まだもう少し暑さは続くものの、朝夕にジワジワ忍び寄る秋の気配に、何となく焦りを感じてしまうのは筆者だけではないはずです。
さて、そんな訳で9月ですが、昔は長月(ながつき)と呼ばれていたのは広く知られているかと思います。
しかし、何で長月なんでしょうか。旧暦はすべての月が30日で統一されているから長いも短いもありませんし、月を夜の長さと見るにしても、それなら冬至の方が長いはず。
それでもあえて旧暦9月を長月と呼んだのは、何か理由があるのでしょうから、今回はそれを調べて紹介したいと思います。
合わせて、9月には長月のほかにも色々呼び方があるそうなので、そちらも調べてみましょう。
■秋の夜長を愉しむ月?
9月は何が長いのか。諸説あるようですが、「夜長月(よながつき)」が最も有力であろうと言われています。
「だから、夜の長さなら冬至の方が……」どうやら、そういうことではなさそうです。

秋の夜長を愉しむ
昔から「秋の夜長」と言うように、夜とはただ暗く陰鬱とした時間ではなく、闇に映える花鳥風月を愛でる優雅なひとときでもありました。
そう考えると、確かに寒さ厳しい真冬よりも、9月の方が長月に相応しいと言えるでしょう。
別説として、夏が過ぎると長雨が多くなるため「長雨月(ながあめづき)」や、稲穂が実って長くなる「穂長月(ほながづき)」から転じたとも言われます。
また、長い以外に「ながつき」の由来としては稲を収穫する「稲刈月(いねかりづき)」または「(稲の)根刈月(ねかりづき)」がつづまって「ねかづき」、さらに訛って「ながつき」になったとする説もあるようです。

稲作を中心にめぐる日本の四季
他にも稲が熟して実るため「稲熟月(いねあがりづき)」とも呼ばれ、それがつづまり、訛った結果「ながつき」とも言われています。
稲作文化の深く根づいた日本らしい語源ですが、筆者としては優雅な「夜長月」説を推したいところです。
■他にもたくさん!9月の別名いろいろ
9月の別称は「長月」以外にもたくさんありますから、気分や文脈に合わせて使い分けると楽しいかも知れませんね。
彩月(いろどりづき) 暑かった夏が過ぎ去り、次第に山や森が紅葉に彩られ始める時期で、紅葉月(もみじづき)とも呼ばれるようです。

山装う秋
詠月(えいげつ) 秋の夜長に月を愛でつつ歌を詠む……そんな典雅の遊びに最も適した月であることから、そのように呼ばれます。
菊月(きくづき) 旧暦9月9日は「重陽(ちょうよう)の節句」、菊の花を愛でて菊酒で健康長寿を願うイベントがあるように、菊の花が咲くから文字通りの菊月です。
※重陽の節句についてはコチラ
どんな行事?9月9日は一年間の大きな節目「重陽の節句」秋の風物詩を菊酒で楽しもう
又の名を菊開月(きくさきづき)とも言います。
青女月(せいじょづき) 青女とは、中国・前漢王朝の哲学書『淮南子(えなんじ)』に登場する霜(しも)や雪の女神。
旧暦9月は現代だと10月上旬~11月上旬ですから、確かに地域によっては霜が降り始めますね。
寝覚月(ねざめづき) 夜が長いため寝覚めがちなことからこう呼ばれますが、夏のように寝苦しくなく、また冬のように寒くないため、涼しさに気持ちよい寝覚めをこの月に当てたのでしょう。
晩秋(ばんしゅう、くれのあき) 旧暦では1~3月を春、4~6月を夏、7~9月を秋、10~12月を冬とするため、秋の最終月を「秋の晩」と呼びました。
又の名を暮秋(ぼしゅう、くれのあき)や季秋(きしゅう。

歌情こみ上げる秋の夜長(イメージ)
月の綺麗な夜に、こんな言葉を織り交ぜながら優雅に一首詠んでみたいものですね。
※令和3年(2021年)の十五夜、中秋の名月は9月21日とのことです。
2021年の中秋の名月は9月21日!十五夜のお楽しみ「中秋の名月」に関する雑学を紹介します
※参考文献:
岡田芳朗『改訂新版 旧暦読本 日本の暮らしを愉しむ「こよみ」の知恵』創元社、2015年11月
小林弦彦『旧暦はくらしの羅針盤』NHK主大庵、2002年12月
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