さまざまなゲームに登場するボスキャラの魅力をあらためて掘り下げる連載「僕らのボスキャラ列伝」。第27回は『ロマンシング サ・ガ2』の七英雄を紹介します。
30年近く前のゲームではありますが、ストーリーの重大なネタバレを含む記事となりますのでご了承ください。
同胞に裏切られた哀しき英雄たち
1993年にスーパーファミコンで発売された『ロマサガ2』。そのラスボスである七英雄は、最後の決戦を挑まんとする最終皇帝(名前はプレイヤーが設定)の命を絡めとる卑劣な罠を用意して待ち構えていました。…メタ的な意味で。

今の人間の祖先とは異なる、古代人と呼ばれる人々が暮らしていた古の時代。彼ら同胞を救うために命をかけて魔物と戦ったのが、のちに七英雄と呼ばれることになる7人の若者でした。


しかし、その行為が忌避されて七英雄は同胞たちの手で異次元へ追放されてしまいます。そして彼らが長い長い年月を経て元の世界にようやく帰還したときにはすでに古代人たちの姿はなく、代わりに短命種である人間が社会を築き繁栄していた…というのが本作の根底に横たわるストーリーでした。

人にあだなす彼らを討ち取って世界に平穏をもたらすのが、プレイヤーが操るバレンヌ帝国歴代皇帝の悲願となります。本作はフリーシナリオシステムが採用されているため、七英雄をどの順番で倒すかは自由に決められますが、7人のうち6人を倒すと彼らの本体が眠るラストダンジョンへの道が開かれます。

その最深部まで進むと、最終皇帝が「ここから先は引き返せないぞ」とモノローグともプレイヤーへの注意喚起ともいえる言葉を発するのですが、なんとも折り合いが悪いことに本作は「どこでも無制限にセーブができる」ゲームでした。皇帝が警告を発したその先、まさにラスボスの目の前でセーブをしてしまったプレイヤーも数多くいたでしょう。


「逃さん…お前だけは……」の恐怖!
しかし、それこそが罠でした。「引き返せないぞ」のセリフが表示された先に進むと「逃がさん…お前だけは……」という七英雄の言葉でその場を離れられなくなってしまうのです。しかも、ラスボスである七英雄(たちの本体が融合した異形の存在)は1ターンに最大で7回攻撃をしてくる圧倒的な強さで、とても初見で勝てる相手ではありません。

つまり、何度挑戦しても勝てないような状態(強さ)であるにも関わらずボスの眼前でセーブしてしまうと、ここで詰みとなってしまうのです。ゲームを最初からやり直すほかありません。本作は間違いなく名作だと思っていますが、これはなかなかにツラい仕様でした。


そんな七英雄の鉄板攻略法は、唱えると敵のターンを丸々すっ飛ばして文字通りに「ずっと俺のターン!」ができる術法・クイックタイムを連発している間にダメージを与え続けて一気にアドバンテージを取るというもの。完全に力技ですが、強力な攻撃への対策をきちんと取っておけば正攻法でも倒せます。

本作は2016年にPS Vitaとスマートフォン向けにリマスター版がリリースされ、さらに今日ではPS4、Xbox One、スイッチ、PC(Steam)でも配信されているので気軽に遊べる環境が整っています。ご多分にもれず筆者もクイックタイムによる力押しで七英雄を倒した1人ですので、きちんと正攻法で戦いなおしたいなと思っています。

余談:山手線な七英雄たち
ご存じの方も多いであろう有名なエピソードですが、七英雄たちはJR山手線の駅の逆さ読みをもじったネーミングになっています。モデルとなった駅名はそれぞれクジンシー(新宿)、ボクオーン(新大久保)、スービエ(恵比寿)、ダンターグ(五反田)、ロックブーケ(池袋)、ノエル(上野)、ワグナス(品川)でした。


元ネタに気が付かなくとも、人名(ファンタジー作品のキャラクター名)として違和感のないものに仕上がっているのが見事なアレンジですね。