セガの龍が如くスタジオが手掛ける『JUDGE EYES:死神の遺言』(以下、『JUDGE EYES』)。その新価格版が7月18日に発売されます。
本作は発売前に「日本ゲーム大賞2018」のフューチャー部門賞、発売後に「ファミ通アワード2018」で優秀賞を受賞しました。賞だけでなく、通販大手サイトAmazonでも、697件のレビューで5点中4.4点(執筆時点)と、高い評価を得ています。

実際に今まで『JUDGE EYES』を評価する声は多くありました。しかしネタバレへの配慮や、しばらく販売が停止されたことなどから、具体的な意見が見えにくくなっている現状があります。そこで今回、新価格版で初めて手に取る人もいるタイミングで、改めて『JUDGE EYES』の高評価の理由、その面白さを紐解いていきます。なお、この記事には本編の核心をつくようなネタバレはありませんので、未プレイの方も安心してご覧ください。


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◆海外の数字で見る『JUDGE EYES』

『JUDGE EYES』は昨年12月、日本だけでなく香港、韓国、台湾を含めたアジア圏で同時発売となりました。2月に配信された「セガ生」での名越稔洋総合監督の発言によると、全体で約45万本販売しているそうです。現在数字は変動していると思いますが、新規IPとしては非常に高い数字だと言えます。

そして日本の発売から約半年が経った6月25日、海外版が『JUDGMENT』というタイトルで発売されました。海外版は音声を日本語と英語、字幕を英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語から選択できます。『龍が如く』シリーズでも今まで無かった英語音声が付いたこともあり、海外版ツイッターでは発売前にキャストのインタビュー動画が公開されました。
発売前にはイギリスでキャストの登壇イベントが開催されたり、Twitchで生放送が配信されたり。ロサンゼルスでは6月30日から7月13日までリアル脱出ゲームが開催されています。このことから海外の広報に力を入れていることが分かりますが、実際にどういった数字が出たのでしょうか?

一番早く情報が出たのはイギリスでした。イギリスインタラクティブ・エンタテイメント協会(UKIE)が発表した6月最終週のゲーム売上ランキングによると、4位にランクイン。上位には前の週に発売した『クラッシュ・バンディクー レーシング ブッとびニトロ!』、同じ週に発売した『スーパーマリオメーカー2』、『F1 2019』と大型タイトルが並んでいます。このあたりは、他の国のランキングでも同じような並びでした。
イギリスのAmazonのPS4ゲームソフトランキングでは23位となっています。

オーストラリアでは、Interactive Games and Entertainment Association(IGEA)が発表している 6月最終週のPS4ゲーム売上ランキングで3位にランクイン。オーストラリアは2014年から2018年のハード売上ランキングで、PS4は連続1位を獲得しているため、ゲーマーの所持率が高いです。AmazonのPS4ゲームソフトランキングでは、執筆時点で29位を記録しています。

フランスの娯楽ソフト出版組合Syndicat des éditeurs de logiciels des loisirs(SELL)が発表した2019年26週目(6月24日~30日)販売ランキングでは第5位。Amazonでは執筆時点でPS4全体のランキングで49位を記録していました。
ゲームソフトだけのランキングではなぜか除外されていましたが、前後のソフトで見ると16位ぐらいと想定されます。

『JUDGMENT』の発売前からSNSでは、英語に次いでスペイン語のコメントが多くありました。スペインの売上ランキングはまだ出ていませんが、Amazonの評価を見てみると、人数は少ないものの全員満点を付けています。今後変動はあると思いますが、発売直後からプレイする熱量の高いプレイヤーの評価と考えると、期待に応えた、また期待を上回る面白さがあったのではないでしょうか。PS4ゲームソフトランキングでは29位となっていました。

気になるのはE3の開催国でもあるアメリカですが、まだ詳細なランキングは出ていませんでした。
Amazonでは、PS4ゲームソフトランキングで43位となっています。

