「あそこは(本殿の)神様にお仕えする小人や妖精さんがお祀りされているんだよ」
鎌倉・北野神社にて、境内の片隅にたたずむ石の祠(神明宮)。
かつて、園児たちの質問にそう答えている保母さんを見かけましたが、違います(苦笑)……でも、わざわざ正すのも野暮だし、ほほえましかったのでそっとしておく事にしました。
でも、せっかくなので今回は神社の境内に鎮座する小さな神社「摂社(せっしゃ)」と「末社(まっしゃ)」について、その違いを紹介したいと思います。
■主祭神との関係で決まる「摂社」と「末社」
結論から先に言いますと、摂社と末社の違いはこんな感じです。

このお社が摂社か末社かは、主祭神によって変わる。
【摂社】 本社の主祭神と(家族や主従など)関係の深い神様を祀っている神社
【末社】 摂社の条件にあてはまらない神様を祀っている神社
※合わせて「摂末社(せつまっしゃ)」あるいは「枝社(えだやしろ)」などとも呼ばれます。
基本的には摂社の方が末社よりも格上とされますが、それはあくまでその神社内での話であり、八百万(やおよろず)の神々すべての頂点に君臨する天照大御神(アマテラスオオミカミ)であっても、御祭神との関係が薄ければ末社です。
また、境内に建っていれば境内社(けいだいしゃ。境内摂社or末社)、敷地外に建っていれば境外社(けいがいしゃ境外摂社or末社)という呼び方・区分もあります。
よくある勘違いとして、総本社から分祀(ぶんし。神様の魂を分ける)した神社を人間社会の子会社みたいに「本社⇔末社」と呼ぶ方もいますが、それは「分社(ぶんしゃ)」と言います。
ちなみに、お社の大きさは神様の尊さと一切関係ありません。

鎌倉・鶴岡八幡宮。宇佐八幡宮⇒石清水八幡宮からの分社だが、御祭神(八幡神)の尊さは変わらない。
言うまでもなく、どんな状態でお祀りされていようと、神様じたいの尊さはまったく同じで、神社同士では格付けがされているものの、それもやはり人間社会の都合に過ぎません。
例えば伊勢の神宮に祀られている天照大御神と、皆さんのご家庭(神棚)に祀られている天照大御神はまったく同じ神様ですから、くれぐれも失礼にないよう心がけましょう。
■終わりに
「この祠(神明宮)に祀られているのは天照大御神で、この神社の主祭神は菅原道真(すがわらの みちざね)公だから、この祠は末社だね」

鎌倉・北野神社。後に須佐之男命(天照大御神の弟)も合祀されるが、あくまで主祭神は菅原道真公。
摂社と末社の違いを知っていれば、境内の片隅にたたずんでいる小さな祠やお社からそんなことも判って楽しいものです。
神社には主祭神だけでなく、摂社や末社の神様たちもいて、今日も私たちの暮らしを見守ってくれています。
※参考:
神社本庁 監修『神社検定公式テキスト1 神社のいろは』扶桑社、2012年2月
境内の小さな神社について|神社本庁
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