1996年はプレイステーションが大きくシェアを伸ばした年でした。ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)の対戦格闘ゲーム『鉄拳2』が、この年のトップセールスを記録したのをはじめ、『アークザラッドII』、『ポポロクロイス物語』、『クラッシュ・バンディクー』(いずれもSCE:現SIE)などのヒット作が続出。本体価格を19,800円に値下げした効果もあって、11月にはついに世界累計出荷台数1000万台を突破しました。
さらに、スクウェア(現スクウェア・エニックス)がプレイステーションへの参入を表明し、『ファイナルファンタジーVII』のプレイステーションでの発売が決定。それまでは『FF』シリーズといえば任天堂ハードだっただけに、このスクウェアのプレステ陣営への移籍はゲームファンに衝撃を与えました。そして、翌97年1月にエニックス(現スクウェア・エニックス)が『ドラゴンクエストVII』のプレイステーションでの発売を発表。プレイステーションは販売台数で他ハードに大差をつける結果となりました。
ゲーム以外の主な出来事も簡単に触れておきましょう。この年は2月に将棋の羽生善治名人(当時)が史上初の7冠独占を達成し、棋界の枠を超えた「羽生フィーバー」を巻き起こしました。7月に開幕したアトランタ五輪ではサッカー男子日本代表が、スーパースター揃いのブラジル代表を撃破。この一戦は「マイアミの奇跡」として、今も語り草となっています。また、『ドラえもん』の生みの親であるマンガ家の藤子・F・不二雄氏、『男はつらいよ』の寅さん役で有名な俳優の渥美清氏、歴史小説の大家・司馬遼太郎氏がこの年に逝去しました。
音楽シーンではMr.Childrenの『名もなき詩』、globeの『DEPARTURES』、スピッツの『チェリー』などが大ヒットを記録。映画のヒット作は往年の人気ドラマ『スパイ大作戦』をリメイクした『ミッション:インポッシブル』、デヴィッド・フィンチャー監督のサイコスリラー『セブン』などです。また、のちに一大ブームを巻き起こすことになる「たまごっち」が11月23日に発売されています。
それでは、この年に発売された名作ゲームの数々を見ていきましょう。
バイオハザード
発売日:1996年3月22日
機種:プレイステーション
発売元:カプコン
「サバイバルホラー」というジャンルを確立した記念すべきシリーズ第1作目です。窓ガラスを割って侵入してくるゾンビ犬や後半戦の開幕を告げる強敵・ハンターの出現イベント、飼育係の日誌に残された「かゆい うま」の言葉など、ゾッとする演出の数々はインパクト絶大。3Dホラーアドベンチャーの草分け的存在である『アローン・イン・ザ・ダーク』のシステムをベースにした、ちょっと不自由な操作システムも恐怖をあおる効果に一役買っていました。
このように恐怖演出のオンパレードである本作ですが、爽快感も抜群でした。実際、ショットガンなどの強力な武器をぶっ放してゾンビを倒すのは快感で、かなりスカっとしたものです。一定時間内にクリアすると使用可能になる、無限ロケットランチャーでヒャッハーしまくったという人もけっこういることでしょう。ホラーとしての恐怖とゲームとしての爽快感。この両方をしっかりと両立させたことも、本作の画期的な部分だったと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、プレイステーション クラシックには初心者向けのモードや高難度モードなどが追加された『ディレクターズカット』版が収録されています。もちろん、オリジナル版もプレイできるので、この不朽の名作をぜひ体験してみてください。
女神異聞録ペルソナ
発売日:1996年9月20日
機種:プレイステーション
発売元:アトラス
絶大な人気を誇る『ペルソナ』シリーズの第1作目です。別なる人格が具現化する「ペルソナ」に目覚めた主人公の少年たちが、御影町という町を舞台に悪魔たちと戦いを繰り広げる本格RPGで、同じアトラスの人気シリーズである『真・女神転生』の外伝的作品だったことからタイトルに「女神異聞録」という言葉がつけられていました
クールかつスタイリッシュで、女性にも人気の『ペルソナ』シリーズですが、1作目である本作はややおもむきが異なっていて、本家である『真・女神転生』シリーズのカラーに近いダークでシリアスな雰囲気の作品でした。戦闘システムも少し複雑で、マップもややわかりづらかったりと、初心者には少しとっつきにくいのですが、それだけに歯応えは格別。やり込み要素も満載で、『メガテン』シリーズが好きという人なら確実に楽しめるはずです。とくに『メガテン』テイストの強いサウンドは思わず聞き込んでしまうことでしょう。
こちらもプレイステーション クラシックに収録されていますので、この機会に人気シリーズの原点に触れてみてはいかがでしょうか。サクサク楽しみたいという人には、システム面で大幅な見直しがなされたPSP版もオススメです。
パラッパラッパー
発売日:1996年12月6日
機種:プレイステーション
発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)
