さまざまなゲームに登場するヒロインたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕たちのゲームヒロイン録」。第33回は、1997年に発売された『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術師~』の主人公・マルローネ(マリー)を紹介します。

◆その少女、ガサツで大雑把につき
1997年5月23日に初代PlayStationでリリースされた『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術師~』は、今日も『ソフィーのアトリエ』や『ライザのアトリエ』などで知られるガスト(現 コーエーテクモゲームス ガストブランド)による「アトリエ」シリーズの第1作目です。

キャッチコピーは「世界を救うのはもうやめた」。RPGが大作志向になり、ヒロイックで壮大な物語が描かれるのがトレンドであったといってもいい当時において、本作がそうしたタイトルとは異なる方向性を追及していることがひと目で分かるフレーズでした。

物語の主人公・マルローネ(通称マリー)は、錬金術師を目指して一念発起。田舎の故郷を出て大都市ザールブルグにあるアカデミーの門を叩きます。

しかし、ガサツで大雑把でそそっかしい彼女はいまいち錬金術に向いていなかったようで、アカデミー創設以来の落ちこぼれに。錬金術師になるどころか、卒業が危ぶまれるようになってしまいました。それを見かねた教師のイングリドは、最後のチャンスとして5年間でアカデミーを納得させられるものを作成するように言い渡します。

「目指せ、魔王討伐!」ではなく「目指せ、卒業!」なわけですね。本作をプレイして一番よく聞くBGM「只今お仕事中!」がポルカ(チェコ発祥の舞曲)のように陽気で牧歌的な曲であることも手伝い、ほのぼのとした雰囲気が全編にただようのが大きな魅力でした。

また、町中で樽を調べた時にマリーが口にする「た~るっ」というあどけないひとり言も破壊力抜群で、多くのプレイヤーがポジティブでのんきな彼女のトリコになりました(キャストは池澤春菜さんでした)。

◆明日は明日の風が吹く
アカデミーを卒業するために錬金術師としてのスキルアップを図るもよし、錬金術はそこそこに冒険に明け暮れるもよし。
マリーに与えられた期限である5年間にはさまざまなイベントが発生しますが、いわゆるメインストーリーはほぼありません。

言い換えるなら、プレイヤーが何をしたか、どう感じたかがそのままストーリーとなります。小難しい言い方をするなら、ナラティブというヤツでしょうか?エンディングも複数用意されており、錬金術師としてではなく冒険者として大成してしまうマリー…なんて姿も見られました。

そういうエンディングをむかえた時のマリーは当初の夢を達成できなかったことになりますが、彼女は基本的にケセラセラ(≒なるようになる、という考え方)で生きているのでめげません。マリーのいつも前向きな姿勢は、今見るとリアルタイムで本作に触れた若い頃よりもグッときますね。見習わなければと思います。大雑把でガサツなところ以外は。

「アトリエ」シリーズは2022年5月23日に25周年をむかえ、コーエーテクモゲームスの自社通販サイト「ガストショップ」では2023年1月23日から25周年記念グッズの販売が始まりました。そして3月23日にはシリーズ最新作『ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~』がリリース予定となっています。まだまだこのシリーズから目が離せませんね。
編集部おすすめ