海外と日本では出演者の知名度が違います。それに加えて、日本を舞台にした新作IPと考えると、初週でトップ10入りはかなりの注目度の高さだと考えられるでしょう。海外版発売前は、SNS等で検索すると「審判」や「判断」という本来の意味での「JUDGMENT」しか引っかかりませんでしたが、今では多くのプレイヤーたちが感想やスクリーンショット、動画を上げて楽しんでいる様子が見られます。

※執筆時点は日本時間7月8日23時

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◆海外のスコアとレビュー

海外で『龍が如く』は『Yakuza』というタイトルで販売され、同じ世界観を有するものを「ヤクザユニバース」、「ヤクザサガ」などと呼んでいます。非常に熱量の高いファンが多く、『JUDGE EYES』も『Yakuza』スピンオフとして注目を集めていました。
既に発売から時間も経ち、レビュー記事も日に日に増えています。

ここでは海外のレビューやスコアに触れていきますが、ゲームのスコアと言えば「metacritic」。metacriticはアメリカのCBSインタラクティブが運営している大手レビューサイトで、ゲーム関連でよく聞く「メタスコア」のメタの名前の元です。この「メタスコア」はメディアの付けたスコアの平均値のことを指しますが、サイトでは一般ユーザーが付けた「ユーザースコア」も見ることができます。ユーザースコアはゲームの難易度等で、メタスコアと差ができる事もあります。

metacriticでの『JUDGE EYES』(『JUDGMENT』)のメタスコアは100点中80点(レビュー数79)、ユーザースコアは10点中8.3点と、どちらも高得点でした。レビューもゲームを称賛する言葉が並んでいます。

メタスコアをはじめ、この3ヶ月近くSNSとレビューサイト、レビュー動画に付けられたコメントなどを見てきましたが、海外ユーザーの意見は日本と大きく違いはありませんでした。その中でも一番評価されているのがストーリーというのは、共通しています。

ここで、見てきた中で共感できたコメントや印象的だったものを一部翻訳し、紹介します。参考にしたレビューサイトはその最後のページでご紹介しますので、気になる方はぜひご覧ください。

■ポジティブ意見戦闘スタイルがタイマン用と多人数用の2種類、そしてスタイリッシュなところが良い。今年発売したゲームの中で、最も素晴らしい1本だ!壮大なストーリーが素晴らしく、最後まで驚きに満ちていた。サイドケースにユニークな人物たちが多く、面白い!字幕が対応してるから、ヤクザサガに入る事の出来る最高の機会だ。英語音声があって嬉しいし、日本語と切り替えられるのも良い。ミニゲームも多く、長い時間楽しめる。龍が如くスタジオの全てにおいて新しい、という作品ではないが、そのことは全く問題ないほど面白い。
■ネガティブ意見カラオケ館があるのに、カラオケができない!どうして水商売アイランドを入れなかったんだ?あれは最高のミニゲームじゃないか!致命傷システムが痛い!あれはゲームを進めるにあたって大きな障害だ。元ヤクザの桐生は分かるが、八神が人を殴るのはおかしくないか?桐生がいないと寂しい、戻ってきてほしい…写真撮影のイベントが退屈。話があまりにも現実的すぎて、のめり込めない。スキルの獲得方法がシンプルになりすぎて冷める。サーチモードの猫の鳴き声に、だんだんイライラしてくる。
色々なサイトがレビューを掲載していましたが、個人的には「ハリウッド・リポーター」に掲載されていたのが印象的でした。また、コメントでは「『龍が如く』をプレイしたことのない人でも楽しめる」という声が多くありました。「今年のGOTYだ!」「続編をやりたい!」というファンも多く、今後の展開への期待も高まっています。

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◆キャスティングが見せたゲームの新たな魅力

『JUDGE EYES』の発表で一番注目を集めたのは、主人公の八神隆之を木村拓哉さんが演じることなのは間違いありません。当時は普段ゲームをやらない人達にも情報が広がり、ゲーム以外のメディアでも多く取り上げられていました。木村さんのスター性はそうした広報の役割も担っていたと思いますが、実際にキャスティングはプレイにどう影響したのでしょうか?

