」か「専門書」か「歴史」か読書感想文で取り上げたい形式をなんとなく選ぶ。
好きなジャンルの同じ形式の本を読んで、書く準備をしてみる。
読書感想文のコンクールの場合、応募要項があるので、字数制限と選ぶ本の形式に気をつけて、そのルールを守って書く事が最低条件だ。
コンクールに出す目的がなくても、コンクールに受賞できなくても、文章を書くルールを知る事は、重要だ。
相手に自分が何を考えているか、分かり易く伝える手段を手に入れる事が出来る。

読書感想文を書く事は決して無駄ではない。

さて本が決まったら、最後まで読み切ろう。

読むのが苦手な人は分厚そうな本を読むのは避けた方が良い。
自分にとって簡単すぎる本を選ぶのも安易ですすめないが、難しすぎるのは文を書くと挫折してしまうので、ちょっと難しそうなモノを感覚的に選んで欲しい。
では、どうやって読書感想文を書くか?
大まか流れを次の頁で取り上げてみよう。
『まなの本棚』で登場する本の紹介がそのまま読書感想文の書き方と構成がほぼ同じなので、分析してみよう。

三つのルールを覚えれば、読書感想文のハードルは低くなる。
これは本に書かれている事ではなく、筆者が考えたやりやすい読書感想文の書き方である。

①簡単な感想をメモ書き
最初から原稿用紙に文を書こうとしない。
まずメモ書きしてみよう。
語彙力がないとまず「面白かった」「つまらなかった」しか出ないだろうが、感想文はその先のどう面白かったか、どうつまらなかったか?を聞かれているのでそこを書けるようにするのが重要である。
選択肢としては、「面白かった」と感じた本の方が書きやすくなるので、つまらなかったが強い本は感想文を書くのは止めよう。

次は「面白かった」本のどこが面白くて読み切る事が出来たか?
頭の中に残った印象をなんとか言語化してみよう。
書くのが苦手な人は面白かったところを口に出しながら文字に起こしてみよう。

②本のあらすじや一部を引用して、まとめてみる。
物語形式の場合は主人公がどう動いたか?
好きな登場人物の台詞をメモしておく。
専門書はどこを注目して書き進められているか?
気になった文を書き写してみる。
歴史は何から始まってどう変わったか?
トリビアの場合は気に入ったモノを引用してみる。
どうやってまとめていいか分からないときは、目次とあとがきまで読んでみる。
そこに本の全体像を教えてくれるヒントが隠されている。

③原稿用紙に書くときはメモした項目を4部構成で書く。
一、何故この本を選んだか?
二、本のあらすじ
三、本の中で気に入った箇所を引用したり、印象を書く
四、読み終わった後の感情を書き、「~と思いました」と文を終える。
筆者が書いているのは読書感想文の作法であって、分かり易い書き方に過ぎない。
読書感想文の内容は本来自由である。

形式は自由を阻害するモノではない。自分を表現するための過程として形式を用いる事は手段に過ぎない。
ただ形式にはめられるとつまらないと感じるのは、形式が出来た理由が分からないからである。

本を読むのと勉強が嫌いな人は、役に立つかどうかが即座に分かるものが正しいと思い込んでいるし、そういう目的の本もあるが、実はそういう本の方が賞味期限は短い。
実用書を読むのではなく、一見すぐに役に立つとは思えない本を読む事の楽しさを知らないのは悲しい。
結局のところ、読書感想文のために本を読むという本末転倒の事が起こってはいけない。
普段から沢山の本を読む必要はない。
せめて好きなジャンルの本だけでも読んで欲しい。
本は楽しんで読むモノだ。
楽しい本は何の役に立つかどうか?
想像力をきたえる事ぐらいかもしれない。
その程度の力がない人間が世の中にはうじゃうじゃいる。
想像力を放棄して他人の言っている事を信じているだけの本の読み方は危険だ。
それが役に立つ本だけ読む事の負の遺産である。

せめて読書感想文は一冊の本を読む向き合い方を自由に書くための形式にすぎないのだ。
だから、読書感想文が必要なのは子供よりも実用書を読みがちな大人の方であろう。

参考文献:小林でび『演じる能力を磨く、芦田愛菜さん式読書法!』(演技ブログ『でびのーと☆彡』)
芦田愛菜『まなの本棚』(小学館)

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