疫病退散として人気になっているアマビエも、今やお菓子のモチーフやイラストだけにとどまらず、人気キャラクターとのコラボレーションも行われ、多方面でよく見かけるようになりました。
このアマビエにはルーツとなる妖怪「アマビコ」がいるという話題も紹介しましたが、
妖怪「アマビエ」のルーツ?越後国の海から光る姿で突然現れた「アマビコ」の謎に迫る
実は、疫病を退ける妖怪や幻獣は、アマビエだけではありません。今回は、病除けとして活躍してきた不思議な生き物たちをご紹介します。
■病除けの「海坊主(うみぼうず)」
歌川国芳 『東海道五十三対 桑名』海坊主
海坊主は、海に出没する妖怪です。海面が突然盛り上がり、坊主頭の黒い巨人が目を光らせて現れるとされ、遭遇すると船を破壊されてしまうとして恐れられていました。
しかし、この海坊主が疫病を退ける役割を担っているケースがあります。
明治12年10月20日の『安都満新聞』には、上総国夷隅郡(現千葉県勝浦市)の村では、「海坊主の姿を絵に描いて家の門に張り付けておくと、悪い病にかからない」と信じられている、という記事が掲載されました。
■頭は女性、首から下は魚の「神社姫(じんじゃひめ)」

神社姫
神社姫は、頭が鬼女、首から下は魚の姿をした幻獣で、その正体は竜宮の使いであるといわれています。
神社姫は文政二年に肥前国(現佐賀県、長崎県)に現れ、七年間の豊作とその後の疫病の流行を予言しました。そして、その疫病を防ぐには自分の姿を絵に描き、それを見ると難を逃れられるといい残して海に沈んでいったといわれています。
■朝夕に拝めば病除けに!「ヨゲンノトリ」
ヨゲンノトリは、安政四年に加賀国に現れた、頭が二つある鳥です。
ヨゲンノトリは、次の年の八月、九月に世の中の人の九割が死んでしまう難が起こることを予言しました。そして、自分の姿を朝夜に拝み、信心すれば難を逃れることができると言ったといわれています。
■疫鬼を頭からバリバリ!「神虫(しんちゅう)」

神虫
平安時代末期~鎌倉時代初期に描かれたといわれている辟邪絵(へきじゃえ)には、病をばらまく鬼である疫鬼(えんき)を捕まえてバリバリと食べる巨大な虫の姿が描かれています。
この虫は神虫と呼ばれており、病を退ける神を描いたものだといわれています。
昔から、疫病の流行は人の命を大量に奪うものとして恐れられていました。昔の人が少しでもその不安を和らげるために妖怪や幻獣の力を信じ、拝む姿は、現在のアマビエやヨゲンノトリがSNSで流行していることに通ずるものがあります。
未知の病に対する恐れは、昔も今も変わりありません。不安な気持ちを少しでも和らげて、感染症に打ち勝っていきたいですね。
参考文献:湯本豪一編『帝都妖怪新聞』角川ソフィア文庫 平成23年8月25日刊
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