現代的な世界に忍び寄る非日常を発端に、社会の変革や崩壊などに巻き込まれ、勧善懲悪ではない物語に翻弄される『真・女神転生』シリーズ。数あるRPGの中でも個性溢れる異色作として確かな支持を確立し、1作目の発売から数えて2022年10月に30周年を迎えました。


30周年イヤーを歩み続ける『真・女神転生』ですが、この名シリーズの節目を祝うリアルイベント「真・女神転生 30周年感謝祭 in KT Zepp Yokohama」(企画・運営:株式会社コーエーテクモゲームス)が、5月5日・6日にわたって開催。長年のファンから直近の作品で魅了された新規ユーザーまで、幅広い方々が集ってこのイベントを盛り上げました。

しかし、会場に足を運べなかったファンも少なくないことでしょう。そんな方々に向け、初日(5月5日)のイベントレポートをお届けします。当日の盛り上がりや活気を、その一端だけでもご覧ください。

■30年間の歩みが凝縮された展示
このリアルイベントは、初代から『真・女神転生V』までの6作品(『真・女神転生IV FINAL』含む)の楽曲を、「LaiD Back Devil」が生演奏するバンドライブがメインとなります。しかし、ファンの心を揺さぶる催しは音楽だけではありません。

初日のスケジュールでは、客席ホールは17時に開場し、18時に開演を迎えます。バンド演奏を堪能するだけなら、開演の15分前に着いても大きな問題はありません。ですが当日は、17時前の段階でも入場行列が途絶えないほどの盛況ぶり。しかも、これよりもっと早くイベントホール入りした来場者も多数いました。

開演前から賑わっていた理由は大きく分けて2つあります。
そのひとつは、エントランスに設けられた「展示エリア」の存在です。こちらには、『真・女神転生』シリーズの企画や設定資料、そして原画やラフイラストといった開発資料の数々が掲示されており、ファンからの熱い視線を集めていました。

展示エリアへの注目度は高く、VIP席の方は12時から、S席・A席の方は14時から入場可能(初日の場合)でしたが、開演1時間前の17時過ぎの時点でも入場列を上回るほどの長蛇の列。展示物は片側のみで2列分置かれていますが、その列スペースの2倍ほどの方々が並んでいました。

展示物は鮮やかな原画コーナーから始まり、開発者からのコメントも併記された開発資料コーナーに続きます。企画書や設定資料などのテキスト資料も多く、ケースの中を興味深く覗き込む人の姿が絶えません。

展示物の2列目も開発資料のコーナーですが、こちらはキャラクターの設定画やメインアートなどが占めており、ビジュアル面の魅力がダイレクトに伝わってきます。来場者による展示物の撮影は禁止だったため、その目に焼き付けるように注視する様子も印象的でした。

また、エントランスだけでなく2階の一部も展示スペースが設けられており、『真・女神転生』が歩んだ30年間が散りばめられた会場に、来場者たちの視線が釘付け。ライブ開演前から、十分に暖まった空気が広がります。

■売り切れ続出の物販ブース、特に人気が高かったのは?
開演前からファンが集ったもうひとつの理由は、『真・女神転生』関連グッズが手に入る物販ブースです。VIP席の方は12時から、S席・A席の方は13時から購入できるため(※初日の場合)、こちらも見逃せなかった方々は販売開始時刻に合わせて来場しています。


バンドライブの開演は18時なので、さすがに早すぎるのではと思う方もいることでしょう。ですが、最も早いものだと「デカラビアクッション」が12時55分頃に売り切れ。こちらは1会計につきひとつ限りの限定販売にも関わらず、VIP席の希望者だけで完売するほどの人気ぶりでした。

同じく1会計ひとつ限りの「ジグソーパズル 1000ピース」が14時前に、「メノラーペンライト」は14時50分頃に販売終了。このあたりは在庫数の関係もあり、早々に売り切れた模様です。

