現在も親しまれている、隅田川の花火大会。

今年は中止となってしまいましたが、せっかくなので浮世絵で楽しみたいと思います。


隅田川花火大会の歴史は古く、その期限は江戸時代まで遡ります。歴史的記録の残るものとしては日本最古の花火大会となっています。

また、実は現在の「隅田川花火大会」の名称は昭和53年からと意外と新しく、それ以前は「両国の川開き」と呼ばれていたそうです。

隅田川の花火大会は、享保18年(1733)、前年の大飢饉や疫病による死者供養と災厄除去を願い、8代将軍・徳川吉宗が隅田川で水神祭を行いました。この時に、両国橋周辺の料理屋が花火を上げたのが始まりとされています。

今回は、隅田川の花火大会こと両国川開きの浮世絵を集めました。

絵師のよって、どの位置から見ているのかや花火の描き方が違って面白いですよ。

■《名所江戸百景 両国花火》歌川広重 1856~1858

夏の風物詩!歴史は江戸時代まで遡る隅田川の花火大会を浮世絵で...の画像はこちら >>


花火の浮世絵と言えばこれ!な有名な作品。

広重の名所絵シリーズ「名所江戸百景」の中の1枚です。

「両国橋」は、武蔵国と下総国の両方に架かることから名付けられました。

川開きが行われる旧暦5月28日~8月28日までは納涼期間で、川べりの食物屋,見世物小屋,寄席などの夜間営業が許可され、昼も夜も賑わっていたそうです。

打ち上がった花火が落ちていく様も、喧騒から少し離れ、高いところから見た構図も、華やかさの中に儚さも感じられる趣のある作品です。


■《両こく大花火》歌川国貞 1864年

夏の風物詩!歴史は江戸時代まで遡る隅田川の花火大会を浮世絵で楽しもう


人物を歌川国貞が、背景を喜斎立祥(きさい りっしょう)こと二代目歌川広重が担当しました。

初代歌川広重は全体を俯瞰した構図で描きましたが、こちらはもう少し近づいて、納涼船からの目線で描いています。

奥に見える、花火と屋台の提灯の赤が良いアクセントになっています。

女性の着物の模様も涼しげで素敵です。

■《両国夕涼ミの図》歌川国貞

夏の風物詩!歴史は江戸時代まで遡る隅田川の花火大会を浮世絵で楽しもう


三代豊国こと歌川国貞の役者絵です!

こちらの花火は、打ち上がった瞬間が描かれています。賑やかな花火大会を背景に、渋めカラーの浴衣が映えます。肩にかけた手拭いもおしゃれです。

薄手の羽織の表現も面白いですね。

■《東都両国夕凉之図》歌川貞房

夏の風物詩!歴史は江戸時代まで遡る隅田川の花火大会を浮世絵で楽しもう


歌川国貞の門人・歌川貞房による作品です。

真っ黒な空に真っ赤な花火が映えます。この花火はパーティーのクラッカーのような描かれ方をしていますね。

両国橋の上にわいわいと押し寄せる人々を中心に、たくさんの屋形船など賑やかな様子が描かれています。


江戸時代、屋形船を出せるのは位の高い武家や裕福な商人だけで、一般庶民は川辺や橋の上から花火を見て楽しんでいたそうです。

■《東都両国橋夕涼之景色》溪斎英泉 天保期(1830-43)

夏の風物詩!歴史は江戸時代まで遡る隅田川の花火大会を浮世絵で楽しもう


綺麗!わちゃわちゃして楽しそう!

江戸の人々の賑やかな生活音が今にも聞こえてきそうな、花火大会の賑やかさを全面に出した作品です。

色とりどりの浴衣でめいめいに楽しむ人々の様子は見ていて飽きません。

カメラのない時代に、大きくアーチを描く橋を中央に、両岸の家並みや橋の下の屋形船をやや極端な遠近法で描き、雄大で臨場感溢れるパノラマ的な構図にしたのも面白いです。

キラキラした空の表現も華やかで素敵!

■最後に

今回は隅田川の花火大会を描いた浮世絵を紹介いたしました。

花火を美しいと思う心は、今も昔も変わらないようです。

今年は中止となってしまいましたが、色とりどりの花火が夜空に打ち上がる姿を再び見られることを願っています。

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

編集部おすすめ