皆さんは、学生時代英語の勉強をしていて、「明らかに、外国から来た食べ物なのに、パンは英語で”bread”? どうして?」なんて疑問に思ったことはありませんか?

少なくとも筆者は思ったことがあります。そして、この「パン」という言葉、実はポルトガル語由来だった知ったら、驚きませんか?

今回は、「パン」がポルトガル語から来ているということと、日本人がパンを食べるようになった歴史について、簡単に見ていきますね。
16世紀にポルトガル人が日本に来航し、西洋の文化を伝えた際、宣教師達が、カステラと一緒に食料として持ち込んでいたのが「Pao(パオン)」と呼ばれていたもの。それが日本では、「パン」として知られるようになりました。

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『南蛮屏風』より

それぞれ、スペイン語では「pan」、フランス語では「pain」と呼ばれ、いずれもラテン語「panis」に由来しています。「panis」は、元々は「食物」を意味していたが、時代が経つにつれて、小麦粉・ライ麦粉などの穀粉を水、塩、イーストなどを加え、発酵させて焼いた食品全般を指すようになりました。

一方、英語の”bread”は、ゲルマン語由来で、オランダ語のbroodやドイツ語のbrotと共通しています。その語源は、「醸造」という意味を表わす同じゲルマン語のbrauenから来ています。発酵させて作るイメージから来ているのでしょうか。

実は、16世紀の宣教師達が日本にパンをもたらした後も、日本人の間ではそれほど普及しませんでした。パンが日本人によって本格的に食べられるようになっていったのは、明治時代以降、洋食が普及していく中で、パンも輸入されるようになり、その後、食文化の一部として定着していきました。

4月12日は “パンの記念日”「パン」という言葉、実はポルトガル語由来って知ってました?




ちなみに、日本でパン作りが本格的に始まったのは、1842(天保13)年4月12日のこと。当時、伊豆に住んでいた江川太郎左衛門という代官が、長崎の料理人を呼び寄せてパン窯を作らせたのがその始まりとされています。この記念すべき日にちなみ、全国のパン屋さんでは、4月12日を「パンの記念日」、毎月12日を「パンの日」としているそうです。


現在のようにカタカナ表記で「パン」となったのは、1918(大正7)年の米騒動以後のこと。戦後になると、一般家庭の食卓にも、パンが広く普及し、今ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで手軽に手に入るようになりました。メロンパンやあんぱんなど、日本独自の文化で産まれたパンなどもあります。

朝食はトーストに目玉焼きという方も多いでしょう。日本人とパンとの歴史は浅いですが、今ではすっかりなくてはならない食文化になっていますよね。

参考

  • 小松 寿雄 ,鈴木 英夫(編)『新明解 語源辞典』(2011 三省堂)
  • 「パンの歴史と小麦」“鹿児島県パン工業協同組合”

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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