日本で一番有名な陰陽師として現代でも人気が高く、昔から書籍・漫画・映画・ドラマほかさまざまな作品で描かれています。
そんな安倍晴明と、友情ともBLとも感じるような深い関係にあったのが源博雅(みなもとひろまさ)です。
晴明はさまざまな呪術を操ることで知られていますが、実は、博雅も摩訶不思議な能力を持っていました。
藤原実資(「光る君へ」ではロバート・秋山竜次さん演)に、「文筆・管絃者の才能はあるが天下を知らないうつけもの」と評された源博雅。
その人物像と、鬼にまつわるエピソードをご紹介しましょう。
■皇位継承から外された源博雅
源博雅(菊池容斎『前賢故実』)wiki
源博雅は、平安時代中期の公家で雅楽家です。
父は、醍醐天皇の第一皇子である兵部卿・克明親王、母は藤原時平の娘の長男として918年(延喜18年)に生まれました。高貴な皇族出身であったため、幼少期は「博雅王」と呼ばれていたそうです。
長男なので「皇位継承は間違いなし」な立場ながらも、母親の身分がそれほど高くなかったこと、皇子の数が多かったことなどから皇位継承は行われず臣籍降下し「源」の姓が与えられ貴族となりました。
934年(承平4年)頃、わずか15~16歳にて従四位下となり、その後中務大輔、右兵衛督、左中将、従三位となり、最終官位は従三位皇太后宮権大夫でした。
■稀有な音楽の才能に恵まれた源博雅

龍笛奏者(神奈川県鎌倉市)wiki
源博雅は、横笛・琵琶・和琴・大篳篥(ひちりき/吹き物)・箏(そう/柱がある絃楽器)・催馬楽(さいばら/平安時代に流行した歌謡の一種)など、音楽の才能に恵まれた人物でした。
その才能は高く評価され、康保3年(966年)頃に、村上天皇の命令で『新撰楽譜(長秋卿竹譜・博雅笛譜)』の作成を行いました。
優れた才能を持つ博雅は世事に疎いところもあったようで、藤原実資(ふじわらのさねすけ/「光る君へ」ではロバートの秋山竜次さん演)に、「博雅の如きは文筆・管絃者なり。ただし、天下懈怠の白物(しれもの)なり」と評されています。
一見、悪口のように聞こえますが、「雅楽の道一筋の天才だが、以外の世事はすべて雑事なのでウツケモノだ」という言葉は、博雅にとっては褒め言葉だったかもしれません。

安倍晴明のイメージ(photo-ac)
■クールビューティーな晴明とおおらかな博雅
陰陽師・安倍晴明と博雅の出会いや関係性に関する正式な記録は残されていないようですが、さまざまな作品をみると、お互いが磁石のように惹き寄せられたことが想像できます。
優れた陰陽師でありながら人と距離感を置く晴明と、貴族でありながらもいばることなく自然体で真面目でおおらかな性格の博雅。
一見線が細く人を寄せ付けない雰囲気のクールビューティー晴明と、無骨でどこか大型犬のような人懐っこさを感じさせる博雅。
そんな2人が出会い、惹かれあい・信頼し・お互いに欠かせないパートナーになっていく……そのような世界感を構築し一般的に広めたのは、夢枕獏・著のベストセラー『陰陽師』やそれを原作とした岡野玲子作の漫画『陰陽師』ともいわれています。
作品中には、「おまえがいてよかった」「可愛いところがある」などという、2人のやりとりもあり、大親友を超えたBLのような雰囲気も魅力です。
【後編】では、そんな博雅が鬼と楽器をめぐり腕を競い合うなどの不思議な逸話をご紹介しましょう。
【後編】の記事はこちら↓
親友か平安時代のBLか? 安倍晴明と深い仲だった笛の名手・源博雅が持つ不思議な能力【後編】


鬼の(曾我蕭白 雪山童子図)wiki
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