発売直後は、やはり「木村拓哉さんを好きに動かせる」という点に注目が集まりました。しかし実際にプレイしてみると、それを楽しむことができるのは不自然に感じさせない演技、演出がしっかりと付けられているからだと感じました。そしてこの「木村拓哉さんが演じている八神隆之」が主人公であることは、ゲーム体験においても大きな効果があります。ムービーシーンはまるでドラマや映画を見ているようで、プレイ画面はそのドラマの人物を自分で動かしているという実感。これは普段目にするような芸能人が主人公で、リアルなCGで再現できるからこその感覚かもしれません。いつものゲームとは違う、新たな没入感を生み出しているように感じました。

本作では、脇を固める役にも中尾彬さん、滝藤賢一さん、谷原章介さんが出演ししています。役の特徴をとらえた演技で『JUDGE EYES』に溶け込み、世界観をより強固にしていました。他にも八神の相棒である海藤正治役の藤真秀さん、城崎さおり役の甲斐田裕子さん、藤井真冬役の清水理沙さん、新谷正道役の桐本拓哉さんなど、紹介できないほど多くの声優さんが出演していますが、どの方もとても素晴らしかったです。

というのも、昨今のリアルなCGのゲーム全てにあてはまることなのですが、キャラクターがリアルな造形だと、演技によっては声が浮いて聞こえることもあります。もちろん本作でもそれが全くなかったわけではありませんが、そう喋りそうなキャラだったことで、全体的にバランスが取れて不自然さはそこまで感じませんでした。

ただ、声優さんが好きなファンたちへの配慮なのか。ガールフレンドにできるキャラクターたちの声優には本渡楓さん、橘田いずみさん、東山奈央さん、佐藤利奈さんという“分かる”キャスティングが成されていました。こうしたところで別の楽しみを提供してくれるのは、龍が如くスタジオらしい粋な演出だと思います。

◆ドラマよりもドラマらしいゲーム

インタビューなどでは、『JUDGE EYES』が元々実写作品用の脚本として存在したものだというのが語られています。ゲームを進めていくと、確かにストーリー自体がドラマ仕立てで、スケール感は映画のよう。そのせいか、「ドラマや映画で実写化してほしい!」という意見も多く見かけます。しかし本作はゲームだからこそ描ける物語。その理由は主にスケールの大きさですが、シナリオの長さにもあります。

『JUDGE EYES』はストーリーをしっかり読み込むと、クリアまで30時間以上かかります。映画でいえば『ロード・オブ・ザ・リング』3周、『スター・ウォーズ』もスピンオフ含めて全部視聴できます。木村拓哉さんの『HERO』シリーズ全ても視聴できそうです。これらのシリーズが長い年月をかけて作られたものと考えると、実写作品としてこの長さのストーリーを見せる事がいかに難しいかが分かります。そして同時に、今一番長いストーリーを見せるコンテンツがゲームであることもよく分かりますね。

しかしゲームという点では、ストーリー重視で長時間プレイするものは既に数多くあります。では『JUDGE EYES』は何が特別なのかと言えば、魔法や特殊能力、怪物などの「ファンタジー要素」抜きの現代の日本が舞台であることでしょう。DLCでビームが出せたりすることは置いておいて、そうした要素抜きでリアルな日本を歩き回れるのは、現在『龍が如く』シリーズ、『JUDGE EYES』ぐらいではないかと思います。

スケールの大きさという点で、過去『龍が如く6 命の詩。』の動画インタビューでは「(『龍が如く』シリーズは)出来たら僕らが映画で作りたい世界観を、毎回壮大なスケールで作っている」と小栗旬さんが語っています。邦画の現状を表している言葉でもありますが、こうした発言から考えても、『JUDGE EYES』はゲームでなければ表現できない物語の一つだったと言えます。

