ある1年をテーマに、その年に話題となったゲームを当時の出来事とともに振り返る『ゲーム19XX~20XX』。今回は番外編として、これまでの回ではあまり触れられなかったタイトルを第1回の1989年から順に1本ずつピックアップして紹介していきます。
それではさっそくどうぞ!

ドラゴンスレイヤーVI英雄伝説
(第1回「1989年」より)
発売日:1989年12月10日
機種:PC
発売元:日本ファルコム

日本のゲーム史において、日本ファルコムは異彩を放つ存在です。80年代のゲーム黎明期からパソコン市場をメインに活動を続け、『イース』シリーズをはじめとする、さまざまな名作をリリース。大手ゲームメーカーのようなハデさはないものの、今なお多くのファンに愛されるメーカーであり続けています。『ドラゴンスレイヤー』は、そんなファルコムを代表する人気シリーズのひとつで、本作はその6作目にして『英雄伝説』シリーズの第1作目になります。

中世ファンタジー風の世界を舞台としたRPGです。フィールドは2D見下ろしタイプで戦闘システムはコマンド選択型。
オーソドックスな誰でも楽しめるタイプのRPGと言えるでしょう。しかし、それまでの『ドラゴンスレイヤー』シリーズは、歯応えのある独特のシステムや高難度の謎解きがウリとなっていて、決して万人向けではありませんでした。いわば大幅に方針転換したわけで、当時のファンはかなり面食らったものです。

しかし、本作は世にあふれていた『ドラクエ』もどきの凡作とは一線を画していました。しっかりと作り込まれた世界観、個性的かつ魅力的なキャラクターたち、ほどよく手応えのあるゲームバランス。ストーリーもテンポよく、かつ起伏に富んでいて、誰もがぐいぐい引き込まれたものです。
ゆえに本作はその後、メガドライブやPCエンジンなどの家庭用ゲーム機にも移植されたのです。その面白さは今も色あせていません。現在最初に発売されたPC-8801版が「プロジェクトEGG」にて配信中ですので、この機会にオリジナル版で体験してみてはいかがでしょうか。

ダブルキャスト
(第2回「1998年」より)
発売日:1998年6月25日
機種:プレイステーション
発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント

「(ゲームで)やるドラマ」をコンセプトとした『やるドラ』シリーズの第1弾です。選択肢によって展開が変化していくオーソドックスなアドベンチャーゲームですが、当時はまだめずらしかった全編フルボイス、フルアニメーションでストーリーが展開。『攻殻機動隊』シリーズなどで知られるProduction I.G制作の映像もクオリティが高く、このレベルのアニメをゲームで楽しめるようになったのかと話題になったものです。


さらに秀逸だったのがストーリー展開です。本作はヒロインの外見が典型的90年代アニメの美少女で、パッケージもいかにも青春ラブストーリーっぽいことから、いわゆるヒロインとラブラブになれるギャルゲーテイストの作品なのかと思われていました(もちろん、そういう要素もあるのですが)。ところが、序盤こそラブコメっぽいのですが、ゲームが進むにつれてどんどんサスペンス色が強くなっていき、ホラー顔負けのエグいシーンが続出。とくに、とあるバッドエンドのワンシーンは狂気度満点で、当時プレイした人たちにトラウマものの衝撃を与えました。

とはいえ、シナリオの構成は非常にしっかりしていて見応えたっぷり。意外性もあって、ミステリー好きにはたまらないでしょう。
恐怖の部分ばかり強調してきましたが、ヒロインも可愛く魅力的なのでギャルゲー好きの人も十分楽しめます。現在PSP版がPS Storeで入手可能になっていますので、ぜひ楽しんでみてください。

メタルスレイダーグローリー
(第3回「1991年」より)
発売日:1991年8月30日
機種:ファミリーコンピュータ
発売元:任天堂

今では故・岩田聡氏らHAL研究所が手がけた傑作として、多くのゲームファンにその存在を知られていますが、かつては知る人ぞ知るファミコンの隠れた名作でした。何しろ発売されたのがスーパーファミコン登場の翌年です。いわばハードの交代期で、すでにファンの話題はほぼスーファミ一色。旧ハードであるファミコンは過去の存在になりつつありました。
そのため販売本数が振るわず、中古ソフトがプレミア化。現在では、さまざまな手段でのプレイが可能になっていますが、2000年にニンテンドーパワーで『ディレクターズカット』版が登場するまで、存在は知っているけどプレイしたことはないという人がけっこういたものです。

