しかし、勇者という立場を考えた場合、「いいえ」を選びにくい状況が度々訪れます。ここで「いいえ」を選んだらどうなるんだろうと思いつつも、場の空気を読んで「はい」を選んだ経験を持つ人も多いことでしょう。
果たして、「いいえ」の向こうにどんな反応が待っていたのか。昨年発売されたHD-2D版『ドラゴンクエストI&II』の『ドラクエI』を題材に、良識や常識が邪魔して見られなかった「いいえ」を選んだ先にある展開をお届けします。
■勇者の「いいえ」に、王様は意外と寛容!?
『ドラクエI』の主人公は、伝説の勇者「ロト」の末裔ですが、それを客観的に証明する手立てはなく、もし疑われた場合、明確に反論するのは難しいところです。
そのため、『ドラクエI』の冒頭でラダトーム王から「そなたは、本当に自分が勇者ロトの血をひく者だと信じておるのか?」と問われた時、「いいえ」を選んだらどうなってしまうのでしょうか。
叩き出されてもおかしくありませんが、王は「そなたは正直者だな! 気に入ったぞ!」と、消極的な反応を見せる勇者にも寛容な態度で接してくれます。
また、勇者という肩書に相応しい実績を積み上げた後に会うと、王から「あらためて頼みたい。どうか、これからも力を貸してくれ」といった申し出が。勇者を信じて送り出してくれた王の意気込みに応えるには「はい」一択ですが、ここでも「いいえ」を選ぶことが可能です。
この流れで「いいえ」を選ぶと、「勇者ロトの血と意志を受け継ぐ青年とは、そなたのことではないかと感じている」と述べ、「たのむ! 考えなおしてもらえぬか?」と重ねて頼み込まれます。一貫して否定を続ける勇者に対してすら、王は信頼を寄せ続けており、これこそが人の上に立つ度量なのかもしれません。
いくら「いいえ」を重ねても王の強固な意志は揺らぐことはなく、信頼し続けたからこその対応ともいえるでしょう。どれだけ否定を続けてもループしてしまうため、ここは勇者が根負けするしかありません。
■兵士が見せた返答後の反応に、思わずほろり
「はい」「いいえ」の選択を突きつけるのは、重要なシーンだけに限りません。洞窟の奥にある勇者の墓を目指す最中、かけだしの冒険者一行と出会い、「君も勇者の墓を目指してきたのか?」と質問を受ける場面があります。
ここで真意を隠して「いいえ」と答えることもできますが、冒険者は「ふん とぼけてもムダだ」と切り返し、自分たちが先にたどり着こうと画策します。疑心暗鬼からの決めつけに過ぎないものの、勇者の墓を目指していたのは事実なので、ちょっと悔しい展開です。
旅先で出会った吟遊詩人に、「もしや 僕のファンの子かい?」と訊ねられることもあります。空気を読んで「はい」と答えるべきかもしれませんが、だからこそ「いいえ」と返した時の反応が気になります。
ここで「いいえ」と返すと「エッ、ファンじゃない? 僕、けっこう人気なんだけどなぁ……」と、素で驚いたような反応を見せます。しかし、だからといって自信を失うようなそぶりがない辺り、実際にファンが多い人物なのだろうと感じられる場面です。
主人公の冒険が進んでいくと、周囲の人々から認められ、期待を寄せられることもあります。そんな中、竜王の恐ろしさを語り、「それでも行くのか?」と訊ねてくるメルキドの兵士がいました。
勇者らしい反応を返すなら当然「はい」ですが、だからこそ「いいえ」を選んでみたところ、「それがいい。誰もおまえをおくびょうとはいわないだろう」と、ちょっと意外な言葉が返ってきました。勇者が勇者でなくてもいい。それを受け入れてくれる反応に、なんだか励まされます。
■勇者の「いいえ」に、妖精たちの反応は?
選択を迫ってくるのは、人間ばかりではなく、さまざまな妖精が返答を求めてくる場合も少なくありません。妖精は戦いに不慣れなため、自分たちの代わりに「族長さまをさがし出してくれない?」と頼まれることもありました。
こうしたお願いを拒むのは勇者として少々抵抗を覚えますが、「いいえ」を突きつけると、隣にいた別の妖精が「ほら、やっぱり人間は最低だよ! こうやってボクたちが困っているのを見て、内心ニヤニヤしてるんだ!」と怒りをあらわにします。
しかし、質問を投げかけてきた妖精はその怒りに同調せず、代わりに「……私たちの聞き間違いかしら。族長さまを、さがしてくれるわよね?」と再要請。聞き間違いという体で、対応の変更を求めてきました。……やっぱり、少々怒っていらっしゃる?
