2024年の大河ドラマ『光る君へ』。まだ放送が開始されたばかりではありますが、すでに物語のカギとなりそうなものとして登場しているのが、「和歌」ではないでしょうか。


当然、電話もメールもなかったような当時、自分の想いを気になる人に伝える大切な手段が和歌でした。

そこで今回の記事では、和歌の才能に優れた女流歌人、赤染衛門(あかぞめえもん)について迫ってみたいと思います。大河ドラマ「光る君へ」では、凰稀かなめさんが演じています。

源倫子に仕えた女流歌人「赤染衛門」(演: 凰稀かなめ)、和歌...の画像はこちら >>


赤染衛門(演:凰稀かなめ)©NHK

■赤染衛門とは?

赤染衛門という名前は、父・右衛門尉・赤染時用(あかぞめときもち)の氏と官名からつけられました。詳しい生没年はわかっていませんが、平安時代中期に活躍しました。

源倫子に仕えた女流歌人「赤染衛門」(演: 凰稀かなめ)、和歌の才能は百人一首にも選ばれるほど【光る君へ】


月岡芳年『月百姿』Wikipediaより

■源倫子、藤原彰子に仕える

赤染衛門は源雅信邸に出仕し、長く藤原道長の妻・倫子に仕えました。

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彼らの娘である上東門院彰子にも仕えています。なお、彰子は一条天皇の中宮となり、土御門殿(倫子の父・源雅信が建てた邸宅、のちに藤原道長が受け継ぎました)で後一条天皇と後朱雀天皇を出産している。

■赤染衛門のすごさ

赤染衛門は、やはり和歌においてその才能が特に優れ、中古三十六歌仙・女房三十六歌仙の一人に選ばれています。紫式部は、赤染衛門の和歌のことを本格的だと褒めています。

赤染衛門は良妻賢母でもありました。文章博士(もんじょうはかせ)の大江匡衡(おおえのまさひら)と結婚し、子どもをもうけています。
二人は仲が良かったと言われ、匡衡衛門と呼ばれたというエピソードも。夫を支えただけでなく、彼女は子どもの出世にも尽力したと言われています。



■百人一首にも歌が収められている

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赤染衛門 (小倉百人一首) Wikipediaより

百人一首には、赤染衛門の歌が収められています。59番の歌で、

「やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて 傾(かたぶ)くまでの 月を見しかな」

というもの。

「やすらはで」は「ためらう・ぐずぐずする」、「まし」は反実仮想の助動詞、「傾(かたぶ)くまでの」は「月が西に沈むまでの」、「かな」は詠嘆の終助詞です。

現代意訳としては、

「(あなたが来ないとわかっていたら)さっさと寝てしまったものを、(あなたの約束を信じて待っていたら)とうとう夜が更けて月が西に傾くまで眺めてしまいました」

といったところでしょうか。

待てど暮らせど来ない男を待つ女の夜の気持ちを、相手を責めるのではなく月の情景を詠んだ穏やかな表現となっています。なおこの歌は、藤原道隆を思う姉妹のかわりに、赤染衛門が詠んだものとされています。

いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも日本文化や歴史の面白さに興味を持つきっかけになれば嬉しいです。

トップ画像 左:大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより

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