また、相応の個数がありながらも、特に人気が集中して売り切れたのが、本イベントオリジナルグッズの「主人公アクリルキーホルダー」。全6種類あるキーホルダーは、早いもので14時過ぎに、遅いものでも15時45分頃に完売となりました。プレイヤーの分身であり、最も接する時間が長い主人公だけに、ファンの思い入れも別格なのでしょう。

このほかにも「エコバッグ」や「イベントシリコンバンド」、「ステッカー」に「タロットカード」なども続々と品切れに。

こうしたリアルイベントのグッズは注目されやすい傾向にありますが、この「真・女神転生 30周年感謝祭 in KT Zepp Yokohama」も一般的なイベントと同様に……いえ、それ以上の人気と活気に溢れていました。

ライブの開演までまだ30分以上残す時点で、販売可能なグッズはごくわずか。「バンド演奏の前に、ちょっと寄ってみよう」くらいの気持ちだと、数種類のグッズしか残っていない状況です。
30年間愛され続けた『真・女神転生』に寄せるファンたちの愛が、こうした形でも浮き彫りとなりました。

■目黒将司さんが選ぶ「思い出の1曲」も明かされたバンドライブ前半
展示とグッズでファンの気持ちが暖まって迎えた18時、いよいよバンドライブがスタート。翌日の6日はシリーズ最新作『真・女神転生V』の楽曲が主軸でしたが、初日は『真・女神転生III -NOCTURNE』がメイン。開幕も、『真・女神転生III』の楽曲「通常戦闘」が彩ります。

鮮やかな立ち上がりを決めると、ここでMCの松澤千晶さんとマフィア梶田さんが登壇。いずれも、かなりコアな『真・女神転生』シリーズファンとしても知られていますが、そのこだわりぶりが衣装にまで及んだ梶田さんは、「邪教の館」の主を思わせる青一色のローブ姿で参上しました。

しかもその衣装が実に似合っており、来場者からの反応も上々。梶田さんはこの衣装を自前で用意したと明かすと、松澤さんはその前のめりな姿勢を評価すると共に、その発想に及ばなかった自分を悔いる様子を見せます。

その後悔は、後日自身のTwitterにて「一点だけ悔やまれるのが1日目の私のお衣装が普通だったこと…だって邪教のオヤジが来ると思わなかったから」と述べたほど。こうした気持ちに駆られるのも、『真・女神転生』への愛の深さゆえでしょう。

アトラスサウンドチームの小塚良太さん、小西利樹さん、土屋憲一さんも壇上に上がり、ビデオ出演による増子津可燦さん、目黒将司さんも交えた30年の振り返りや思い出の曲などを語り合い、トークにも多彩な花が咲きます。

ちなみに目黒さんが思い出深い曲として挙げたのは、『真・女神転生III-NOCTURNE』のスタッフロール曲。
現在の自分から見ると至らない点もあるものの「当時の自分にしては頑張ったと思う」と、目黒さんが述べた姿が印象的でした。

サウンド関連の話で盛り上がった後は、本命のライブ再び。まずは初代『真・女神転生』から「銀座」「廃墟」「戦闘」「Boss」を披露し、そのまま『真・女神転生II』の「2D:魔界」「3D:魔界」「戦闘」「中ボス戦闘」と、スーパーファミコン時代に生まれた楽曲たちをライブサウンドで奏で上げました。

セットリストはナンバリング順に続き、『真・女神転生III -NOCTURNE/マニアクス』からは「東京受胎」「魔人」「通常戦闘~大マップ~」「タイトルループ2」が繰り出され、『真・女神転生IV』だと「東京」「Battle-a2」「Battle-b2」「Battle-c5」を演奏。ちなみに「Battle-c5」のバンドライブ演奏は、今回が初披露。生で耳にする初めてのバンドアレンジにファンたちは酔いしれます。

■後半戦も最高潮の盛り上がり! アンコールには「ダンテ戦闘」が鳴り響く
「LaiD Back Devil」の演奏と、『真・女神転生』シリーズ作のゲーム映像が融合したライブは、リアルタイムな刺激と蘇る当時の思い出が融合し、陶酔感にも似た痺れを全身に広げてくれる。その眩むようなひとときは後半戦にも引き継がれ、来場者を心地よく揺さぶります。

