インサイドをご覧の皆様、こんにちは。独断と偏見で乙女ゲームについて語り尽くす「オトナの乙女ゲーム道」第2回では、2月19日に発売されたPS Vita向けソフト『男遊郭』について色々語ってみたいと思いますので、どうぞお付き合いください。


◆アプリからPS Vitaへ――よりパワーアップしたゲームシステム

本作はディースリー・パブリッシャーの乙女ゲームで、もともとはアプリ『逆転吉原』として登場。PS Vita版の発売前にアプリ版も遊んでみましたが、イベントスチルも高解像度向けに調整されていて、描き足しも含めより美麗なグラフィックを堪能できるように。アプリと比べて1度に表示される文字数も多いせいか、言い回しなどがより丁寧に、濃密になっている印象を受けました。

さらに新キャラ「伊東慶次」の追加、新エンディングルート「悲恋」の追加、フルボイス化、格好いいオープニングムービーなどなどアプリを堪能したお嬢さんでも改めて楽しめる内容になっています。

システム面では、ボタンに加えタッチ操作にも対応。個人的にはLボタンで自動、Rボタンで早送りを切り替えるより、画面をポンポンっとタッチするほうが簡単でした。文字送りも文末のタッチで行えますし、画面を上から下にスライドするとバックログ、下から上でセーブやオプション画面をさっと呼び出せます。特にアプリで遊んでいた人は、タッチのほうがしっくりくるかもしれませんね。

そして1番ありがたかったのが選択肢での「オートセーブ」です。選択肢の前でセーブをしようと思っていても、うっかり忘れる事の多い私には便利でした。□を押しながらLボタンでクイックロードとオートセーブのロード、□を押しながらRボタンでクイックセーブと、操作もすぐに覚えられるくらい簡単です。欲をいえば、選択肢で早送りを解除する・しないも選べると最高でした。
操作方法は、スタート画面の「?」マークのついた本のアイコンでも確認できますよ。

ちなみに、もともと『逆転吉原』の企画段階のタイトルが「男遊郭島」だったという裏話や、PS Vita版とアプリ版の違いなどをシナリオ/原画を担当した「ひつじぐも」のブログで紹介しています。プレイ済の方もぜひ一度見てみてくださいね。

◆女が男の一夜を買う「女宝島」で紡がれる、深い情愛の物語

さて、本作の舞台となるのは、男がほとんど生まれない島「女宝島(めほうじま)」。そのため女が男と出会い、子供を身ごもるためには「吉原遊郭」で男を買うよりほかありません。

この吉原に集っているのは、たまたま生まれた男、島の外「本土」から売られてきたなど、さまざまな理由を抱えた若く美しい男たちばかり。彼らは手練手管(てれんてくだ/人をあの手この手で巧みに操る様)で、愛を求める女に一夜の夢を売ります。

主人公の「偉宝(ひでとみ)みさを」ちゃんは、そんな風習を当たり前として育った女の子。とはいえ、彼女自身はまだ男女がもつ本当の愛憎、愛欲の渦巻く「郭遊び(くるわあそび/遊郭で遊ぶこと)」を知りません。

しかし、ひょんなことからある男女の命がけの逃亡を手助けし、お礼として大金を手にしてしまいます。そんな彼女が、これまたちょっとした勘違いから宴を一席設けると誘われてしまい、どの傾城(けいせい/体を売る遊女のこと。本作では男性)を選ぶかというところから物語が始まります。


当初こそ、女を悦ばせる術に長けた彼らに魅了されるみさをちゃんですが、彼女の純粋で一途、ひたむきな愛情に傾城も少しずつ惹かれていきます。でも本来傾城は、誰にでも夢を売る一夜限りの関係。その情愛がただ1人にのみ向けられることは、あってはなりません。嫉妬に狂う女、本当に好きではない傾城の子を産んだ女、愛した人ではなくお金持ちに身請けされてしまった男…この島にはそんな悲しい運命に翻弄された男女がたくさん存在するのです。

時代としては、現代でいうところの明治~大正くらいでしょうか。島の人や傾城たちは和装ですが、ブラウスにスカートという主人公をはじめ、本土や海外に関係する人は洋服を着ていることも多いです。一部の傾城は洋装姿も披露してくれるので、プレイ中のお楽しみとしてご期待ください。

そんなわけで、本作には普段ほとんど聞かな、古めかしい言葉が出てきます。先ほどから少し紹介していますが、ここで簡単にまとめておきますのでプレイの際の参考にしてみてください。あくまで本作向けのざっくりした解説なので、実際の意味とは異なる場合がありますのでご注意を。

