国内のみならず、海外のプレイヤーともオンラインでゲームを楽しめるようになった昨今。それでも「遅延(ラグ)」の問題はいまだに解決しておらず、とくにFPSゲームなどのジャンルでは大きな課題として立ちはだかっています。


そんな問題の解消に期待がかかっているのが、世界的実業家のイーロン・マスク氏が展開する「スペースX」社の通信サービス「スターリンク」。とりわけ、eスポーツ界隈における“革命”の可能性に期待が寄せられているよう…。

全世界で高速回線が実現?
「スターリンク」は宇宙に打ち上げた人工衛星を介して、世界中に衛星インターネットアクセスを提供するサービス。専用のアンテナとルーターさえあれば、光ファイバーやケーブルを設置できない地域でも、ブロードバンド接続が可能になるとのこと。

気になる回線速度ですが、将来的に下りで約10Gbpsを目標にしていると言われています。現在、オンラインゲームを快適に遊べる目安は概ね100Mbps~であるため、数字を比較すると単純に100倍。
あるいは、30GBのゲームを約20秒でダウンロードできる速さと言い換えれば、イメージしやすいかもしれません。

オンラインゲームの遅延をめぐって
すでに一部の地域でベータ版が提供されている「スターリンク」。ゲーマーにとっては、オンラインゲームで活用されるのかどうか、気になるところでしょう。実はイーロン・マスク氏は、6月10日に「Play video games wherever you want」(好きな場所でゲームを楽しめる)とツイートしていました。

そのツイートに対して、疑問を呈したのが『VALORANT』プレイヤーであるブラジルのストリーマー・breezeさん。ゲーム内の遅延について、「ブラジル人がスターリンクでNAサーバーをプレイしようとすると100pingになる(いつか修正されるかもしれないが)」とツイート。
その上で、「Pingの問題もなく、みんなが自分の国にいる状態で他の大陸とトレーニングできたら正気とは思えませんね」と語っています。

eスポーツの発展につながる?
Breezeさんの疑問はたしかにもっともなものだと言えるでしょう。ですが、これに対してイーロン・マスク氏は希望に満ちた答えを提示。年末までに運用を開始する予定の「スターリンク衛星間レーザーリンク」によって、「グローバルな遅延が劇的に減少する」というのです。

さらには「光は、光ファイバーケーブルに比べ、真空・空気中の方が40%程度速く進む」「衛星からの光路の長さも短い(光ケーブルは海岸線に沿うため)」などと仕組みを説明していました。

ちなみに、遅延の数値(レイテンシ)は一般的なインターネット接続では概ね50ms以下、対戦型のオンラインゲームにおいては約30ms以下が許容値とされています。
その一方で「スターリンク」は、20ms程度までレイテンシを抑えられるとのこと。

現在のeスポーツでは基本的に各地域に分かれてトーナメントが行われ、その後オフラインでの世界大会が行われるのが基本です。もし遅延の問題を一切解消できるのであれば、オンライン上で気軽に大会やスクリムなどの練習を行えるようになるのかもしれません。

世界中のプレイヤーが交流するということは、シーン全体のレベル底上げにもつながります。転じてeスポーツそのものが、より大きく発展することを期待できるでしょう。

日本では、2022年内に導入予定とされている「スターリンク」。
世界に、そしてeスポーツ界にどんな変革をもたらしてくれるのでしょうか。