後半戦はまず、『真・女神転生IV FINAL』の「ラージマップ」「Battle-f1(通常戦闘)」「Battle-f2(中ボス戦闘)」「Battle-f4 多神連合」から始まり、シリーズ最新作『真・女神転生V』の「Battle -Da'at-」「Battle -edifice-」「力在る者」「Battle -humans, demons, and...-」がその勢いを受け継ぎ、会場に再び熱を呼び戻しました。

これで各ナンバリングの楽曲が一巡りしましたが、初日の醍醐味はここから。改めて『真・女神転生III -NOCTURNE』に立ち戻り、「ボス登場」「コトワリボス戦闘」「ラストボス変形前戦闘」「ラストボス変形後戦闘」「スタッフロール」と怒涛の演奏。そしてエンディングを「通常戦闘(Long ver.)」で締めくくり、濃密な時間が過ぎ去ろうとしていました。


ですが、壇上から人の姿が消えても来場者の興奮は冷めやらず、アンコールを求める手拍子が鳴り止みません。30周年の熱気はまだ途絶えることを知らず。この想いは「LaiD Back Devil」に届き、アンコール曲として『真・女神転生III -NOCTURNE マニアクス』の「ダンテ戦闘」が高らかに響きます。

こうして、約3時間にわたるメインライブが終了。生演奏による圧倒的な楽曲の数々が、いつまでも耳から離れない一日となりました。

なお、VIP席チケット購入者限定で延長戦があり、客席が一度締めくくられた後に追加で3曲を演奏。そちらでは『真・女神転生V』の「Battle -ferocity-」や、事前のアンケートで選ばれた『真・女神転生III-NOCTURNE』の「通常戦闘 ~アマラ経絡~」などが披露され、有終の美を見事に飾ります。

◆セットリスト(敬称略)
【オープニング映像】
M01. 通常戦闘

【30周年トーク】
[MC] 松澤千晶、マフィア梶田
[ゲスト]アトラスサウンドチーム
(小塚良太、小西利樹、土屋憲一)
[ビデオ出演]増子津可燦、目黒将司

【真・女神転生】
M02.銀座
M03.廃墟
M04.戦闘
M05.Boss

【真・女神転生II】
M06.2D:魔界
M07.3D:魔界
M08.戦闘
M09.中ボス戦闘

【メガテン募集コーナー】
[MC] 松澤千晶、マフィア梶田
[ゲスト]アトラスサウンドチーム
(小塚良太、小西利樹、土屋憲一)

【真・女神転生III -NOCTURNE/真・女神転生III -NOCTURNE マニアクス】
M10.東京受胎
M11.魔人
M12.通常戦闘~大マップ~
M13.タイトルループ2

【真・女神転生IV】
M14.東京
M15.Battle-a2
M16.Battle-b2
M17.Battle-c5

【グッズ紹介】
[MC] 松澤千晶、マフィア梶田

【休憩(15分)】

【真・女神転生IV FINAL】
M18.ラージマップ
M19.Battle-f1 (通常戦闘)
M20.Battle-f2 (中ボス戦闘)
M21.Battle-f4 多神連合

【真・女神転生V】
M22.Battle -Da'at-
M23.Battle -edifice-
M24.力在る者
M25.Battle -humans, demons, and...-

【メガテンクイズコーナー】
[MC] 松澤千晶、マフィア梶田

【真・女神転生III -NOCTURNE】
M26.ボス登場
M27.コトワリボス戦闘
M28.ラストボス変形前戦闘
M29.ラストボス変形後戦闘
M30.スタッフロール

【エンディング】

【真・女神転生III -NOCTURNE】
M31.通常戦闘 (Long ver.)

