お墓参りに行くと、手桶に水を入れて持って行き、ひしゃくで墓石に水をかけますが、どうしてそんなことをするか、考えてみたことはありますか?

もちろん、実用的な理由としては、お墓の汚れを落としたり、水をかけて清めたりという意味もあります。しかし、実は仏教的な理由が他にあるのです。


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死者が訪れるという6つの世界のうちのひとつ、「餓鬼界」には水がないといわれています。そのため、お墓に水をかけることで、ご先祖様をノドの渇きから救うという意味があるのです。

また、墓のそばにいるという「餓鬼」への施しという説もあります。餓鬼は普段は水を飲めないのですが、お墓にかけられた水は飲むことができるといわれているのです。つまり、「餓鬼」のような存在にすら慈悲の心で施しをする行為だという考え方ですね。

もう一つ。お墓に水をかけることが合図となって、ご先祖様が墓参りに来た人たちの前に現れるという説もあります。いずれにしても、お墓に水をかけるときは、お墓全体が濡れるくらい、たっぷりとかけたほうがよいといわれていますので、手桶の水はケチらずに使うとよいでしょう。

一方、「お墓に水をかけるのはNG」とする場合もあります。

このような場合は、お墓に水をかけることによって、ご先祖様を水浸しにすると考えられるからです。確かに、墓石を人に見立てれば、いきなり頭からばさーっというのは失礼に当たります。こういった場合も水をかけた後も水浸しにして放置せずにたくさんかけた後にタオルでしっかり拭くといった方法をとっている場合もあるようです。


水をかけない場合もある。お墓参りで墓石に水をかけるのはどうして? 


また、水をかける場合でも、いきなり水をてっぺんからかけるのではなく、横から少しずつかけていくというやり方を取っている地域もあります。

お墓に水をかけるかどうかも含め、水のかけ方の流儀も、お墓のある寺院や霊園やその土地の慣習に従う必要があります。

自分のお墓のある地域の習慣がどうなっているのか、住職や霊園を管理されている方から事前に指導を受け、死者に対しても、生者に対しても失礼のない気持ちの良いお墓参りをしたいものです。

参考

  • 『お墓とお葬式のすべて』(エイ出版社編集部 2018)
  • 『ご先祖様ありがとう!心が落ち着く先祖供養 Kindle版』(夢ツキ倶楽部)

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