まひろ(紫式部。吉高由里子)の書いた物語を一度は遠ざけた一条天皇(塩野瑛久)ですが、やはり亡き妻をモデルにした女性がどのように描かれていくのか、知らずにはいられません。


続きを読みたいとの要望を受けて、藤原道長(柄本佑)からスカウトされたまひろ。華やかだけど嫉妬と陰謀渦巻く内裏へと乗り込んでいくことになります。

NHK大河ドラマ「光る君へ」第32回放送「誰がために書く」今回はまひろの女房デビュー前夜が描かれていました。

まひろ、いよいよ内裏へ!紫式部の先輩女房たちを予習 ほか…大...の画像はこちら >>


大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより

それでは今週も、気になるトピックを振り返っていきましょう!

■第32回放送「誰がために書く」略年表

寛弘2年(1005年) まひろ36歳
  • 2月25日 藤原伊周を「大臣の下・大納言の上」に列する宣旨が下る(御)
  • 3月27日 脩子内親王の裳着が行われる(御)
  • 3月30日 道長が漢詩の会を開く(小)
  • 7月21日 藤原公任が従二位に叙せられる(御)
  • 9月26日 安倍晴明が卒去する
  • 11月13日 一条天皇が伊周を陣定に加える意向を示す(権)
  • 11月14日 伊周を陣定に参与させる(小)
  • 11月15日 皆既月食が起きる(小)
    同日 温明殿と綾綺殿に火災が発生(御)
  • 12月29日 紫式部が初めて参内する(紫)
※小=藤原実資『小右記』/御=藤原道長『御堂関白記』/権=藤原行成『権記』/紫=『紫式部日記』

今回は藤原道長を牽制するため、一条天皇が藤原伊周(三浦翔平)を強引に取り立てていく回でしたね。

まだ潰えることのない伊周の野望は、果たして成就するのでしょうか?

そして道長に接近する藤原隆家(竜星涼)は敵か、あるいは……道長を案じる藤原行成(渡辺大知)にとって、胃の痛い日々が続きそうです。

■「儀同三司」藤原伊周について

まひろ、いよいよ内裏へ!紫式部の先輩女房たちを予習 ほか…大河ドラマ「光る君へ」8月25日放送振り返り


儀同三司・藤原伊周とその母・高階貴子(画像:Wikipedia)

劇中で「儀同三司(ぎどうさんし)」と呼ばれていた藤原伊周。この称号は正式な官職ではなく、大臣に准じる存在に列せられた伊周の自称でした。

儀同三司とは「儀(待遇)を三司と同じくする≒准じる」という意味。ここでの三司とは左大臣・右大臣・内大臣を指します。

元は歴代中国王朝(後漢~元王朝)で用いられたもので、准大臣(じゅんだいじん/おとどになずらう)の唐名として用いられました。

寛弘2年(1005年)2月25日に一条天皇から「大納言より上で大臣の下」に列せられたのをきっかけに、後の寛弘5年(1008年)には准大臣として封戸一千を与えられます。

しかし周囲は儀同三司の称号を受け入れず、正式な官職にもとづき「前帥(さきのそち。
元・大宰府権帥)」などと呼びました。

儀同三司の自称は古墳時代の倭王武(わおう ぶ。雄略天皇か?)が最古とされますが、准大臣は伊周が史上初。

そのためか「小倉百人一首」に登場する高階貴子(板谷由夏)は後世「儀同三司母」と呼ばれています。

■赤染衛門の夫・大江匡衡について

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大江匡衡と赤染衛門。いずれも菊池容斎『前賢故実』より

劇中では「夫があちこちの女に産ませた子供を私がみんな面倒みている」みたいに言っていた赤染衛門(凰稀かなめ)。

赤染衛門と言えば、夫の大江匡衡(おおえの まさひら)と大変仲がよく、人々から「匡衡衛門」と呼ばれるほどでした。

創作だから設定を変えるのも許容範囲なのかも知れませんが、ちょっと失礼なんじゃないかと感じています。

赤染衛門と大江匡衡の間には嫡男の大江挙周(たかちか)と江侍従(ごうのじじゅう。大江匡子?)の一男一女を授かりました。一説にはもう一人男子(大江持隆?大江時隆?)がいたとも。

