※『Fate/Grand Order』のネタバレにご注意ください。
※書かれているのはあくまでも編集部と筆者による妄想であり見解です。


『Fate/Grand Order』(以下、FGO)は、未来が失われた世界でプレイヤーがマスターとなり、歴史上の偉人や伝説上の存在、神霊といった「英霊」を従え、失われた人類の歴史を取り戻すために7つの特異点で聖杯を見つける旅に出るスマホ向けRPG 。

2018年4月4日からは第2部がスタート。人類の失われた未来を取り戻した世界に、突如、人類史において誤った繁栄をしたために淘汰された異なる歴史「異聞帯」が7つ出現して世界を分割、正しい人類史が白紙化されてしまいます。辛くも生き残ったマスターは正しい人類史を取り戻すために、7つの異聞帯を支配するクリプターに戦いを挑む旅に出るのでした。

第2部第1章「永久凍土帝国 アナスタシア『獣国の皇女』」ではロシアが舞台となりましたが、過去のメインシナリオではまだ中国が舞台となっていないため、今後は同国が舞台となる可能性が高いかもしれません。現在公表されている第2部の各章のタイトルだけでは判断が難しいですが、3章「紅の月下美人」に密かな期待をしています。

中国では国が傾く原因になるほどの美女は「傾国傾城」と呼ばれており、「異聞帯」が誤った歴史という設定であることから、中華系サーヴァントでは「傾国の美女」が出てくるのではないかと推察。筆者は中学時代、図書室で読んだ横山光輝先生の漫画『三国志』をきっかけに、中国の歴史にのめり込み、英雄や英君ですら籠絡させてしまう傾国・傾城の美女とは、どれほど美しかったのかと想像を膨らませました。そんな中国の歴史上でも格別な傾国美女を4人紹介します。なおイラストはあくまでも人物のイメージです。

「復刻:星の三蔵ちゃん、天竺に行く ライト版」の開催もあり、メインストーリーで中国が舞台になる日はきっと遠くないはず!

恐らく日本で一番有名な傾国「妲己(だっき)」

中国最古の王朝と言われる「夏」に続く、「殷」王朝末期(紀元前1100年頃)・紂王の妃。日本でも藤崎竜先生や横山光輝先生によって漫画化された『封神演義』に、紂王を堕落させて殷を滅ぼした悪女として登場するため、日本でも多くの人が知る中国の傾国美女ではないでしょうか。


殷王朝家臣、蘇護の娘で、圧倒的な美しさから好色な紂王に后妃として迎えられた妲己。猛獣も素手で倒し、悪事でも善事だと言い飾ることができるほど弁が立つ、知勇に優れた名君だった紂王は籠絡され、妲己の言うことなら何でも聞きました。

民に重税を課して金銀財宝を蓄え、名馬や獣を集めて、宮殿を増築し、酒で池を満たして肉を木に吊して走り回る裸の男女眺めながら飲み食いする宴会「酒池肉林」を開くなどやりたい放題。紂王の暴政に失望して刃向かう者がいれば、真っ赤に燃えている炭火の上に油を塗った銅柱並べて裸足で歩かせて焚死(ふんし)させる「炮烙(ほうらく)」という残酷な刑罰に処したとされます。

最終的に紂王は天下の信を失い、殷は反乱を起こした「周」の武王によって滅ぼされ、妲己も首を刎ねられたと伝えられています。中国では悪女で魅惑的な女性の代名詞として知られる妲己を題材にした作品が多くありますが、代表作『封神演義』では妖狐として登場し、日本でも妖狐「玉藻の前伝説」と結びつけられることも。玉藻の前はFGOで度々姿を変えて活躍する人気サーヴァントなので、ぜひとも関連付けて召喚されて欲しい。クラスはやはりキャスターでしょうか。

予想クラス:キャスター
予想宝具:酒池肉林和炮烙(しゅちにくりんわほうらく)

ただ笑わなかっただけ「褒姒(ほうじ)」

周王朝を破滅に導いた亡国の美女として語られる褒姒ですが、先に挙げた妲己と違って本人はアクションを起こしていません。全ての原因は、「笑わなかった褒姒を笑わせようとした」幽王(紀元前781年~紀元前771年頃)の暴走にあると言われています。

天涯孤独だった褒姒は、小国の褒から幽王の後宮に献上されました。そこで幽王の目に留まり、寵愛を一身に受けて男子を産みますが、笑顔を一切見せなかった。
好きな女性の笑顔が見られないと、心ここにあらずに思えて男は満たされないもの。幽王は褒姒を笑わせるためにあらゆる手を尽くした挙げ句、諌める臣下の声を無視して正后の申后と太子を廃し、褒姒を正后に据えてその息子を太子に立てます。

