■相撲のまわしについている「下がり」

大相撲の本場所の取り組みを見ていると、稽古中と違い、力士たちのまわしの前側に「のれん」か「フリンジ」のような紐状のものが何本も下がっていることに気付きます。

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この紐のようなものは「下がり(さがり)」と呼ばれ、本場所の土俵で相撲を取るときには横綱から序ノ口の力士まで、全員がまわしに付けることになっているものです。


実はこれは単なるまわしの飾りではなく、本来は十両以上の力士が「土俵入り」をする時に着用する化粧まわしを簡略化したものだったということをご存知でしょうか?

■化粧まわしが紐状に変化した理由は「取組中に邪魔だから」!

元々力士は、土俵入りのときに着けている化粧まわしをそのまま着けて取組を行っていました。

ただの飾りではなかった。力士のまわしに付いてる”のれん”みたいな「下がり」本来の目的は?


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でも相撲を取るときに大きな化粧まわしを締めていたら、どう見ても相手のまわしを取って投げるような動きをするときに邪魔になりますよね。

そこで江戸時代の半ばころになると、相撲を取る時には化粧まわしの前に垂らす「前垂れ」と呼ばれる部分のない、現代のようなまわしを着用して土俵へ上がるようになりました。

しかし化粧まわしの前垂れの下側に付いているフリンジ状の装飾だけは、簡略化された「下がり」となって残されました。その際「ゲンをかつぐ」という意味で「下がりの本数は奇数」と決められました。偶数だと2で割ることができるため「土俵を割る」に繋がり、縁起が悪いというわけです。

また現代の下がりは、取組の最中にまわしから外れて落ちてしまうことがよくあります。
これは、まわしの前褌(まえみつ)に固定されていた下がりに指を引っかけてケガをする力士が続出したことから、簡単に外れるように改良されたためです。

■下がりも化粧まわしも、本来の目的は…?

そんなに簡単に外れてしまうということは、下がりは単なるまわしの「飾り」で、大きな意味のあるものではないのでは…?と考える人もいるかもしれません。

しかし相撲とは、土俵上のちょっとした所作にまできちんと意味があるものです。

下がりやその原型の化粧まわしもその例に漏れず、「大事なところを隠すため」という大切な目的がありました。

何らかの原因で取組中にまわしが外れた場合、その力士は「不浄負け」という反則負けとなりますが、同様に相手力士の大事なところをつかむのも反則であることは言うまでもありません。


化粧まわしが簡略化された下がりでは、万が一まわしが外れた際に隠す役割は果たせないかもしれませんが、「ココをつかむのは反則ですよ!」という意味で残されていると考えると、納得ですね。

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■関取と幕下以下の下がりにはこんな違いが!

さて本場所では、十両以上の関取は締込みと呼ばれる絹製のまわしを締め、幕下以下の「力士養成員」は稽古のときと同じ黒い雲斎木綿のまわしを締めて土俵に上がります。
このような関取と幕下以下の力士の違いは、下がりにも存在します。

実際の十両以上と幕下以下の取組の映像を見比べると、関取の下がりは蹲踞の姿勢を取るため左右に分けた時に後方へピンと張っているのに対し、幕下以下の力士の下がりは身体に沿って垂れ下がるくらい柔らかいことが見て取れます。

実は関取の下がりは「布海苔(ふのり)」で固められているのですが、幕下以下のものにはその加工が施されていないため、このような形状の違いが現れるのです。

布海苔で固めた下がりは、取組の最中に折れてしまったとしても、濡らしてまっすぐにして干せば元通りのピンとした形に戻るのだそうですよ。

参考

  • J-CAST ニュース
    Wikipedia

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