インサイドの隔週連載記事「僕らのボスキャラ列伝」より、エゲつない強さでトラウマを与えたラスボス3選をあらためて紹介します。記事には『キャプテン翼II』、『ロマンシング サガ2』、『ドラゴンクエストII』各作品のネタバレが含まれますのでご注意ください。
純粋にボスを見て選びましたが、よく見ると3本ともシリーズ2作目でした。2作目に何の恨みが…。

◆若林くんすら吹っ飛ばされた!『キャプテン翼II』コインブラ
テクモから1990年に発売されたファミコンソフト『キャプテン翼II スーパーストライカー』は、高橋陽一氏によるサッカー漫画の金字塔「キャプテン翼」のその後を完全オリジナルストーリーで描くゲームです。

ゲームオリジナルストーリーと聞くと、「それはおもしろいのか…」と抵抗感を抱いてしまう人もいるかもしれません。しかし、本作はそんな杞憂を吹き飛ばすほどの原作愛で生み出された熱いストーリーが用意されており、多くの「翼」ファンをして「もうこれは正史(オフィシャルな原作の続き/一部)といっていい」と言わしめました。

中学卒業と同時にブラジルに渡ってから3年後、サンパウロFCを率いるキャプテンとなっていた大空翼はユースクラスのナンバーワンを決めるリオカップで見事優勝。
その頃日本では冬の高校サッカー選手権が開催されており、1回ずつ優勝旗を分け合ってきた岬太郎や石崎了たち南葛高校と日向小次郎率いる名門・東邦学園がV2をかけて激突します。

そんな翼と日本の黄金世代たちが合流して全日本ユースを結成し、ストーリーはいよいよクライマックスのワールドユース大会編に。翼は試合の合間にも特訓を重ね、かつてスーパーストライカーと謳われた選手・ジャイロが編み出した必殺シュート「サイクロン」をついに習得。決勝戦で、サッカー大国のブラジルユースと激突します。

そのブラジル戦の、しかも後半から登場するのがコインブラです。決勝戦の後半までその存在を秘匿するだけあり、このコインブラがとにかく強い! ボールを持てばドリブル速度は誰よりも早く、その脚から放たれる「マッハシュート」はG.S.G.K(グレート・スーパー・ゴールキーパー)の名をほしいままにする日本の守護神・若林源三からも悠々とゴールを奪います(※「S.G.G.K」という呼称も知られていますが、本タイトルでは「G.S.G.K」と表記されています)。


サッカー好きな人はすぐにピンと来たと思いますが、コインブラという名前は「サッカーの神様」と称される元プロサッカー選手ジーコ氏の本名、アルトゥール・アントゥネス・コインブラに由来していると思われます。

また、「キャプテン翼」は原作コミックの最終話付近で翼が1970年代から80年代にかけてドイツのプロ1部リーグ、ブンデスリーガで活躍した華々しい過去を持つ奥寺康彦氏に1対1の勝負を挑んであっさりとボールを取られ、(元)プロの圧倒的な実力に打ちのめされるシーンがありました。

ものすごい必殺シュートが飛び交う作品ですが、あの世界におけるプロはそれ以上に強いのです。なればこそ、ジーコ氏と同じファミリーネームを持つコインブラの強さにも納得というものです。今風にいえば、『キャプテン翼II』は本当に「解像度が高い」作品でした。

◆お願い家に帰らせて!『ロマサガ2』七英雄
1993年にスーパーファミコンで発売された『ロマンシング サガ2』のラスボスである七英雄は、決戦を挑まんとする最終皇帝の命を絡めとる罠を用意して待ち構えていました。
メタ的な意味で。

古代人と呼ばれる人々が暮らしていたはるか古の時代、同胞を救うために命をかけて魔物と戦った7人の若者がいました。しかし、魔物たちの力をその身に取り込む行為が忌避され、やがて若者たちは異次元へ追放されてしまいます。