未来世界を舞台にしたコマンド選択型のSFアドベンチャーです。システム自体は当時すでによくあったもので、特に目新しいものではありませんでした。しかし、驚くほど画像の描き込みや動きが精緻で、キャラクターの仕草や表情の変化から髪がなびくところまでしっかり描写。今の人はそんなの当たり前だろと思われるでしょうが、このレベルのアニメーションをファミコンで実現した作品は後にも先にもありませんでした。
メカのアクション描写も恐ろしいほど緻密で、そのクオリティと技術力の高さは今見ても驚かされます。当時のファンが「ファミコンの限界を超えた!」と唸ったというのも当然と言えるでしょう。巧みに伏線を織り込んだストーリーも魅力的で、ゲーム好きなら一度は体験しておくべき1本です。

エレベーターアクション
(第4回「1983年」より)
発売日:1983年
機種:アーケード
発売元:タイトー

スパイとなって30階建ての高層ビルに潜入し、エレベーターを乗り降りしながら重要書類を盗んでいくアクションゲームです。ビルを守るガードマンを拳銃で撃ったり、エレベーターで押し潰したりしながらビルを降りていき、地下1階から脱出したらステージクリアとなります。上に向かって進んでいくのではなく、屋上からスタートして下へ下へと降りていく本作のシステムはユニークかつ斬新でした。

ガードマンは銃で倒すより、エレベーターで潰したほうが得られるスコアが多いので、ついついエレベーターを使って倒したくなりますが、慌てると自分が潰されてしまったり、乗り損なってエレベーターの穴に落ちてしまったりします。このエレベーターをめぐる攻防が非常に面白く、本作の最大の魅力となっていました。敵の攻撃をしゃがんでかわしたり、天井の照明を撃ち落として敵に当てたりとアクション性も高く、非常に歯応えのあるゲームと言えるでしょう。

しかし、一定時間が経過すると急に敵が増えたりするので、スコアを稼ごうと欲張りすぎると一気にクリアが難しくなります。エレベーターの動きが遅いなど、やや理不尽さを感じさせる部分もあり、決して簡単なゲームではありませんでしたが、それゆえにクリアできたときの喜びは格別。中毒性が非常に高く、多くのプレイヤーをトリコにしました。そのため、のちにファミコンやセガのSG-1000など、さまざまな家庭用ゲーム機に移植されています。

クロックタワー2
(第5回「1996年」より)
発売日:1996年12月13日
機種:プレイステーション
発売元:ヒューマン

主人公の美少女・ジェニファーを操作して、巨大なハサミで襲い来る殺人鬼・シザーマンと対決するホラーゲーム『クロックタワー』の続編になります。さまざまな場所を調べて、生き残るための手がかりを集めていくオーソドックスなアドベンチャーですが、これらの探索をシザーマンの魔の手をかわしながら進めていかなければなりません。

しかも、シザーマンは何度撃退しても、しばらくするとまた襲いかかってきます。こちらの虚を突くようなところから、いきなり現れることもあるため、まったく気が抜けません。ハサミをガシャン、ガシャンと鳴らしながら迫って来る姿もインパクト抜群で、いわゆるサバイバルホラータイプとは一味違ったスリリングさを味わうことができます。

ダリオ・アルジェント監督の名作ホラー『フェノミナ』のヒロインを彷彿とさせるジェニファーの存在も見逃せません。不気味な古城が最後の舞台になるなど雰囲気もアルジェント作品っぽく、ホラー映画ファンなら「おおっ」となること間違いなしです。さすがに現在では映像面でやや迫力不足な感は否めませんが、『13日の金曜日』や『ハロウィン』といったスラッシャー映画好きなら十分楽しめるのではないでしょうか。

いかがだったでしょうか。記録的ヒットとなった大作というわけではありませんが、どれもキラリと光る魅力を持った名作ばかりです。いずれもオリジナル版やリメイク版がダウンロードサイトなどで入手可能になっていますので、この年末年始に遊んでみてはいかがでしょう。今のゲームとはまた違った魅力に触れられるかもしれませんよ。