さまざまなゲームに登場するボスキャラの魅力をあらためて掘り下げる連載「僕らのボスキャラ列伝」。第22回は『魔界塔士サ・ガ』のかみ(神)を紹介します。

「おめでとう。このゲームを勝ち抜いたのは君たちが初めてです」
1989年にゲームボーイで発売された『魔界塔士サ・ガ』は、「サガ」シリーズの第1作目にしてゲームボーイ初のミリオンヒットRPG。そして本作のラスボスである「かみ(神)」は、自らがバラバラになることでプレイヤーを笑わせる強烈なエンターテイナーでした。

物語の舞台は、かつて神によって作られた数多の世界が1本の巨大な塔で結ばれた世界。長い年月を経て世界にはいつしかモンスターがはびこり、人々の生活は荒んだものになってしまいました。

そんな人々の心の拠りどころとなっているのは「世界の中心にそびえる塔の上にはすばらしい楽園がある」という言い伝えです。
そして、自分こそが楽園を発見するのだと息巻く冒険者たちが塔の中に広がる世界へ旅立っていく……というところからゲームが始まります。

ゲーム開始時にキャラメイキングを行う主人公たちも、そうした冒険者の1人(1パーティー)です。そして、楽園を目指して旅を続ける主人公たちの前に時おり現れる、黒いシルクハットにスーツという奇妙な格好をした男の正体こそが「かみ」でした。

しかし、彼は主人公たちが楽園へ至るのを陰から手助けしていた……などということはこれっぽっちもなく、「退屈だったから」モンスターを放って人々を苦しめ、「悪を倒すヒーローを誕生させてみたいから」冒険者を奮起させるために楽園の噂を流した…という、度し難いマッチポンプ野郎だったのです。生命の営み、人の生き死にをゲームとしか思っていません。

歴史に残る名フレーズ「かみは バラバラになった」!
正体を隠しているときの印象的な服装や、身勝手な理由であらゆる生命をもてあそぶ悪辣さなど、この時点で「ラスボスとしてのキャラ」は100点満点と言えるほどに立っている「かみ」ですが、彼をもっとも強く印象付けたのは「敵を即死させる効果を持つ店売りの兵器(戦闘時使用アイテム)、『チェーンソー』がガッツリ効いてしまう」ことでした。


チェーンソーで彼を瞬殺した際のテキスト「かみは バラバラになった」はシンプルすぎてもはやギャグにも見えてくるほど(どの敵に使っても表示される、定型の文章ではあるのですが)。チェーンソーでバラバラにできてしまうのは調整ミス、プログラムミスの類だと思われますが、今あらためてパッケージイラストを見ると、そのチェーンソーがものすごい存在感を放っているのが前フリのようにも思えてジワジワとくるものがあります。

こうして「かみ」はすっかり人気ボスとなり、『インペリアル サガ エクリプス』や『ロマンシング サガ リ・ユニバース』などのシリーズオールスターゲームにも登場。『エクリプス』における本作とのコラボイベントでは、人間・男キャラから「またバラバラにしてやるぜ!」と言われていました。

発売から数年後に初めて本作を遊んだ筆者はこのチェーンソーネタを最初から知っていましたので、あえて縛りを入れて正攻法で挑戦。しかし「ちからやぼうぎょなどの各ステータスは表示上99までしか上がらないが、内部では255まで上昇する」ことなども知っていましたので、結局それほど苦戦せずに勝ててしまったような記憶があります。


とはいえ、そのような「裏技」的な知識を抜きにすれば、「かみ」は順当に強いラスボスであるとも聞きますね。いつか『Sa・Ga COLLECTION』で再戦したいと思います。