しかし、それでも褒姒が笑わないものだから、幽王は何を思ったのか外敵が侵攻してきたことを諸侯に知らせる烽火(のろし)を上げたところ、すぐさま駆け付けた諸将は異変が起きていないので右往左往してしまう事態に。それを見た褒姒が初めて笑ったため、イソップ童話のオオカミ少年よろしく、幽王は何もなくても度々烽火をあげてしまい、だんだんと集まる諸将が減っていきます。

褒姒をいかに笑わせるかに注力して政治に無関心の幽王に対し、ずっと反乱の機を伺っていたのが廃嫡した申后の父親・申候。怒った申候が大軍で集めて攻め込んで来たので、慌てて烽火を上げますが誰も来なかったため、幽王と褒姒は殺されてしまいます。その後、本来の太子であった申后の子が平王になって都を東の洛邑に移して東周が始まるのですが、諸侯を束ねる力はもう無く、力を付けた周辺諸国が争う春秋戦国時代に入るのでした。

褒姒はその出自が章か出ないことから、神龍の末裔という伝承を始めとした多くの伝説が後世に残っています。どこから来たのか分からない印象から、召喚されるなら「外宇宙」からの降臨者としてクラスはフォーリナーになるのではないでしょうか。

予想クラス:フォーリナー
予想宝具:神龍的孩子、为什么不笑?(しんりゅうてきがいじ、うぇそもふしょう?)

次のページ:最終兵器美少女と皇帝が息子から略奪するほどの美女

最終兵器は美少女「西施(せいし)」

周王朝が一度滅び、始皇帝によって統一されるまで群雄割拠の春秋戦国時代に入ります。四字熟語「臥薪嘗胆」の由来でもある呉王・夫差(ふさ)と越王・勾践(こうせん)の戦い(紀元前495年~紀元前473年頃)。国力の差から真っ向勝負では勝てないため、夫差を籠絡して国を弱体化させるために送り込まれたのが、中国古代四大美女にも数えられる西施でした。


越との戦争で殺された父王の仇を打つために軍備を充実させた夫差は、満を持して自ら軍を率いて越を滅亡寸前まで追い込みます。越はなんとか講和にこぎつけますが、王である勾践自らが呉に行って下僕となることが条件でした。馬を飼ったり、草を刈ったり、糞尿を取ったりして三年間仕えてようやく謀反の意志がないと認められ、国に帰ることが許された勾践は、恥辱を拭うために絶対に復讐すると誓います。

弱体化した越ではとても呉に勝てないため、家臣の文種(ぶんしょう)によって年月を掛けて呉を弱体化させるいくつもの策が献上されるのですが、その中の一つが好色である夫差を籠絡するために美女を送るというもので、見出したのが西施です。西施は農村の生まれでいつも谷川の畔の岩の上で洗い物をしており(後年、「西施浣紗石」と呼ばれることに)、魚も見惚れて動けなくなると言われるほどの絶世の美女として知られていました(中国の言葉「沈魚落雁閉月羞花」より)。

また、「顰(ひそ)みに倣う」という故事と「西施捧心」の四字熟語も西施に由来しています。幼い時から心臓の病気があった西施の、発作が起きる度に両手を胸に持ち上げて眉を顰めて苦しむ姿が艶めかしく見えたことから、ある娘が自分も美しく見られたいと思って真似をしますがかえって醜く見えてしまったという逸話です。

見出された西施は越の宰相の范蠡(はんれい)の下で、夫差好みの女性になるように3年間、教育を受けてから送り出されます。西施に会った夫差は一目で心奪われ、豪華絢爛な離宮を建て、毎晩遅くまで宴会を開き、どこに行くにも伴うほど寵愛するようになります。西施は常に媚びる笑顔で夫差を自分に夢中にし、政治への関心をなくさせ、散財させることに尽力しました。そのかいあって、やがて弱体化した呉は越によって滅ぼされるのですが、夫差を籠絡した西施の美しさが自国に禍をもたらすのを恐れた越軍によって、西施は袋に入れて長江に沈められたと言われます。

しかし、明代の戯曲『浣紗紀』では、范蠡と西施は偶然出会って互いに一目惚れし、西施は范蠡のために呉への刺客となったとされ、役目を果たした西施は隠居した范蠡と一緒に余生を過ごしたというハッピーエンドが伝えられています。
夫差の心を射貫く“夫差キラー”として送り込まれた西施ですから、召喚されるならアサシンのクラスではないかと予想しています。

