現代にも伝わる江戸時代の奇談「本所七不思議」をご存じですか? 昔から、映画や落語のネタにもなり現在でも知る人ぞ知るお江戸の都市伝説として人気があります。
もちろん、江戸時代当時とは大きく様変わりした本所(墨田区)ですが名残は残っているのです。下町散策のついでに、本所七不思議の場所を訪れてみませんか?
■いわゆる江戸時代の都市伝説・本所七不思議とは?
夜も更けると月明かりだけの闇…
(写真:photo-ac)
「本所七不思議」は江戸時代から、本所(墨田区)界隈に伝わる7つの怪談・奇談です。
昔から、落語や映画などのネタとして現代まで語り継がれてきました。
一定の地域で起こった不思議な現象を7つまとめた「七不思議」は、日本各地にあり、本所七不思議以外にも、遠州七不思議・越後七不思議・伊豆七不思議などいろいろな話があります。中には、7つ以上話があることもあるようです。
今回は、東京都墨田区の本所に伝わる本所七不思議をご紹介しましょう。(同じ話でも、諸説あり多少内容が異なるものもあります)

本所七不思議(illustration:ERI)
■【1】おいてけ…と不気味な声が追いかけてくる「置行堀(おいてけぼり)」

「置いてけ堀」
(写真:wikipedia)
江戸時代、本所界隈は水路の多い場所で、町人たちは魚釣りを楽しんでいた。そんなある夕暮れ時、太公望(※)が釣り上げたたくさんの魚を持って帰ろうとしたところ。
「おいてけ……おいてけ……」と、どこからともなく不気味な声が追いかけてきた。辺りを見回すも誰の姿もない。
ゾッとして一目散に家へ逃げ帰ったところ、魚籠(ビク)に入っていたたくさんの魚が一匹も残っていなかった。
※太公望:釣り人のこと
この話は、犯人は「ムジナ(たぬき)だ」「かっぱだ」といろいろな説が繰り広げられています。いわゆる「置いてけぼりにされてしまった!」というときの置いてけぼりの語源は、この話が由来だそうです。
【「置行堀」があったとされる場所】
江東区立第三亀戸中学校の正門横に「おいてけ堀跡」の碑があります。かつて、この場所は田畑でその中に釣り堀のような場所があり「オイテケ堀」の名が付いていたとか。
また、錦糸町駅そばにある「錦糸町堀公園」には、かつて「錦糸堀」があり、ここがおいてけ堀だったという説もあるのです。今でも公園にはカッパの銅像が飾られています。
■【2】夜中にどこからともなくお囃子の音「狸囃子」

狸囃子
(写真wikipedia)
稲穂がなびく頃のこと。どこからともなく聞こえて来る笛や太鼓のお囃子の音に心惹かれ、つい家を出て探してみたものの、音は逃げるように遠ざかってしまう。
いくら追いかけてもつかまらず、歩き疲れ家に帰って寝てしまうが、明け方目がさめると家だと思ったのは野原だった。たぬきに化かされたというお話。
「狸囃子」があったとされる場所 墨田区立本所中学校前の、やや南にある春日通りの本所北割水という堀の周辺と考えられています。
■【3】燈なし蕎麦(消えずの行灯)

燈無蕎麦
(写真:wikipedia)
夜になると、二八蕎麦屋の屋台が並ぶ本所南割下水付近。
もし、その行灯に火を点けると不幸に見舞われる。逆に、店主がおらず、油を注いでいないのに一晩中消えない行灯を掲げている蕎麦屋があり、その店に寄ると不幸になるという話もある。
「燈なし蕎麦」があったとされる場所 錦糸町駅そばを走る「北斎通り」。この下には江戸時代に作られた「割下水(わりげすい)」という堀状の水路があります。
燈なし蕎麦や消えずの行灯の話はこの南割下水界隈で起こったそうです。北斎通りに面した「緑町公園」には「南割下水碑」が立っています。
■【4】巨大な足が天井を突き破る「足洗邸」

本所のある旗本の上屋敷。夜になると、「足を洗え」という不気味な声と共に、天井をバリバリとつきやぶり、すね毛に覆われた巨大な「足」が降りてくる。
家の人間が足を洗うとまた天井裏に戻っていく。洗わないでいると、家中の天井を踏み抜いて暴れるので、その旗本は同僚と邸を交換したところ二度と現れないようになった。
「足洗邸」があったとされる場所 墨田区亀沢4丁目12付近、三つ目通りと北斎通りの北東。
そして、話は【その2】に続く。
いつまでも追いつけない「送り提灯」とは……
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