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◆魅力的な物語と八神隆之という主人公

八神隆之はある殺人事件の弁護で無罪を勝ち取り、一躍ヒーローとなった弁護士でした。しかし釈放直後に依頼人は恋人を殺し、家を放火した罪で逮捕。引き続き弁護の依頼を受けることになった八神は依頼人を信用できなくなり、判決は有罪、依頼人の死刑が決まります。その後八神は弁護士を辞め探偵になり、それから3年が経過。神室町である殺人事件が起き始め、物語は始まります。

発売前は『龍が如く』で「木村拓哉」というインパクトが強すぎて、ストーリーについての期待値はそこまで目立つものではありませんでした。しかし蓋を開けると、日本でも海外でもストーリーが一番評価されています。演じている木村拓哉さんもインタビュー動画で「実際面白いし、ストーリーが」と語っています。

弁護士や裁判制度が違うであろう海外でも「面白い!」と受け入れられているのは驚きました。しかしそれ関係なしに面白いと言えるほど、本作のストーリーは綿密に作られています。現在でも動画配信が第8章までしか解禁されておらず、徹底したネタバレ配慮。厳しいようにも見えますが、プレイしてみるとそれがいかに大事かが分かります。だからこそ「とりあえず面白いからやってみて」としか言えなくなってしまうのですが……。

ストーリーの魅力は、ネタバレ配慮するとほとんど言えないのですが、個人的にすごいと思ったのは、犯人が分かった後も面白さが止まらないところでした。探偵物は犯人を突き止めるシーンが山場であることが多いですが、『JUDGE EYES』ではむしろそこが始まりです。ここが山場だと思ったら、大きな山場が次々とくる。その繰り返しで、続きが気になってプレイする手が止まらなくなります。

しかし、面白いストーリーは魅力的なキャラクターたちがいてこそ。『JUDGE EYES』に登場するキャラクターたちは本当に良いキャラばかりで、敵も憎めないキャラが多く、依頼などに出てくる脇キャラたちも大変個性的です。

その中でも主人公の八神隆之は、今まででいそうでいなかったゲームの主人公だったと思います。ビジュアルが木村拓哉さんだからこそかっこよく、なんでもクールに決めてしまう。そんな雰囲気もあり、実際かっこいいシーンもたくさんあります。でも、プレイしていく中で印象が一番変わったのは八神でした。

チャプター1では、元上司である源田の「弁護士に復帰しないのか」という問いかけに対し「見てください、俺のこの”目”。こいつはひとが善人か悪人か、まるで見分けられないんですよ」と八神が返答します。彼は表面上は飄々としているように見えて、色々な思いを隠しながら、過去の傷と向き合えずにずっと引きずり続けていました。しかしとあるシーンで「この街はどん底を知ったうえで、そこから這い上がろうとする人間が足掻く場所だ」と神室町のことを表す台詞があります。まさに『JUDGE EYES』は、どん底を知った八神が足掻く物語です。間違っても失敗しても躓いても諦めず、なんとか前に進み続けようとする所がとても人間臭く、やっぱりかっこいいと思いました。

長々とここまで語ってきましたが、新価格版はいよいよ7月18日に発売。八神隆之の目を通して、真実を見極める『JUDGE EYES:死神の遺言』。気になる方は、ぜひこの機会に楽しんでみてください。

■参考レビューリンク
・metacritic
・PSLS
・RPG Site
・IGN
・TechRaptor
・THE DIGITAL FIX GAMING
・TheSixthAxis
・jeuxvideo.com※フランス語
・The Hollywood Reporter
・DualShockers
・VIDEOGAMER
・HOBBYCONSOLAS ※スペイン語
・PlayStation Universe
・Twinfinite
・MeriStation※スペイン語
・Gaming Bouevard
・Kakuchopurei.com
・SEGAbits
・Akihabara Blues ※スペイン語
・ggnetwork.tv