第1回は、プレイヤーが女性主人公となり、さまざまな男性キャラクターとの恋愛模様を楽しむ作品として、すっかり世の中に定着した「乙女ゲーム」の流れを振り返ってみたいと思います。もともとゲームはRPGを中心に遊んでいたので、乙女ゲームはまだまだ日が浅いという気分でいましたが、気が付いたら10年以上も追いかけていました…ハマるって恐ろしい!そして10年分を語っていますので、この先はお時間に余裕のある時にどうぞ。
◆20年という長い歴史を持つ「ネオロマンス」シリーズ、女性に向けた『ときめきメモリアル』
乙女ゲーム始まりといわれるのが、1994年に登場したコーエーテクモゲームス(旧・光栄)の恋愛シミュレーションゲーム『アンジェリーク』です。こちらを筆頭に『遙かなる時空の中で』『金色のコルダ』『ネオ アンジェリーク』『下天の華』といった人気シリーズを送り出した「ネオロマンス」シリーズは、20年という長い間ずっと女性たちに愛され続けていますね。
まもなく発売となる『遙かなる時空の中で6』や、2015年発売予定の初代『アンジェリーク』を完全リメイクしたネオロマンス20周年記念タイトル『アンジェリーク ルトゥール』などと、20年を迎えてますますの盛り上がりをみせています。
2002年には、プレイステーション2(以下PS2)向けにコナミデジタルエンタテインメント(旧:コナミ)の『ときめきメモリアル Girl's Side』(以下『ときメモGS』)が発売。こちらも10年以上たくさんのファンに愛されるシリーズとなりました。当時は1作目のテーマ曲をあの人気アーティスト「B'z」が担当したのも話題でしたね。
『ときメモGS』は、すでに男性向けとして確固たる地位を築いていた『ときめきメモリアル』シリーズがありましたから、その完成度の高さは言うまでもありません。葉月王子とのデート中に照れくささが限界を超え、テレビの前でしばらく突っ伏していた記憶は10年以上経っても鮮明に蘇るほど。葉月珪くんとの出会いがなければここまで乙女ゲームにハマっていなかったこと思うと、大変に罪深い作品です。
今はシナリオを読み進め、選択肢でさまざまな展開に分岐するテキスト形式のアドベンチャーが主流となっていますが、「ネオロマンス」シリーズや『ときメモGS』は、パラメーターやイベントのタイミング管理が結構重要なシミュレーションとしても歯ごたえのある内容でした。
◆乙女ゲーム好きなら必ず通る!「オトメイト」誕生
2004~2008年頃に入ると、乙女ゲームの老舗ブランドとして親しまれるアイディアファクトリーグループの「オトメイト」が誕生し、ゲームだけでなくアニメや劇場版、ミュージカルまで幅広く親しまれる『薄桜鬼』ほか、数多くのゲームがPS2向けに生み出されました。
私が初めて遊んだ「オトメイト」関連のタイトルは、2006年発売の『緋色の欠片』です。この頃の私はテキストアドベンチャーにさっぱり馴染みがなく、一時保存する「クイックセーブ」とか、選択肢でとりあえずセーブという発想は一切なし。2時間ほどで味方の登場人物が全員お亡くなりになってしまうバッドエンドに直行し、絶望でうずくまりました。セーブはこまめにね!