予想クラス:アサシン
予想法宝具:西施捧心(せいしほうしん)

皇帝が息子から奪い取るほどの美貌「楊貴妃(ようきひ)」

遣唐使が送られていた日本の平安時代、唐の最盛期の皇帝・玄宗の皇妃(719年~756年頃)。「貴妃」というのは皇妃の中で、2番目に偉い位を意味していて、本名は玉環(ぎょくかん)です。元々は玄宗の息子に嫁いだのですが、玄宗に見初められて強奪される形で後宮に入ります。この時、玄宗は世間体を気にしたようで楊貴妃を一時的に出家させています。

歌や舞が上手で音楽に詳しく、頭の回転も早かった楊貴妃は、玄宗にたいそう気に入られてやがて妃となります。玄宗は楊貴妃との愛欲の日々に溺れ、どこに行くにも連れて歩き、彼女の好物であるライチを南方から都・長安まで早馬で取り寄せたり、衣装や装飾品を作成する工人を1000人用意したりしたと伝えられています。

若い頃は英君とも言われた玄宗ですが、楊貴妃にのめり込んで政治に関心を無くし、楊貴妃の父や兄、従兄弟なども高い官職につけ出すようになり、従兄弟の楊国忠などは宰相にまで上り詰めてしまいます。楊一門が強力な派閥を形成して朝廷の内外で外戚権力を振るうようになったことから、「女を産んでも悲しむな。男を産んでも喜ぶな。」(娘が皇帝の寵愛を受けるかどうかで、一門が出世できるかが決まるという意味で)というはやり唄が唄われるほどでした。

一方で、楊貴妃が玄宗を怒らせてしまい、髪の毛を切って届けるなどその都度わびて許してもらったというエピソードも。これはかえって玄宗が楊貴妃を手放せなかったことを示しており、玄宗の信任が厚かった軍人の安禄山ですら、宰相の楊国忠が自分の地位を守るために「安禄山に謀反の疑いがある」と玄宗に吹き込むと無視ができないほどでした。


そこで安禄山が「楊国忠を打つ」ために反乱を起こしたのが俗に言う「安史の乱」。安禄山の軍に長安にまで攻め上られてしまい、玄宗・楊貴妃・楊国忠は逃げ出してしまいます。楊国忠は途中で部下に裏切られて殺され、楊貴妃も玄宗の臣下が「こうなった原因は楊貴妃にある」と処刑を強く望んだために処刑されてしまいます。その後も唐は続きましたが、「安史の乱」によって大きく国力を失ったため、盛り返すことはなく滅んでしまいます。

自らの処刑を宣告されても粛々と従ったといわれる楊貴妃。なんとか長安に戻れた玄宗は楊貴妃の遺体をこっそり改葬し、楊貴妃の象を彫らせて朝晩眺めて泣いたと伝えられています。玄宗の真意に反して臣下に処刑されたことから、玄宗以外はよく思っておらず、アヴェンジャーのクラスで召喚される可能性があるかもしれません。

予想クラス:アヴェンジャー
予想宝具:生女勿悲酸。生男勿喜歓。(せいじょぶつひさん。せいなんぶつきかん)

いかがだったでしょうか? 実在の人物とされる4人ですが、書物によっては書かれていることが少し違うこともあり、FGOで実装されるとしたらどのような拡大解釈がされるかも一ファンとして楽しみで仕方がありません。誰が実装されたとしても引き当てられるように、今から聖晶石は貯めておくつもりです。
その時がくれば、恐らく課金も……。

参考文献:『呉越春秋: 呉越興亡の歴史物語』(著:趙曄、訳注:佐藤武敏、出版社: 平凡)、『荘子 第2冊 外篇』(著:荘子、訳注:金谷治、出版社: 岩波書店)、『史記〈1〉本紀』(著:司馬遷、訳:小竹文夫、小竹 武夫、出版社: 筑摩書房)、『新唐書』(著:古賀登、出版社: 明徳出版社)、『中国の神話伝説〈下〉』(著:袁珂、訳:鈴木博、出版社: 青土社)、『楊貴妃―大唐帝国の栄華と暗転』 (著:村山吉広、出版社: 中央公論社)、『封神演義』(訳:安能務、出版社: 講談社)

イメージイラスト:吉村拓也(@takuyayoshimura)

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