【アンコール 真・女神転生III -NOCTURNE マニアクス】
M32.ダンテ戦闘

【終演挨拶】

【アフターステージ】
M33.Battle -ferocity- (真・女神転生V)
M34.通常戦闘~大マップ~(Re ver.)(真・女神転生III -NOCTURNE)
M35.通常戦闘~アマラ経絡~ (真・女神転生III -NOCTURNE)

[MC] 松澤千晶、マフィア梶田
[ゲスト]アトラスサウンドチーム
(小塚良太、小西利樹、土屋憲一)
[ビデオ出演]目黒将司

■『真・女神転生』の次なる展開は「事後通販」「イベントくじ」「CD-BOXセット」
バンドライブの合間には様々なコーナーも行われましたが、ファンとして気になるのは『真・女神転生』に関する今後の展開でしょう。残念ながら新作ゲームやリメイクなどの話は出ませんでしたが、今回会場で販売されたグッズの通販がコーナーの中で案内されました。

会場で先行販売されたグッズは、オフィシャル通販サイト「アトラス D ショップ」にて現在受付を実施中。こちらでは、「デカラビアクッション」や「ジグソーパズル 1000ピース」などを取り扱っています。

また、事後通販の特設サイトが5月8日にオープン。
「メノラーペンライト」に「主人公アクリルキーホルダー」といった人気グッズが欲しい方は、特設サイトにアクセスしてください。

そして同じくコーナーの中で、新グッズの紹介も飛び出しました。まず、様々なグッズが手に入るチャンスを得られる「真・女神転生 30周年感謝祭 イベントくじ」を告知。ゴールド賞の「キャンパスボード(全3種)」や、A賞の「キャップ(マンセマット/モスマン/デカラビアの3種)」などの多彩なラインナップが楽しめるくじが、2023年5月8日(月)18時 ~ 5月21日(日)23時59分の期間で販売されるとのこと。(商品は7月中旬に発送予定)

そしてもうひとつ、全ナンバリング楽曲を網羅する大ボリュームのCD-BOXセット「真・女神転生30th Anniversary Special Sound Compilation」(販売価格 13,800円)も発表されました。収録曲数は、驚異の500曲超え。5枚組のCDに加え、30周年オリジナルデザインの刻印が入った金属ハウジングUSBにも楽曲を多数収録する、2,000セットのみの限定商品です。

CDに収録されるのは、SFC版『真・女神転生』(28曲)、SFC版『真・女神転生II』(30曲)、メガCD版『真・女神転生』(38曲)、SFC版『真・女神転生if...』(42曲)、Xbox版『真・女神転生NINE』(31曲)の5作品。

『真・女神転生』と『真・女神転生II』はいずれもSFC音源を実機から新録するほか、『真・女神転生』のゲーム本編では使われていない未使用楽曲1曲も初音源化して収録されます。

そしてUSBメモリには、『真・女神転生III -NOCTURNE』(49曲+マニアクス21曲+追加1曲)、『真・女神転生IV』(112曲)、『真・女神転生IV FINAL』(37曲)、『真・女神転生V』(117曲)を収録予定。『真・女神転生III -NOCTURNE』の追加1曲は、7バージョンある「通常戦闘(ダンジョン)」曲を1曲にまとめた新規音源を制作し、そのデータが収録される形となります。

「真・女神転生30th Anniversary Special Sound Compilation」の発売予定は7月26日で、現在予約を受付中。歴代コンポーザーのコメントを収めたブックレットも付属するので、現物を所持したい方は事前の予約をご検討ください。

なお、本商品に含まれる音源は全て、後日配信される予定とのこと。楽曲だけ聞きたい方は、配信も視野に入れておきましょう。

1992年に誕生し、それぞれの時代に数々の名作を散りばめながら、2021年にはナンバリング最新作をリリースしました。30年間走り続けてきた『真・女神転生』シリーズはこれからも、悪魔と天使、そして人間の意志とエゴが絡み合う唯一無二のゲームを提供してくれることでしょう。一ファンとして、これまでの歩みに感謝しつつ、最後はこの言葉で締めくくらせていただきます。

コンゴトモヨロシク…

ステージ写真/撮影:大山雅夫
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