■禿(かむろ)
傾城の世話をする子供。ここでは少年。
「ハゲ」じゃない。

■おぼこ
まだ男を知らない女、生娘(きむすめ)のこと。

■丁稚(でっち)
店で下働きをしている人。

■初心(うぶ)
初々しい様、男女の関係を理解してない状態。

■年季明け
借金の形など、売られた傾城が店への借金を返し終わった状態。

■身請け
傾城の抱える借金を肩代わりしてあげること。現代の数千万ともいわれる。

■花魁(おいらん)
位の高い傾城のこと。

■振袖新造(ふりそでしんぞう)
まだ客を取る前で、体を売ったことがない見習い傾城。

■遣り手(やりて)
遊郭全体を管理する立場の人。年季明けした傾城が務める場合も多い。

■夜鷹(よだか)
位の低い傾城。


■花魁道中
花魁が若い傾城をたくさん連れて吉原を歩くこと。

■金子(きんす)
要するにお金。

みさをちゃんのキャラクター紹介にさらりと「生娘」って書かれるのはちょっと面食らいましたが、ゲーム内でも普通に言われます。その辺りも覚悟して遊んでくださいね!

◆美しく、艶めかしい魅力を秘めた「傾城」たち

本作の攻略キャラクターは、主人公に「格好いい」「たくましい」「力強い」なんていう男らしい一面に心がときめくようなタイプではなく、「美しい」とか「綺麗」とか、肌が白くてすべすべとか、まつ毛が長いとか、いい匂いとか、女性を賛美するような表現がぴったりの人達です。

とはいえ高級感はありつつも、煌びやかな飾りを身に着けるとか「女性」っぽい印象はないんですよね。それに傾城とて男性ですから、もちろん寝所では「男の顔」も覗かせるわけです。みさをちゃんをはじめ、プレイヤーはこのギャップに参ってしまうのかな、なんて気がします。

そして、フルボイスならではの声優さんの演技が素晴らしい!身も蓋もない言い方をすれば「エロい」に尽きるんですが、とにかくブレスとかリップ音が多い!多いよ!愛を売るのが傾城ですから、普通に話すシーンなのにしっとりとした艶っぽさ全開で、かと思ったら愛を囁く際にはちょっと必死で余裕のない具合も醸し出す…とでもいいますか。気になった方は、ぜひ公式サイトのサンプルボイスを聞いてみてください。結構長めなので、雰囲気はばっちり掴めると思います。

さて、そんな罪深い傾城を1人ずつみていきましょう!

■高尾(声:森久保祥太郎)
吉原の遊郭「菊屋」の花魁で、自他ともに認める人気ナンバーワン。ちょっと派手好きで見栄っ張り、飾らない言葉遣いで他の傾城と言い争いになることもありますが、周囲を気にかける優しさも持ち合わせています。


一見、俺様然とした高尾ですが、根はとても繊細。心の底から愛する人のためならどんな困難にも立ち向かう、諦めない強さも備えた男前なキャラクターです。

太夫の座を欲しいままにする高尾ですが、なかなか年季明けの気配がありません。それにはある理由が…。また、みさをと高尾、惹かれあう2人の出生についても意外な事実が発覚。どう立ち向かうか、目が離せませんよ。

■ときわ(声:鳥海浩輔)
ときわは半分異国の血が混ざった傾城で、金髪翠眼という容姿の持ち主。その珍しさ、歌や舞の美しさに惹かれる女性は後を絶たず、高尾や神楽に及ばないものの人気は上々でした。今はある出来事から、高尾の付き人として修業を命じられています。

「菊屋で成り上がるには、自分の姿を最大限に利用するしかない」と考えるときわですが、実は過去の出来事から容姿に強いコンプレックスも抱いています。みさをちゃんとの触れ合いで少しずつ頑なな心が解きほぐされていきますが、そんな中、吉原で位の高い傾城ばかりを狙った刃傷事件が発生。そこでときわの取った行動が、2人の運命を大きく変化させます。
みさをちゃんが「ときわを男にする」献身っぷりにご期待!