流れてくる音楽に合わせてタイミングよくボタンを押していく、いわゆる「音ゲー」の元祖というべき作品です。操作がシンプルなのでとっつきやすく、女性などのライト層に大受け。音楽ユニットPSY・S(サイズ)で活躍していた、ミュージシャンの松浦雅也氏が手がけたノリのよいサウンド、人気グループPUFFYのジャケットなどを担当したことで知られるロドニー・グリーンブラット氏が描いたポップなキャラクターも人気を呼び、のちにアニメ化もされるなど絶大な支持を集めました。
リズムに合わせて正確にボタンを押していくのが基本ですが、自由にアドリブを決めることも可能になっていて、高評価である「COOL」状態にするには、お手本を超えた独自のプレイをしなければなりません。後半のステージでは、ややリズムをずらす「裏打ち」プレイも求められるなど、ユルい見た目に反して意外と歯応えがあり、ゲームとしての奥の深さをあわせ持っていました。ゆえにライトユーザーだけでなく、ゲーマーたちからも愛されたのでしょう。
プレイできるステージが6つだけと、ボリュームという点では現代のゲームにやや見劣りしますが、面白さでは今でも決してヒケを取っていません。現在、HDリマスターされたプレイステーション4版も発売中なので、当時を知る人も高解像度の画像で改めて楽しんでみてはいかがでしょうか。
ポケットモンスター(赤・緑)
発売日:1996年2月27日発売
機種:ゲームボーイ
発売元:任天堂
プレイステーションが躍進した1996年でしたが、この年最大の話題作といえば、やはりコレにつきます。ゲームの内容について今さらくどくど説明する必要はないでしょう。さまざまなポケモンの収集やゲームボーイの通信機能を使った友達との交換、登場するポケモンが一部異なる赤・緑2バージョンの発売など、現在では当たり前となっていますが、当時は斬新のひとことでした。
発売直後はさほど注目されていませんでしたが、口コミでジワジワと人気が広がりミリオンセラーを達成。翌97年から始まったアニメも大ヒットするなど、勢いはさらに加速していき、『ポケモン』人気は社会現象となりました。当時小学生だった人は、この1作目に登場した151匹のポケモンの名前を今でも全部覚えていたりするのではないでしょうか。
この『ポケモン』の記録的ヒットによって、終わったと思われていたゲームボーイ市場が再び活性化。
この年は6月23日に任天堂の次世代ハード「NINTENDO64」も発売されています。ソフトがROMカセットだったため、容量面でやや難があったものの、3Dスティックや振動機能といった革新的な新機軸が盛り込まれており、これらの機能は以降のゲーム機におけるスタンダードとなりました。ローンチタイトルの『スーパーマリオ64』(任天堂)もゲームにおける3D表現を確立した一大傑作でミリオンヒットを記録。『マリオカート64』(任天堂)、『ウェーブレース64』(任天堂)なども大ヒットとなりました。
その後もNINTENDO64は数々の名作、話題作が登場。日本国内ではプレイステーションに後れをとったものの、海外では累計出荷台数2,700万台を記録するなどプレイステーションと互角の戦いを演じました。
セガサターンでは『サクラ大戦』(セガ:現セガゲームス)がこの年に発売。大正時代を舞台に個性豊かな乙女たちが活躍する本作は大ヒットとなり、CESA大賞’96の作品賞を受賞しました。そのほか、音を頼りに見えない敵と戦っていく、奇才・飯野賢治氏が手がけた名作『エネミー・ゼロ』(ワープ)、アーケードで人気のロボットアクションゲームを移植した『電脳戦機バーチャロン』(セガ)、幻想的な夢世界を縦横無尽に飛び回るアクションゲーム『NiGHTS』(セガ)、パソコン美少女ゲームからの移植である『野々村病院の人々』(エルフ)などもスマッシュヒットとなっています。
この時期は旧ハードであるスーパーファミコンが爛熟期を迎えており、こちらも数々の名作が登場しています。
アーケードでは人気3D格闘ゲームの最新作『バーチャファイター3』(セガ)、破天荒な熱血刑事が活躍するベルトスクロールアクション『ダイナマイト刑事』(セガ)、描き込まれたドット絵が魅力の横スクロールアクション『メタルスラッグ』(SNK:ネオジオでも発売)などが人気となりました。パソコンゲームでは『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(エルフ)がアダルト美少女ゲームとしては異例の大ヒットを記録。いくつにも分岐した並行世界を行き来しながら物語を進めていくシステムは非常に画期的で、その後のノベルゲームやアニメに多大な影響を与えました。
■その他のゲーム業界の主な出来事
2月6日:スクウェアが流通会社デジキューブを設立
3月22日:20,000円に値下げした新型サターン(通称白サターン)が発売
3月28日:バンダイとアップルが共同開発したピピンアットマークが発売
4月1日:通信対戦サービス「X BAND」の日本向けサービスが開始
いかがだったでしょうか。このように1996年は大豊作で、ほかにもまだまだ取り上げたい作品があったりします。「なぜ、あのソフトがない」と思っている人もきっといることでしょう。機会があったら、そうした作品もぜひ紹介してみたいですね。