「いちまぁい、にまぁ~い、さんまぁい。」
このセリフといえば怪談話「番町皿屋敷」のお菊さんを思い浮かべますよね。実は番町皿屋敷の物語には元ネタとして姫路城に伝わる播州皿屋敷という話があります。
その話の中では、あまりフォーカスされてこなかったお菊さんの驚きの素性が明らかにされているのです。
皿やしき於菊乃霊 (月岡芳年 画)
■妾だったお菊さん
江戸時代より昔、戦国の頃の話です。姫路城の小寺則職(こでらのりもと)は、家臣の青山鉄山という人物に主家乗っ取られそうになっていました。
これを衣笠元信という忠臣が察知し、企てを防ぐために自分の妾の女性を鉄山の家の女中として送り込み、鉄山の計略を探らせました。この衣笠の妾こそが、お菊さんでした。
■夫のためにスパイになり大活躍
お菊さんの密告によって元信は青山が花見の席で則職を毒殺しようとしていることを突き止め、その花見の席に切り込み、則職を救出することができました。
乗っ取りに失敗した鉄山は家来の町坪弾四郎に調査するように命令し、自分の家に女中として潜り込んでいたお菊さんがスパイであったことを突き止めました。
■敵の家来からのセクハラ
お菊さんはとても美人でいい女でした。なのでスパイ調査をした弾四郎は、実はお菊さんに恋してしまったのです。
弾四郎は「お前の素性はバレているんだ!命が惜しければ俺の妾になれ!」とお菊さんを脅すというセクハラ行為に及びましたが、お菊さんは毅然として拒否しました。
■逆恨みで家宝の皿を隠す
お菊さんのその態度を逆恨みした弾四郎は、お菊さんが管理の責任を持って管理していた10枚の家宝の皿「こもがえの具足皿」のうちの1枚をわざと隠します。なんと割れた破片ではなく10枚セットの高級皿だったんですね。
弾四郎の歪んだ愛は憎しみに変わり、お菊さんに散々体罰を加え、ついには首を絞め殺して姫路城内の古い井戸に死体を捨てるという残虐な仕打ちに及びました。

葛飾北斎 画
その日以来その井戸からは夜な夜なお菊さんが皿を数える声が聞こえたといいます。ちなみに今でもその井戸は姫路城内の天守の近くに残っており、見学する事ができます。
■その後
やがてお菊さんの夫・衣笠元信らによって鉄山一味は討たれ、姫路城は無事、則職の元に返りました。
その後、則職はお菊さんの事を聞き、その死を哀れみ、十二所神社の中に「お菊大明神」として祀ったと言い伝えられています。
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