彼らがあまりにも長い年月を経て元の世界にようやく帰還したときはすでに古代人たちの姿はなく、代わりに短命種である人間が繁栄していた…というのが本作の根底に横たわるストーリーです。七英雄と呼ばれつつも人にあだなす存在となってしまった彼らを討って世界に平穏をもたらすのが、プレイヤーが操るバレンヌ帝国歴代皇帝の悲願です。

皇帝の世代交代、伝承法による力の継承を繰り返してラストダンジョンの最深部まで進むと、そこで七英雄の本体との最終決戦が待っています。
そして本作はどこでもセーブできるシステムでしたので、七英雄の目前で少なくない人がセーブをしたことでしょう。しかし、それこそが「罠」でした。

最終皇帝が「ここから先は引き返せないぞ」と言葉を発したポイントよりもさらに奥に進むと「逃がさん…お前だけは……」という七英雄の言葉とともにその場を離れられなくなってしまうのです。ここでセーブしてしまったら、残された道は二つしかありません。勝って大団円を迎えるか、負けて最初からゲームをやり直すか、です。

しかし、七英雄の本体は1ターンに最大で7回攻撃をしてくる圧倒的な強さを持っており、なかなか初見で勝てる相手ではありません。
本作は間違いなく名作だと思っていますが、これはツラい仕様でした。

鉄板の攻略法は、唱えると敵のターンを丸々すっ飛ばして文字通りに「ずっと俺のターン!」ができる術法クイックタイムを毎ターン使用し、その間にダメージを与え続けて一気にアドバンテージを取るというものでした。また、強力な攻撃への対策をきちんと取っておけば、クイックタイムに頼らず正攻法でも倒せます。

本作はPS4、Xbox One、スイッチ、PC(Steam)でリマスター版が配信中で、今も気軽に遊べる環境が整っています。筆者もかつてクイックタイムによる力押しでなんとか勝利した1人ですので、正攻法で戦いなおしたいなと思っています。

◆もうベホマはやめて!『ドラクエII』シドー
ファミコンソフト『ドラゴンクエストII』のラスボスであるシドーは、邪教の大神官ハーゴンが自らの命を捧げて召喚した破壊神です。
その異形の姿も印象的ですが、やはり一番インパクトを与えてくるのは「HPを最大値まで回復するベホマを何度も使ってくる」ことでしょう。

ただでさえ強いのに「また回復された!」という気持ちまで味わわされるのは、かなりの絶望感です。しかし、その一方で「あれ?ベホマを使われた割にはサクッと勝てたぞ?」と感じた人もいるのではないでしょうか。

その理由は、ファミコン版『ドラクエII』のシドーはHPが250程度しかないからです。ラストダンジョンであるハーゴンの城に出現するザコ敵のアークデーモンでもHPは210程度ありますので、これはお世辞にも高い数値とはいえません。

高いどころか低いとすら言えるHP設定は、おそらくゲームの容量不足によるものでしょう。しかし「攻撃は苛烈だったけど5~6ターンで倒せてしまったなぁ」では印象に残りづらく、激闘を演出できません。

ハーゴンの城で戦うことになるボス敵はバズズ、ベリアル、ハーゴン、そしてシドーとベホマを習得しているモンスターが多く、これはスタッフによる苦肉の策のようなものだったのではないかと思われます。

時代は下り2020年11月。シリーズ10作目であるMMORPG『ドラゴンクエストX オンライン』にも最大8人のプレイヤーで挑める「パーティー同盟バトル」のボスとしてシドーが登場しました。そして、こちらのシドーはなんとHPが約50万もあります。

それを削りきるだけでも大変なのに、ご丁寧にベホマも使ってくるから手に負えません。一気に50万まで…とはいきませんが、一度唱えられるとHPが99,999回復してしまいます。

ベホマを使う条件はある程度決まっていたので、そのシチュエーションを極力回避すれば一度も回復させずに倒すことも可能でしたが、さすがに難しすぎたのかゲームのバージョンが進むのに合わせてベホマの使用率が下方修正されました。

まったく使われなくなるとそれはそれで寂しい気もしますので、よい落としどころなのではと思います。