平成からの改元をはじめ様々な出来事のあった令和元(2019)年も、気づけば残り三週間を切りましたが、お正月の準備は進んでいますか?

「え?まだクリスマスもやってないのに、気が早すぎるんじゃない?」

そう思われる方も多いかも知れませんが、かつては旧暦12月13日を「正月事始(しょうがつことはじめ)」として、その準備をスタートする日とされていました。

お正月準備は12月13日から?年末の伝統行事「正月事始」を紹...の画像はこちら >>


12月13日は「正月事始め」。


「え?お正月の準備なんてお歳暮も送ったし、せいぜい(クリスマスの片づけを兼ねた)大掃除と飾り付け、あと年賀状を書くくらいじゃないの?それに半月以上(※旧暦では一か月が30日なので、18日間)もかけるの?」

現代だと多くの方がそんな感覚だと思われますが、昔のお正月準備は現代ほどお手軽ではなかったようです。

■お正月の歳神様を迎えるために

お正月と言えばおせち料理が定番ですが、その煮炊きには竈(かまど)が使われ、竈で燃やす薪(たきぎ)を採りに行く必要があります。

「そんなの、あらかじめ集めておけばいいじゃん」

現代的な感覚ならそう思うでしょうが、それではお正月の準備になりません。たとえ同じような薪であっても、お正月の歳神(としがみ)様をお迎えするために、なるべくお正月の準備専用に新しいものを揃えて差し上げるのが心遣いと言うもの。

そんな調子で一から調達していく(※現代のようにお金さえ出せば、既製品が一通り揃った訳ではない)ため、とても時間がかかりました。

お正月準備は12月13日から?年末の伝統行事「正月事始」を紹介


お正月の準備に大忙しな江戸の風景。歌川豊国「冬の宿 嘉例のすゝはき」江戸時代

他にも煤払(すすはらい。要は大掃除)や松迎(まつむかえ。門松や正月飾りの材料となる松などの調達)、お歳暮の挨拶回り(昔はギフトを直接持って伺うのが常識でした)など、色々と忙しかったようです。

「でも、そんなに時間がかかるなら、もっと早く、それこそ12月1日からでも始めればいいんじゃないの?」

と思ってしまいますが、この12月13日という日取りにも、ちゃんと意味があります。

■12月13日は二十七宿「鬼宿」の吉日

江戸時代まで使われていた太陰暦(宣明暦-せんみょうれき)では、毎年12月13日は何事にも吉日とされる「鬼宿(きしゅく。二十七宿、後に二十八宿の一つ)」に必ず当たり、他の日のように一喜一憂せずにすむため、縁起のよいお正月を迎える準備に最適な日として定められました。


もちろん、明治以降(現代)は太陽暦を採用しているため12月13日が必ずしも鬼宿ではなく、また日常業務の忙しさに、のんびり正月の支度なんてしている余裕はないでしょう。

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煤払いでごった返す家の中。まだ終わっていない内から年越し蕎麦をたぐったり(左下)、なぜか胴上げしたり(中央)、……長谷川雪丹『東都歳時記 商家煤掃』江戸時代

しかし、そんな忙しい中でも頭の片隅に「昔の人たちは、じっくりと手間暇をかけ、丁寧にお正月を迎えていたのだな」と思いを寄せることで、来る令和二(2020)年を迎える心持ちが少し豊かになるかも知れません。

※参考文献:
辻川牧子『心が豊かになる 季節のしきたり 和のおしえ』KKロングセラーズ、2018年11月

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