■神楽(声:置鮎龍太郎)
神楽は、高尾と菊屋での人気を二分する傾城です。剣術、古典、書道をはじめ、海外の学問にも造詣が深く、舞の美しさも一級品。ほとんど笑顔は見せず、客も選ぶという神楽ですが、幼い頃から面倒をみていたかげろうの事は誰よりも大切に思うなど、本当は優しい人物です。

傾城でありながら、ある「夢」のために己を研磨する神楽の姿に惹かれ、力になろうと奮闘するみさをちゃん。しかし高価な学術書を手に入れ、プレゼントしようとした矢先トラブルに巻き込まれてしまいます。思わずこっちが「なん…だと…」と凹んでしまうような出来事にもめげず、自分のことよりも神楽のためにと必死に頑張るみさをちゃんはすごいなって思いました。

■かげろう(声:野島健児)
神楽の付き人として、修業を積むかげろう。まだ筆おろしも済んでいない見習いの身であり、ずいぶんと若いですが傾城としての才能は折り紙つき。神楽を兄のように慕い、その背を追うように学問や武芸の稽古を欠かしません。普段は学生服ですが、もちろん着飾った姿も見ることができますよ。

神楽にはとても素直なのに、周りにはキツイ言葉遣いなど可愛くない態度をとるかげろうですが、実のところは愛情の裏返し。時折みせる可愛らしさにはキュンとします。お世話になった神楽へ恩返ししたいというのも本音ですし、もっと勉学に励みたい、みさをちゃんを好きだという本音に思い悩む中、ついにかげろうにも傾城として初仕事の日が決まり…。最後の展開、ずるくないですか?!

■いろは(声:黒田崇矢)
すでに年季明けし、今は菊屋の遣り手として店を取り仕切るいろは。「鬼の遣り手」と恐れられるほど容赦はありませんが、全ては菊屋のため。どうしてそれほど菊屋にこだわるのかは、彼の出生が大きく関係しています。高尾ルートでその片鱗が一瞬だけ垣間見えますが、詳しくはいろはルートで!慶次ルートもいろは好きは見ておきましょう!

もう客を取る立場にないいろはですが、みさをちゃんに根負けする形で郭遊びに興じることに。子供の相手をするような態度かと思えば、蠱惑的にみさをちゃんに接してくるなど、その本意はなかなか掴めません。低音ボイスの放つ色香と、肌色的な雰囲気を楽しみたい方におススメしておきます。

■伊東慶次(声:柿原徹也)
やや強引で快活、生命力に溢れた菊屋の新入り傾城・慶次。歌や踊りの腕は本物ですが、傾城らしからぬ奔放な振る舞いが目立ちます。それでもどこか憎めない愛嬌と、他の傾城に負けないくらいの妖艶さが見え隠れする不思議な魅力がありますね。

そんな慶次は、ある目的のためにこの女宝島を訪れました。そもそも、何故この島では男が生まれないのか?何故男たちに苗字がないのか?といった世界観に迫るストーリーとなっています。他のキャラクターとは違い、吉原に留まらず色々と場面が移り変わるのも特徴的ですね。

杉田智和さん演じる、目元のほくろがセクシーな執事の「冴木」が登場するのもこのルート。他のルートをしっかり遊んで慶次ルートに挑戦してみてください。

なお、個人的な趣味と設定的なものによるおすすめ攻略順は、神楽orかげろう→ときわ→高尾→いろは→慶次です。ご参考までに。

◆エンディングは甘々から切なさまで3種類!目指せフルコンプ

本編には、選択肢の好感度に応じて変化する「祝言」「幸福」「悲恋」といった3つのエンディングが用意されています。祝言はもうそのまま、文句のつけようがない大ハッピーエンド!幸福は「日常で感じるささやかな幸せを噛みしめる」といった感じで、私は幸福エンドも結構好みですね。また悲恋は「本来は決して結ばれることのない、傾城と女の恋」に仕上がっており、ひどく悲しいというよりはただただ切ない、といった感じでした。

これ以外にも、章を終えるごとに「恋文」が届き、外伝も解放されます。外伝は季節的なイベントを楽しむといったものが多く、乙女ゲームの鉄板・バレンタインなんかもありますよ。初々しいものから『男遊郭』らしいノリまで色々ですし、イベントスチルもあるので見ない理由はありません!

また、これでも物足りないユーザー向けにはダウンロードコンテンツも。エンディング後のストーリーとなっており甘い雰囲気たっぷりですが、なかには攻略キャラクターの視点やスチル付きものもの。

かげろうの違う一面を堪能できたり、いろはがどんなことを考えながらみさをちゃんに接しているかを垣間見たりすることができます。全9種類、価格は200~400円で個別に購入もできますが、私みたいな面倒くさがりや向けにまとめたセットも用意されてますよ。

アプリ版と同様、手軽にさくさく楽しめるシステムになっていますので、まだ遊んだことのない方はぜひプレイしてみてくださいね。

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