徳川家康の終の棲家「駿府城」に伝わる「異形のモノ」と七不思議【前編】
今回は、前編に続き異形のモノの正体や駿府城の七不思議をご紹介します。
■徳川幕府の公式記録「徳川実紀」にも記載が

佐脇嵩之『百怪図巻』より「ぬつへつほう」(写真:wiki)
夜空に突然、四角い月が現れ人々を驚かせた日から1ヶ月後。駿府城の庭に突然現れた、手足の指を持たない子どものような大きさの肉の塊「肉人」。
漢学者・秦鼎(はなかなえ)の随筆『一宵話』によれば、その正体は「白澤図」という書物に書いてある「封(ほう)」というもので、食べれば権力が増し武力に優れる「仙薬」だという説。
江戸時代の浮世絵師・鳥山石燕が描いた「画図百鬼夜行」にも登場する妖怪「ぬっぺふほふ」という説。
さらに、徳川幕府の公式記録「徳川実紀」によれば、「手足の指ない浮浪者」という説。
また、実はただの侵入者であったが、場内に侵入させてしまったという警護の失敗をそのまま伝えるのも憚られるので「異形のモノ」扱いにしたという説もあります。
今となっては真実は分かりませんが、多くの人が目撃したという話が伝わっているので、本当にあったことなのかもしれません。駿府城公園を散歩する際には、ちょっとそんな不思議話も思い出してみてください。
■駿府城内の七不思議とは
ある歴史書によると、江戸時代の駿府城には「肉人伝説」のほかにも「七不思議」と呼ばれる伝承があるそうです。
【1】米蔵の黒狐

黒狐(写真:photo.ac)
家臣たちが追い払ったり対策をたてたり、いろいろと手段を講じてもいつも黒狐が米蔵に忍び込んできて困った。
【2】鳴かず蛙

カエル(写真:photo.ac)
お堀に生息している蛙の鳴き声がうるさくて閉口していた家康公。家臣たちは苦労をして蛙退治をしたものの、家康公には「家康公の一喝の声で蛙が静かになりました」と告げていた。
【3】葵の鈴虫(お城の鈴虫)

美しい鳴き声の鈴虫(写真:photo.ac)
駿府城の鈴虫は、美声だと評判が高かったので、風流を好む好事家のなかには、その鈴虫を捕まえようと城に忍びこんでは捕まり牢に入れられていた。それを知った鈴虫は可哀想だと鳴くのをやめたが、彼らが釈放されると再びその美声を聞かせてくれるようになった。
【4】実割り梅

久能山東照宮参道脇久能梅林に咲く梅の花(写真:photo.ac)
駿府城には、実がたやすく割れる「実割り梅」という不思議な梅があった。
家康自身が手入れをし、実がなったら収穫して梅干しを作り久能山東照宮に奉納する習慣があった。(明治時代にこの梅は久能山東照宮に移植)
【5】ゆかず雪隠
腰元と足軽が場内の雪隠で逢い引きしているところに出くわした別の腰元が驚いて失神。腰元は「二匹の黒狐を雪隠で見た」と言ったためにその噂が広まった。
【6】枯れずの井戸
日照りが続いても城内の井戸は決して枯れることなく水をたたえていた。
【7】朝顔の謡

なぜかよくないことが起きるという朝顔の謡(写真:photo.ac)
駿府城内で朝顔のことを謡うと悪いことが起きるので、禁止になった。
■駿府城内の石垣の印

駿府城の石垣に所々残るいろいろな印((写真:photo.ac)
七不思議以外にも、駿府城には石垣に刻まれたいろいろな(一説には135種あるとか)の「刻印」があります。これは築城の課目を命じられた大名や石工が刻んだといわれていますが、必ずしもそうではないものもあるという研究家の説も。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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