日本人で羊羹(ようかん)を食べたことがないという人は、少数派でしょう。
栗蒸しようかん
それにしても、羊羹はどのような歴史を持っているのでしょうか? なぜ、ちょっと見ただけではなんて書いてあるのかも分からないような、こんな変な漢字があてがわれているのでしょうか?
日本の、羊羹について書かれた史料で一番古いものは室町時代後期のものです。
それによると、当初の羊羹は蒸して作られる蒸し羊羹が主流でした。現在のような棹の形ではなく、生地を捏ねて形を作っていたようです。
また、日本の羊羹のルーツや、漢字で書いたときに「羊」の字が使われる理由については二つの説があります。
羊羹はもともと中国料理の点心のメニューの一つでした。羹はスープの意味で、つまり羊羹は羊のスープということです。

羊の骨髄を使った現代のスープ。羊羹の源流もこんな料理だったのかも?
ただ、このスープが具体的にどのようなものだったのかは不明です。
熱い汁状のものだったとも、餡かけ料理のようなものだったとも、スープが冷えてプルプルと固まった状態である煮凝りのことを示しているとも言われています。
■昔は一般的ではなかった
これを、中国に留学した禅僧が日本に持ち帰ったことで、日本人も羊羹を食べるようになりました。
ちなみに、この頃、羊羹の他にも猪羹(ちょかん)や魚羹(ぎょかん)といった点心、つまり猪のスープや魚のスープも一緒に日本に伝わってきたようですが、現代に残っているのは羊羹だけになっています。
しかし当時の禅僧は肉を食べることが禁止されていたうえに、日本に食用の羊はまだいませんでした。
そこで羊肉の代わりに、小豆を使用して葛粉で固める料理が生まれ、これが現在の羊羹の原型になったというのが、先に挙げた二つの説のうちのひとつです。

ラム肉と小豆
またもうひとつの説として、羊の肝臓の形をした中国のスイーツである羊肝こうというものが羊羹の原型になったというものもあります。
いずれにしても、羊羹が中国に由来することに違いはなさそうです。
より現代のものに近い練り羊羹の始まりは1589年。鶴屋という和菓子屋の五代目岡本善右衛門が、豊臣秀吉に献上したのが始まりと言われています。
■国内外で愛される羊羹
現在のような寒天と甘いあんこを使用した羊羹が作られるようになったのは、一般市民にも砂糖が手に入りやすくなった江戸時代後期のことでした。
現代では冷たくて喉越しの良い水羊羹などもあって、夏にも美味しくいただけるスイーツというイメージがありますが、昔は冬のおせち料理の菓子メニューの定番でした。
というのも、羊羹は作る過程で「冷やす」という作業が必要だったからです。それが現代は、冷蔵技術の進歩によって、どんな季節でも羊羹を楽しめるようになったのです。

芋ようかんとあんこ玉
このように、中国から伝わり日本で独自の発展をした羊羹ですが、戦時中に満州や韓国に伝わったことをきっかけに中国に逆輸入もされています。
この、逆輸入された和製スイーツは中国ではヤンカンと呼ばれ、定番の小豆や栗だけでなくサンザシなどのフルーツが入ることもあるようです。
また羊羹はヨーロッパでも食べられており、パリには羊羹を専門に扱うお店があったり、羊羹オンリーのイベントが開催されることもあるようです。
日本で進化した羊羹は国内のみならず、全世界を魅了しているのです。
参考資料
和菓子の季節.com
開運堂
和樂web
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan