天下統一へのバトンをリレーした織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の「三英傑」をはじめ、武田信玄や上杉謙信、伊達政宗、北条氏康、斎藤道三、三好長慶、毛利元就、長宗我部元親、島津貴久……などなど、綺羅星のごとき群雄が全国に割拠して覇権を争った「華麗なる暗黒時代」。
相次ぐ戦乱は既成の秩序を破壊し、新たな世を生み出す転機となった(イメージ)。
下剋上の嵐が吹き荒れ、実力さえあれば一国一城の主はもちろん、天下を狙うことも夢ではない……そんな野心がむき出しとなった、ある種のロマンが人気の理由と言えますが、「その戦国時代っていつからいつまで?」と聞かれると、一口で言うのは難しそうです。
学校の授業では「応仁の乱(応仁元年・1467年~文明九年・1477年)」によって室町幕府が形骸化してから、豊臣秀吉が天下統一を果たした天正18年(1590年)までの約110年間と教わりました。
しかし、戦国時代の前にある室町時代は「室町幕府の存続期間(至元2年・1336年~元亀4年・1573年)」ですから、応仁元年から元亀4年までの約100年間がかぶってしまいます。
また、戦国時代の後に来る安土桃山時代は、室町幕府の滅亡から徳川家康が江戸幕府を開いた慶長8年(1603年)までの約30年間であり、こちらも元亀4年から天正18年までの約17年間がかぶることになります。
「まぁ、どうせ時代区分なんて、後世の私たちが便宜上そう呼んでいるだけだし、その辺りは曖昧でいいんじゃないの?」
確かにその通りなのですが、それを言ったら身も蓋もありません。そこで今回は、戦国時代の範囲について、諸説の中から最長期間と最短期間を求めてみたいと思います。
■地方から中央へ……徐々に全国を蝕んでいった戦国の動乱
まず、戦国時代の始まりについて、諸説をまとめてみましょう。

永享の乱。「結城合戦絵詞」より。
こうして見ると、室町幕府の権威が弱まり、京都から遠い地方より戦乱が勃発、やがて中央でも抑えきれなくなって戦国時代へなだれ込んでいった様子が分かります。
- 永享の乱によって奥羽(東北地方)が幕府の支配を離れた永享10年(1438年)
- 鎌倉公方が関東管領を暗殺(享徳の乱)、幕府と対立した享徳3年(1454年)
- 応仁の乱が勃発した応仁元年(1467年)
- 明応の政変により、将軍家が分裂した明応2年(1493年) ……など。
九州・中四国地方では大規模な叛乱こそ見られないものの、播磨(現:兵庫県南部)の赤松氏による足利将軍の暗殺(嘉吉の乱。嘉吉元年・1441年)など中央権威を否定する志向が顕著になっており、中央から離れるほど混迷の度合いを深めていたことでしょう。
それまで天下に号令していた足利将軍の暗殺はこれが初めてであり、全国に与えた影響の大きさはもちろんのこと、西国における戦国乱世の兆候を示していると言えそうです。
■信長の上洛を機に、中央から次第に収束していった戦乱の世
一方、戦国時代の終わりについても諸説をまとめてみましょう。

左から織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。Wikipediaより。
こうして見ると、信長の上洛から島原の乱まで約70年間の開きがありますが、流石にいくら何でも島原の乱まで戦国時代と見る説は、さすがに無理があるように思えてなりません。※以降、幕末の戊辰戦争に至るまで、200年以上にわたって泰平の世が続きました。
- 織田信長が足利義昭を奉じて上洛した永禄11年(1568年)
- 織田信長が足利義昭を京都から追放した元亀4年(1573年)
- 織田信長が安土城に入った天正4年(1576年)
- 豊臣秀吉が「惣無事令」で大名の私戦を禁じた天正15年(1587年)
- 豊臣秀吉が天下統一を果たした天正18年(1590年)
- 関ヶ原の合戦で天下の趨勢が決した慶長5年(1600年)
- 徳川家康が江戸幕府を開いた慶長8年(1603年)
- 徳川家康が豊臣家を滅ぼし、戦乱の終結(元和偃武)を宣言した元和元年(1615年)
- 島原の乱が鎮圧され、大規模な軍事行動が終息した寛永15年(1638年) ……など。
ともあれ、全体を通して「戦乱の世は中央から次第に終息して行った」ようで、こちらもやはり地域によってタイムラグがあったことが分かります。
■まとめ

戦国時代の始まりと思われがちな応仁の乱だが、既に地方で吹き荒れていた風雲の集大成(表面化)に過ぎない。
戦国時代の期間をまとめると、最長で嘉吉元年(1441年。
世の乱れは地方から広がり、中央から収束していく……こうした歴史の大きな動きは、他の時代や国・民族にも当てはまるのか、興味の視野が広がって楽しくなりますね。
※参考文献:
山本浩樹『西国の戦国合戦』吉川弘文館、2007年6月
渡邊大門編『真実の戦国時代』柏書房、2015年5月
黒嶋敏『中世の権力と列島』高志書院、2012年10月
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