Nintendo DSで展開された、比較的低年齢層向けに作られた「ロックマン」シリーズ。ゲームデザインとしてはGBAの「ロックマン エグゼ」シリーズを踏まえた独特のシリーズ。それが、いま『流星のロックマン パーフェクトコレクション』となって蘇り、東京ゲームショウ2025にてまさか相見えるとは思いませんでしたよ。シリーズが全種類全作が揃っていて、まさしくあの時代へすぐ戻れるという。
実に久しぶりの対面となる「流星のロックマン」シリーズ。ただ、いま遊ぶと懐かしいなんて思いは消し飛びました。厳しいんですよ。ストーリーが。
リマスターされ、高解像度に対応した画面のなかで再び触れて思うことは、「考えてみれば、これもまたカプコンRPGでしばしば見られる苦みがある一作でもあったんだよな……」ということでした。
◆低年齢向けRPGとしては苦すぎる “不登校児童”のリアリティ
苦み。それは普通のRPGでは入れない展開をあえて入れていくこと。初代『流星のロックマン』の設定で思わず「やめてやってくれよ」と思ったのは、主人公・星河スバルが不登校になってるって始まり方なんですよね。
けっこうきついリアリティがあるんです。これ。
一応、父親の問題が理由で不登校になってるわけなんですが、当の子供が遊んだとしたらどういう理由であれ不登校は不登校の屈辱しか感じにくいものじゃないですか。ストーリー中で学校に行けず、布団にうずくまったまま、母親に声をかけられるシーンなんて胸が詰まりますから。
そんなスバルには友達なんて誰もいません。真夜中、人がいない街をひとりで歩き、夜空を見上げるような孤独な一日を過ごすのです。
なんだか孤立した人の生活を低年齢向けRPGでここまで細かく表現することはないだろ! 本当に昼夜が逆転して、昼の街を歩くことに後ろめたさしかないから夜にしか出歩けなくなることが多いんだ! こんなリアルに描きすぎず、もう少し手心を……と思うんですが、当時の『流星のロックマン』制作チームは追撃の手を緩めません。
スバルが今日も空を見つめたとたん、強烈な光が現れます。そこに現れたのは人間ではない何かでした。異様な姿の何かは、電波星人ウォーロックと名乗り、スバルにある提案をするのでした。それは、街を覆う電脳世界に入り込み、ある問題を解決すること。スバルはウォーロックに誘われるままに、電脳世界へ潜り込む姿、ロックマンへと変身し、現実世界の裏にある世界を探索することになるのでした。
ここから本格的に『流星のロックマン』ならではの冒険が始まるわけなんですが、話の流れとしてはこれまた嫌なリアリティがあるわけです。
これ、電脳世界に潜り込むというのは、今にしてみればインターネットで活動するみたいなものじゃないですか。ロックマンという偽名というか、別の姿で隠れて活動してるのも含めて「あっ!」となるといいますか。見方を変えれば、不登校の子がずっとネットで自分の居場所を作っていくみたいな話になってるんじゃないでしょうか?
「こんな身につまされるRPG、当時の小学生から中学生向けにやってやるなよ!」と思わず幕張メッセの真ん中で心の奥で叫んでしまいましたが、でも考えてみれば、このゲームが正直にそれを表現することで救われた子も多かったのかな、とも思うのです。
学校に馴染めず、ひとり部屋のなかでビデオゲームだけが、インターネットだけが社会に関われるわずかなラインだったという人は決して少なくありません。
『流星のロックマン』はそんな風に始まり、スバルが成長するストーリーを描くわけなのですが、身に染みるようなシビアなストーリーを混ぜ込んでくるところこそカプコンのRPGだな……と思いましたよね。
『流星のロックマン パーフェクトコレクション』は2026年、Steam / PS5 / Xbox Series X|S / PS4 / Xbox One / 二ンテンドースイッチにて発売を予定。傷ついた少年時代をもう一度振り返りましょう。あの頃から忘れられない何かがあります。たぶん。
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