ディースリー・パブリッシャーの『Vitamin』シリーズ第1作目となる『VitaminX』とか、ちょっと乙女ゲームとは系統が違うかもしれませんが『DEAR My SUN!!~ムスコ☆育成☆狂騒曲~』、カプコンの家政婦恋愛アドベンチャー『フルハウスキス』とか、体重100キロの主人公というインパクトで話題となった『乙女的恋革命★ラブレボ!!』とかもこの辺ですね。さらに1~2年後にはRejetのPC向け『TOKYO ヤマノテ BOYS』シリーズ、PS2向け『Lucian Bee's RESURRECTION SUPERNOVA』なんかも出てきました。
◆時代は携帯機へ!「じっくり遊ぶ」から「手軽に遊ぶ」
2010年に入ると、ニンテンドーDS(以下DS)の国内累計販売台数は3000万台、プレイステーション・ポータブル(以下PSP)は1500万台を突破。さっと起動してぱっと遊べる携帯機のスタイルと乙女ゲームの親和性が高かった部分もあってか、たくさんのタイトルが発売されるようになりました。
2009年~2010年頃のPSP向けには、「QuinRose」ブランドのPC向けタイトルや、CDやPCで展開していた『Starry☆Sky』シリーズ、PS2版の移植タイトルが多くありましたが、2011年頃には『華ヤカ哉、我ガ一族』『STORM LOVER』『AMNESIA』『アルカナ・ファミリア -La storia della Arcana Famiglia-』など、オリジナルタイトルも出そろいます。ニンテンドー3DSを含め、DS向けは『暗闇の果てで君を待つ』ほか個性的な新作もありますが、どちらかというと他ハードの移植タイトルが多くなっていますね。
そしてPSPの人気タイトル『うたの☆プリンスさまっ♪』がブロッコリーから発売したのは2010年。
◆乙女ゲームは「ゲーム」の枠を飛び越える!
ゲームとは少し話が変わりますが、2011年には「ネオロマンス」シリーズと「オトメイト」、女性向けのゲームやコミックの総合誌「B's-LOG」が乙女のための祭典「JAPAN 乙女・Festival」を、翌2012年には『ときメモGS』10周年を祝う「ときめきメモリアルGirl's Side 文化祭」が開催。それまで声優さんを呼ぶイベントといえば、聖地・パシフィコ横浜を中心とした「ネオロマンス」関連でしたが、徐々にブランドやシリーズものに限らず、個々のタイトルのオンリーイベントも当たり前に行われるようになりましたね。
そして、2003年に始まった人気コミック『テニスの王子様』を元にしたミュージカル、通称「テニミュ」は、若い女性を中心に絶大な支持を獲得。乙女ゲームも2008年に『ネオロマンス・ステージ 遙かなる時空の中で 舞一夜』、2012年にミュージカル『薄桜鬼』、以降も『AMNESIA』『BROTHERS CONFLICT』『STORM LOVER』『CLOCK ZERO ~終焉の一秒~』『遙かなる時空の中で5』など、多数の舞台・ミュージカルが上演されるようになりました。『STORM LOVER』は水着姿まで披露し、『AMNESIA』ではゲームさながらのマルチエンドも再現。先日発表となったばかりの『下天の華』も気になります!
ちなみに乙女ゲームではありませんが、2009年にはカプコンが宝塚とタッグを組んで行った『逆転裁判』シリーズ、2009年から始まった舞台『戦国BASARA』シリーズを展開。このほかにも『BLAZBLUE』『ペルソナ3』『ペルソナ4』『STEINS;GATE』『ファンタシースターオンライン2』とかもありましたね。個人的には『BLAZBLUE』の映像を上手く使った必殺技演出と、展開分かってても号泣した『STEINS;GATE』が好きです!
