アトラス渾身の完全新作ファンタジーRPG『メタファー:リファンタジオ』が、10月11日に発売日を迎えました。

すでに堪能しているユーザーも多く、X上では本作を楽しみ、展開に驚き、眠る間も惜しんで没頭している声が数多く飛び交っています。


もちろん『メタファー:リファンタジオ』のプレイもいいものですが、特別豪華版の「メタファー:リファンタジオ アトラスブランド35thアニバーサリーエディション」に同梱されている「アトラスブランド35thヒストリーブック」も、侮れない充実度で驚かされます。

このアニバーサリーエディションはそれなりの価格なので、通常版を購入した方も少なくないはず。その場合、残念ながら「アトラスブランド35thヒストリーブック」などを読むことはできません。

しかし、「アトラスブランド35thヒストリーブック」の素晴らしい内容が購入者以外に全く広まらないのは、非常にもったいない話です。そこで今回は、アニバーサリーエディション未購入の方に向け、「アトラスブランド35thヒストリーブック」の魅力を断片的ながらお届けします。どんな内容が綴られているのか、その一端だけでもご覧ください。

また、アニバーサリーエディションと通常版のどちらにするか、購入を迷っている人もいることでしょう。こちらに当てはまる人も、購入判断の材料として本記事をご活用ください。

■アトラスの「ヒストリー」が改めてスゴイ!
「アトラスブランド35thヒストリーブック」を開くと、目次に続いてアトラスがこれまでリリースしてきた数々のゲームソフトが、年代ごとに分かれて記載されています。各タイトルの詳細はありませんが、1989年から2024年までの歴史は、まさに圧巻の一言です。

ちなみに、一番最初に飛び出したのは1989年発売の『パズルボーイ』。ゲームライターとしては恥ずかしい限りですが、アトラス初のリリースタイトルが『パズルボーイ』だとはこれまで知らず、このヒストリーブックで初めて学びました。


90年代前半に入ると、ザ・アトラスとも言うべき『真・女神転生』シリーズの展開が幕を開けますが、一方で『雀偵物語2 宇宙探偵ディバン 出動編/完結編』や『雀偵物語3 セイバーエンジェル』、『豪血寺一族』シリーズといった、今のアトラスからは想像がつきにくいタイトルも顔を覗かせます。

人気シリーズの原点となった『女神異聞録ペルソナ』が発売された96年も、『プロ棋士人生シミュレーション 将棋の花道』や『My Best Friends st.アンドリュース女学園編』など、現在とはやや異なる意味で多彩な展開を遂げていました。

もちろん、お馴染みのシリーズも続々と名乗りを上げていきます。99年だけでも、『デビルサマナー ソウルハッカーズ』に『ペルソナ2 罪』、また通好みの『魔剣X』と、アトラスファンの心をくすぐるラインナップが複数登場しました。

00年代も、従来の人気シリーズやその派生作を展開させる一方で、『ハローキティのおしゃべりタウン』、『くまのプーさん森のなかまと1・2・3』、『ミッキー&ミニーマジカルキッチン』、『虹色ドッジボール 乙女たちの青春』、『九龍妖魔學園紀』といったタイトルも出しており、非常にバラエティ豊かです。

05年の『超執刀 カドゥケウス』、07年の『世界樹の迷宮』など、後にシリーズ展開を遂げた原点も、この頃に登場しました。また、アトラス×ヴァニラウェアの第1歩となった『オーディンスフィア』も、07年にリリースされています。

10年代に入ると、『東京鬼祓師 鴉乃杜學園奇譚』や『ノーラと刻の工房 霧の森の魔女』といった単体作品や、後日パワーアップ版が作られた『ラジアントヒストリア』、『キャサリン』、『ドラゴンズクラウン』などがゲーム業界を賑わせます。

『真・女神転生』や『ペルソナ』といった主要シリーズも定期的に展開し、『世界樹の迷宮』もシリーズ作を重ねていきました。この流れは20年代にも引き継がれており、『ペルソナ5』関連のタイトルや過去作のリマスター版、『真・女神転生V』など、近年のファンにとってお馴染みの活躍が続きます。

そして24年には、『ペルソナ3 リロード』、『ユニコーンオーバーロード』、『真・女神転生V Vengeance』と存在感たっぷりのラインナップを披露した後に、満を持して『メタファー:リファンタジオ』を放ちました。こうしたアトラスの歩みが、ヒストリーブックにて32ページのボリュームで綴られています。


■人気シリーズの魅力に迫る振り返りがアツい!
35年の歩みを綴った後は、アトラスの代表作に迫る「エポックメイキングタイトル」のページに移ります。その先陣を切るのは、もちろん『真・女神転生』シリーズ。歴代ナンバリング主人公が並ぶ姿は、シリーズファンにとって感慨深いばかりです。作品の魅力も、4ページという枠組みにぎゅっと詰め込まれています。

もうひとりの自分と向き合う少年少女たちの、葛藤と成長を描く『ペルソナ』シリーズも、アトラスを語る上で外せない看板的な作品です。ナンバリング最新作の『5』や、現行機でも遊べるようになった『3』や『4』は今もお馴染みですが、原点である初代やシリーズ展開を決定づけた『ペルソナ2 罪/罰』も紙面を彩っています。

こちらも歴代主人公が一堂に会していますが、周防達哉と天野舞耶がそれぞれ並んでいたり、『ペルソナ3』は男女の主人公が揃っていたりと、その構成も心憎いポイントです。

3つ目のシリーズとして取り上げられたのは、『デビルサマナー』シリーズです。作品ごとに雰囲気は異なりますが、硬派でハードボイルドな展開も多く、『真・女神転生』や『ペルソナ』とも異なる魅力が4ページにわたって綴られています。

