2019年12月27日、同年11月29日に亡くなった中曽根康弘元首相に「大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)」が授与されることになったというニュースが報道されました。
また同日、アフガニスタンで銃撃され亡くなった医師の中村哲さんに、内閣総理大臣感謝状と「旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)」とが贈られたことが報じられました。
どちらも日本の勲章ですが、このようにニュースなどでその名前を耳にすることはあっても、どういう人にどのような基準で授与されるものなのか、私たちにはあまり馴染みがないですよね?
■中曽根元総理大臣に贈られた「大勲位菊花章頸飾」
中曽根元総理大臣に贈られた「大勲位菊花章頸飾」は、日本では最高位の勲章で、受章者の多くは天皇・皇族・長年内閣総理大臣を務めた者・外国の国家元首などです。

大勲位菊花章頸飾/Wikipedia
その授与基準は
「大勲位ニ叙セシ者ニ特別之ヲ賜フ(宝冠章及大勲位菊花章頸飾ニ関スル件2条1項)」
とされていて、1876(明治9)年に制定された大勲位菊花大綬章の受章者に同時に授与される場合と、既に大勲位菊花大綬章を受章している者に加えて授与される場合があります。
その名のとおり日本の勲章の中で唯一「頸飾(首飾り)」の形状をしていて、全てのパーツが22金で作られ、製造原価もとても高いのだとか!
天皇・皇族・外国の国家元首以外は中曽根氏のように没後受章が多く、一般人で生前に授与された人はたったの6名です。
■アフガニスタンで亡くなった医師・中村哲さんに贈られた「旭日小綬章」
アフガニスタンで人道支援の活動中に銃撃されて亡くなった医師の中村哲さんに贈られた「旭日小綬章」は、2003(平成15)年の栄典制度改正以前は「勲四等旭日小綬章」と呼ばれていた勲章です。
日本で最初に勲章として「勲一等」から「勲八等」までが制定され、後に6等級に改正された「旭日章」の、上から4番目の等級となります。

旭日章/Wikipedia
授与基準は
「国家又ハ公共ニ対シ勲績アル者(勲章制定ノ件2条1項)」
とされていて、これまでに俳優の江本明さんや落語家の桂歌丸さん、歌手のアグネス・チャンさんなどにも授与されています。
勲章の丸い章の部分は、その名のとおり「八方向に伸びる『旭光』を持つ『日章』」を表現しています。
■主に女性皇族などに贈られる女性限定の勲章「宝冠章」
宝冠章は、日本で唯一の「女性のみに授与される勲章」です。
明治時代に制定された大勲位菊花章や旭日章は、当初は授与の対象が男性に限定されていたため、「国民に対する栄典の公平を!」ということで女性のための勲章が作られたのでした。

宝冠大綬章(旧・勲一等宝冠章)正章/画像出典:宝冠章/Wikipedia
制定当初は旭日章と同じように「勲一等」から「勲八等」までがあり、栄典制度の改正により勲七等と八等が廃止されて6等級になりました。
2003(平成15)年の栄典制度改正以後は、先述の菊花章や旭日章・桐花章などの勲章が女性にも授与されることになりました。
そのため、女性限定の勲章だった宝冠章は日本の女性皇族や、外国の国家元首などの公式訪問で儀礼叙勲として贈られるものとなり、一般には授与されなくなりました。
近年では、秋篠宮家の次女・佳子内親王が成年皇族となった際に、最高位の「宝冠大綬章」を授与されています。
「宝冠」とは古代の女帝の冠のことで、それを縦長の楕円形にアレンジして両脇を竹の枝が囲んだデザインとなっています。
勲章授与のニュースを見る機会があったら、ぜひその種類にも注目してみましょう!
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