ゲームのメディアミックスといえばコミック、アニメ、CDが軸となっていましたが、今の乙女ゲームはイベントやライブ、舞台・ミュージカル、ファッションブランド、ショップ、カフェとのタイアップなど、何とコラボレーションしてもおかしくないほど「なんでもアリ」といえる状態に。ファンとしては、とにかく常にお金を貯めて備えておくしかありません。
◆ハードの変遷でみる乙女ゲームユーザーの特徴
2014年3月、「オトメイト」がPS Vitaへの完全移行を宣言。2004年12月にPSPが発売してからおよそ10年、2014年6月3日に国内出荷停止となる直前の出来事でした。すでに発売している人気タイトルも続々とPS Vita向けに移植しています。
ここで少し話の時期が戻りますが、PS2はソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCE)から2000年3月4日に発売され、2012年12月28日に国内出荷停止となりました。出荷停止となる間際、2010年~2012年に発売したPS2ソフトをSCEの公式サイトでゲーム検索してみると、発売タイトルは115作。そのほとんどは廉価版や他ハードで発売済の一方、2006年11月11日発売のPS3に向けたタイトルは650ですから、大半の人気ゲームはPS3へ移行した後、というタイミングでしょう。
しかし、そんな中でもPS2向けに『猛獣使いと王子様』『薄桜鬼 黎明録』『スカーレッドライダーゼクス』など、続きもののファンディスクも含め、新作乙女ゲームは発売され続けていました。そしてPSPが出荷停止となった2014年6月を過ぎ、2015年に入ってもPS Vita版とPSP版を同時発売するタイトル、PSP向けのみの発売は続いています。(もちろん、今発売しているPSPのみのソフトは当初の発売日より延期になったケースもあるので、あえて「PSP向けだけ」にしたかどうかは分かりませんが)
ハードの機能をフルに活用する、いわゆる大作ゲームや美麗なグラフィックを追求するタイトルは新しいハードが出れば早い段階で移行し、プレイヤーもそのゲームを遊ぶためにハードを購入するケースが多いかと思います。しかし乙女ゲームをメインに遊ぶプレイヤーはハードの移行をあまり急がず、持っているハードで出たら遊ぶ、という傾向にあるのかもしれませんね。そんな状況をふまえ、完全移行宣言をした「オトメイト」の決断は、乙女ゲームの歴史に大きな意味をもつと感じています。それにしても「究極形態から愛の大海原へ」とか「革命(メタモルフォーゼ)」とか「僕を眩しいくらいに照らす御来光(アマテラス)」とか考えた人、天才ですか。
私も最初こそPS Vita向けといっても「PSPより画面が大きくなったくらいじゃないの?」と思っていました。でも!遊んでみると本当に「画面がキレイ」なんです。これまで画面内で潰れてしまっていた細部や色のグラデーションなどがハッキリ見える!感動モノでした。「オトメイト」はもちろん、先日発表されたRejetの新作、今後予定されている『うたの☆プリンスさまっ♪』新作も楽しみですね。
◆ソーシャル/アプリゲームもチェック!
また、忘れてはならないのが携帯電話の存在。2008~2010年には「iPhone」、2011年頃からは「スマートフォン」も広まり、1人1台以上の時代となりました。GREEの「グリー」やDeNAの「Mobage」などを通じて楽しむソーシャルゲームやアプリゲームも大流行し、2011~2012年には「ネオロマンス」シリーズから『100万人の金色のコルダ』『100万人の遙かなる時空の中で』、2013年にはコナミデジタルエンタテインメントがレストラン経営と恋愛が楽しめる『ときめきレストラン☆☆☆』をリリースしました。(『ときめきレストラン☆☆☆』は、2014年8月に運営をコーエーテクモゲームスに移管しています)
2013~2014年には、男性を中心に好評を博したタイトルの女性向けバージョン『ボーイフレンド(仮)』『アイドルマスター SideM』も。PS Vita向けとして2015年2月に発売した『男遊郭』(アプリ名:逆転吉原)や、6月発売予定『5人の恋プリンス ~ヒミツの契約結婚~』も元はiPhone/スマートフォン向けのアプリゲームです。
ソーシャル/アプリゲームでは好きなキャラクターの色々な一面が見れる「カード」、自分の分身となる「アバター」向けのアイテムを収集するといった、ゲーム機向けとは違った楽しみ方ができます。2015年に彗星のごとく現れたブラウザゲーム『刀剣乱舞』の行く末も気になるところ。基本無料というものも多く、気軽に始められるので、ちょっとでも興味があればとりあえず流行にのって遊んでみましょう。
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私の個人的な目線で乙女ゲームについて振り返ってみましたが、なにぶん10年の振り返りなので大変長くなった点についてはご容赦ください。今後も独断と偏見で乙女ゲームについて語っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。