ここでいくら「いいえ」と突っぱねても押し問答にしかならないため、諦めて提案を了承すると、「ありがとう! なにか手がかりがわかったら教えてね」とのこと。お礼は率直ですが、一度「いいえ」を経由した後だと、圧のようなものも若干感じられます。
また妖精の里では、妖精と力を合わせてルビスさまを呼び戻そうと話がまとまり、「ちからを貸して」と頼まれることがありました。明らかに「はい」を選ぶべき状況ですが、もちろん「いいえ」も選択できます。
ここで「いいえ」を選ぶと、「ひっどーい! いい雰囲気が台無しだよ!」と同席した妖精からストレートな憤慨を受けますが、その指摘は至極もっともです。
問いかけを投げかけた妖精は、勇者の返答も含め、そうしたやりとりには動じず、「……私たちの聞き間違いかしら」と仕切り直し、改めて同じ質問を重ねてきました。妖精たちの間では、望まない返答は聞き流してなかったことにする、という風習があるのかもしれません。
■勇者の「いいえ」に被害をこうむるローラ姫
「いいえ」で突っぱねる勇者らしからぬ対応は、重要人物から街の住人まで、幅広く用意されています。その中でも最も被害に遭いやすいのは、ローラ姫かもしれません。
囚われていたローラ姫を助け出した場面では、姫がとある事情から力が抜け、倒れてしまいます。そんな彼女に駆け寄る勇者を見て、ローラ姫は「私を連れて帰ってくれますのね?」と訊ねますが、ここでも「いいえ」を選ぶことが可能です。
長い間囚われ続け、体力はもちろん精神的にも追い込まれ、ようやく助かって安堵したと思った矢先に「いいえ」と答える勇者。あまりにもな展開に、姫も思わず「そんな、ひどい……」と呟いてしまいます。
とはいえ、勇者としてもローラ姫を助けないことには始まりません。
動けぬ姫を見捨てるかのような「いいえ」発言もなかなかの非道さですが、勇者にあるまじき行動として最大級に問題なのが、ラスボスである竜王とのやり取りでしょう。
竜王と対面した際、戦いを挑むより先に、竜王から「わしの味方になるか?」といった提案を持ち掛けられます。勇者であれば、そんな提案は到底受け入れられるはずもありません。竜王と戦うには「いいえ」を選ばなければなりませんが、これは勇者としてまっとうな「いいえ」です。
一方、竜王の提案を受け入れる「はい」は、まさしく勇者らしからぬ行為です。言葉としては「いいえ」と真逆ですが、勇者らしからぬ返答という意味で、「はい」を選んだ場合の末路も取り上げます。
「味方になるか?」という提案に「はい」と答えても、それだけでは竜王は納得しません。「友情の証として、そなたの武器をもらうぞ」と要求。この提案にも「はい」と答えて武器を差し出しますが、竜王は最後の提案を突きつけます。
ラスボスの味方になると答え、武器はおろか姫まで差し出す。もはや勇者とは到底呼べない所業に、ローラ姫も「そん……な……ひど……い……」と、絶望的に嘆くほかありません。
そんな竜王の甘言に乗り、勇者の道を外れて得たものは──闇の世界でした。何も見えぬ暗闇の中で、竜王の笑い声が響くばかりです。
……という顛末を迎えた直後、勇者は宿屋で目覚めました。「ゆうべはずいぶんとうなされていたようですが……」という主人の発言から察するに、一連のやりとりは夢の中の出来事だったのでしょうか。
しかし、そばにいるローラ姫は「……」としばらく無言のままで、ようやく口を開いたかと思えば「……参りましょう」と、なんだか含みのありそうな反応です。あの夢の一部始終をローラ姫も知っているのか、それとも……。なんとも苦い顛末と言えます。
■勇者らしさが溢れる「いいえ」も!
選択したのはプレイヤーの意志とはいえ、勇者の悪い面ばかりを取り上げるのはアンフェアでしょう。最後に、「いいえ」を選びつつも勇者らしい振る舞いを見せるシーンを紹介します。
ローラ姫を抱きかかえたまま竜王と対決するのも可能ですが、城に連れ戻すこともできます。姫の救出に城内が沸く中、ローラ姫は勇者に問いかけます。竜王に奪われた光の玉を取り戻しに行くのですか、と。
ここで勇者が「いいえ」と答えると、「……ウソが下手ですね」と切り返すローラ姫。周囲に心配をかけないように振る舞っているのだと、暗に指摘します。実際に勇者は、この後ひとりで竜王に立ち向かうため、ここで答えた「いいえ」にそうした意味があると考えても、なんらおかしくありません。
「いいえ」という言葉は、相手の問いかけを否定するため、ネガティブになりがちです。しかし、心配をかけまいとする「いいえ」には、ひとりで戦い抜く強い決意が込められており、まさしく勇者に相応しい一言に他なりません。
本作だけでも様々な「いいえ」が飛び出しますが、だからこそ反応が気になってしまうもの。『ドラクエI』には、今回取り上げたシーン以外にも様々な「いいえ」が眠っています。気になる人は、その目で直接確かめてみましょう。


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