ただし大江匡衡にも側室はおり、伴徳成女(ともの のりなりの娘)との間に大江能公(よしきみ)を授かっています。


ほか養子として林豪(りんごう。僧侶)や大江時棟(ときむね。父親不詳)らがいました。

ちなみに大江匡衡は文章博士を務めるなど高い学識を活かして活躍します。

例えば「長保」「寛弘」の元号を勧進するほか、彰子が生んだ一条天皇の皇子たちに敦成親王(あつひら。のち後一条天皇)・敦良親王(あつなが。のち後朱雀天皇)の御名を選進するなど。凄いですね。

子供の大江挙周も文章博士となって後一条天皇の侍読を務め、また江侍従も歌人として『後拾遺和歌集』『金葉和歌集』『詞花和歌集』『千載和歌集』『新拾遺和歌集』などに和歌を採録されています。

大江匡衡は寛弘9年(1012年)7月16日に61歳で世を去りますが、赤染衛門との関係は、おしどり夫婦として描いて欲しかったです。

■藤原彰子に仕える女房たち

まひろ、いよいよ内裏へ!紫式部の先輩女房たちを予習 ほか…大河ドラマ「光る君へ」8月25日放送振り返り


彰子に仕える紫式部(イメージ)

さて、内裏に出仕したまひろたちを迎える先輩女房たち。その顔ぶれをざっと予習しておきましょう。


宮の宣旨(小林きな子)源陟子(ちょくし/ただこ)。女房たちのまとめ役(中宮宣旨)。紫式部からスレンダーな美女と評されており、後に親子ほども年齢差のある藤原定頼(公任の嫡男)を魅了したといいます。

宰相の君(瀬戸さおり)藤原道綱の娘・藤原豊子(ほうし/とよこ)。みんなから慕われながらも親しみやすい愛されキャラ。紫式部からイタズラされちゃうエピソードも。

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大納言の君(真下玲奈)源廉子(れんし/やすこ)。源倫子の姪で、後に藤原道長の妻となる。二人の関係は倫子も容認していたとか。

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小少将の君(福井夏)源時子(じし/ときこ、役名か)。大納言の君の実妹。紫式部とルームシェアするほどの仲良し。
おっとりキャラ。

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馬中将の君(羽惟)藤原節子(せつし/せつこ、役名か)。何かにつけて紫式部を毛嫌いする。ちょっぴりおドジ?

左衛門の内侍(菅野莉央)橘隆子(たちばなの りゅうし/たかこ)。紫式部に「日本紀の御局(にほんぎのみつぼね)」というあだ名をつけ、悪評をばらまく。

おバカキャラを演じていても…紫式部の才能に嫉妬した同僚が彼女につけたあだ名がこコチラ【光る君へ】
まひろ、いよいよ内裏へ!紫式部の先輩女房たちを予習 ほか…大河ドラマ「光る君へ」8月25日放送振り返り


果たして彼女たちがどんなキャラクターに描かれ、まひろとどんな関係を築いていくのか注目ですね!

■第33回放送「式部誕生」

道長(柄本佑)に頼まれ、まひろ(吉高由里子)は彰子(見上愛)が暮らす藤壺に住み込みで働き始める。まひろは早速、物語の続きを書こうとするも、宮中での暮らしに慣れず、思うように筆は進まない。悩んだまひろは、道長の反対を押し切り、家に戻って執筆することに。この頃、一条天皇(塩野瑛久)の命で除目の儀に復帰した伊周(三浦翔平)が不穏な動きを見せ始めていた。数ヶ月後、書き進めた物語を持って藤壺を訪ねると…

※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより。

かくして始まったまひろの女房生活。しかしあらすじの通り、実家に引きこもってしまうのです。


やっぱり嫉妬と陰謀うずまく内裏は肌に合わなかったのかも知れませんね。

普通ならクビになってしまいそうですが、そこは平安時代のおおらかさ。数ヶ月後に何食わぬ顔でしれっと職場復帰、次第に馴染んでいくのでした。

予告通り「藤式部(とうしきぶ)」の女房名を授かるまひろ。これは藤原氏+父・藤原為時(岸谷五朗)の官職に由来することは有名ですね。

※この時点では「前越前守」なはずですが、このことから以前に出仕経験があるという説もあります。

ともあれ紫式部の誕生まであと一歩、次週も楽しみに見守りましょう!

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