また、ダンジョンRPGに特化した『世界樹の迷宮』シリーズも、外すことができないタイトルです。前述の各シリーズとは異なり、物語を雄弁に語る作風ではなく、冒険の過程──プレイヤーの戦略や判断が手応えに直結し、その体験が思い出となります。

近年は動きがなく新展開が待望されている『カドゥケウス』シリーズも、この項目でしっかりと取り上げられています。
医療をゲームに落とし込む手法、同一性の高い操作方法、厚みのある人間ドラマと、いずれも本シリーズだからこその魅力に溢れているシリーズです。

このヒストリーブックで5番目に上がるシリーズとして取り上げられている点は、いちファンとしても嬉しいところ。新作やリメイクといった『カドゥケウス』シリーズの新展開に期待する気持ちが、このヒストリーブックを見て改めて高まるばかりです。

そして、項目の締めくくりを飾るのは、なんと『キャサリン』。追加要素を加えた「フルボディ」が後にリリースされたとはいえ、シリーズ展開していない作品で唯一この「エポックメイキングタイトル」にその名を連ねました。

気持ちがかみ合わない恋人、奔放で魅惑的な浮気相手、その狭間で揺れ動く主人公という三角関係を描く『キャサリン』は、“アトラスの大問題作”というフレーズも飛び交うほどの異色作。しかも「フルボディ」では、純真無垢な3人目も登場し、さらに混迷を極めます。

この「エポックメイキングタイトル」では、シリーズや作品をキーワードから紐解きつつ、それぞれ4ページずつで構成。『真・女神転生』と『キャサリン』も、同じページ数で取り上げられています。長い付き合いのあるファンほど、感慨深さもひとしおでしょう。

■巨匠・堀井雄二氏との対談はRPGファン必見!
ここまでは、アトラスの歩みと作品に迫る内容でしたが、ヒストリーブックでもうひとつ見逃せないのが、堀井雄二氏と橋野桂氏の対談です。

橋野氏は『メタファー:リファンタジオ』のディレクターとして、堀井氏は自身が生み出し、そして長年関わり続けている『ドラゴンクエスト』のゲームデザイナーとして、それぞれの視点からRPG論を語っています。


このヒストリーブックは『メタファー:リファンタジオ』の限定版に同梱されているため、本作が話題の中心になることも多く、そのテーマや開発時の秘話などが橋野氏の口から語られます。また、本作の要素や魅力について、堀井氏が独自の視点で捉えている点も印象的でした。

そしてもうひとつ、よく話題に挙がっていたのが、『ドラクエ』にまつわる話です。RPGというジャンルを代表する名シリーズを、堀井氏がどのように作り上げたのか。ゲームをクリエイティブするという意味では同じ立場ながら、切り口や手法が全く異なる堀井氏のあり方に橋野氏が強い関心を抱き、いくつもの質問を投げかける形で『ドラクエ』制作秘話なども語られます。

例えば、堀井氏はドラマを“線”として捉えており、一方で「『ドラクエ』は“面”で作っている」と明かしました。町や村にいる人は、“面”で台詞を喋らせて、イベントの進行で事態が変わると「“面”ごとガラッと変える」とし、堀井流の手法を垣間見せてくれました。

さらに、話が進展する重要な台詞よりも、「なんともない町の人の台詞」の方をより熟考して書くと堀井氏は続けます。その理由として、「村人の台詞を適当にしてしまうと、その町だけでなく、物語全体のリアリティがなくなってしまうため」と説明しました。神は細部に宿るという言葉がありますが、その細部からリアリティが伝わってくるものなのでしょう。

また、橋野氏が以前堀井氏からうかがった「RPGの良さは、現実とはまったく違う世界で自分の旅を味わえる“現実逃避”にある」という話を引き合いに“現実逃避”へのこだわりを訊ねたところ、堀井氏から初代『ドラクエ』の制作秘話が飛び出します。

堀井氏が1作目の『ドラクエ』を作った時、最初に書いた台詞は王様が主人公の名前を呼ぶ「おお ○○○○よ」だったとのこと。
初代『ドラクエ』の主人公の名前はプレイヤーが任意で入力するため、人によっては本名を入れた方も多いことでしょう。

その名前を、ゲーム内の王様が呼びかけてくれる……それはまさに、現実とゲームが繋がり、知らない世界への“現実逃避”が幕を開けた瞬間に他なりません。その導きを促す台詞が最初に生まれたというのは、ファンならずとも感慨深い話です。

こうした裏話やその意図が明かされた対談は、10ページもの規模で綴られています。『メタファー:リファンタジオ』に関する話はもちろん、両名が考えるRPGの主人公のあり方、堀井氏のアトラス作品との接点や『FF』に対して抱いていた赤裸々な心境など、どのページも見どころたっぷりで、とても紹介しきれないほどのボリュームでした。

ヒストリーブックにはこのほかにも、クリエイターや作家、声優陣などからのメッセージや、ここでしか見られない記念イラストの数々なども収録されています。アトラスブランドの35周年を記念する、これ以上ない1冊と称しても決して過言ではないほどです。

このヒストリーブックを直接読みたい人は、特別豪華版「メタファー:リファンタジオ アトラスブランド35thアニバーサリーエディション」を店頭や通販で購入しましょう。また、ダウンロード版の「メタファー:リファンタジオ アトラスブランド35thデジタル・アニバーサリーエディション」にもヒストリーブックのデジタル版が同梱されるので、お好みでお選びください。

そしてヒストリーブックを堪能した後は、『メタファー:リファンタジオ』の世界で“現実逃避”をどうぞ!
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