本作は平安時代の王朝文化を楽しめるチャンスとして、多くの平安ファンを楽しませています。
筆者もその一人なのですが、やんごとなき貴族たちだけでなく、庶民たちの文化も気になりませんか?なりますよね?
ということで、今回は平安時代の庶民たちがどんな食事をしていたのか、紹介します。
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■朝食のメニュー

『病草紙』より。見たところ、ちょっといい感じの食卓(イメージ)
一般的に、平安貴族は夜明けごろに起き出して一日の活動を開始しました。
となると、彼らに仕えている雑色(ぞうしき)や下人などはそれ以前から起き出したことでしょう。
平安時代の食事は基本的に一日二食。身分の貴賎を問わず、朝食と夕食の二回でした。
主食は米。そこへ麦や粟などの雑穀や大根、芋(里芋や山芋)などをまぜて煮込んだ粥を食べたと考えられています。
副食として魚を煮たり焼いたり、また魚介や野菜などを煮込んだ羹(あつもの。スープ)を添えました。
味つけは塩や醤(ひしお。豆などを塩漬けにした汁。
甘味は甘葛(あまづら)や甜瓜(まくわうり)、柿などごく素朴な果物がメイン。これらは貴重なものでした。
また米に余裕があれば、濁酒(どぶろく)など醸造して楽しんだ手合もいたことでしょう。
言うまでもなく、ここに挙げた料理や食材が毎日毎食そろっていた訳ではありません。
各家庭の経済状況によって、食事の量や質は変動したことでしょう。
■午前中で勤務は終わるが……。

勤めが終わり、アフター5ならぬアフタヌーンを楽しむ?人々(イメージ)
さて、朝食が済んだら早々に出勤です。宿直(とのゐ)していた者も主君が起き出すのと同時に仕事を始めます。
仕事はその日によって異なり、概ね昼までに退勤時刻となりました(住み込みや宿直の者は別)。
帰宅した勤め人たちが午後は優雅に過ごすかと思えばさにあらず。家のことや副業に着手します。
男性は家畜を育てたり家屋を修繕したり、女性は洗濯やら裁縫やら、やることならいくらでもありました。
結局は夕方ごろまで生業に勤しみ、午後3:00~4:00ごろ夕食を摂ったのでしょう。
メニューは朝食と大して変わらず、限りある食糧を、朝夕のどちらに振り分けるかの違いに過ぎません。
■真っ暗な平安の夜

実際は大河ドラマみたいに明るくなかった平安の夜(イメージ)
夕食を終えると真っ暗になるので、基本的には寝るしかありません。
ここでも灯りをつけられるか否か≒ナイトライフが充実するか否かは、各家庭の経済状況によって左右されました。
もう外には出られないため、起きている者たちは内職や家事の残りでもしていたのでしょう。
蛍の光や窓の雪で勉学に励み、立身出世を志すもよし(高が知れてますが)、あるいは友達と酒を呑みながら夜更かしするのもいいですね。
ただしお世辞にも治安はよくないため、あまり遅くまで騒いでいると、標的にされるかも知れないので注意しましょう。
■平安庶民のタイムスケジュール例
- 3:00 起床
- 4:00 朝食、出勤
- 5:00 日の出、貴族たちが起床
- 12:00 退勤、帰宅
- 13:00 家事や副業
- 16:00 仕事終わり、夕食
- 18:00 内職など
- 20:00 就寝
また冠婚葬祭などのイベントがあれば、特別なスケジュールが組まれたのでしょう。
■終わりに
今回は平安庶民の日常生活について、その一例を紹介しました。
必ずしもこの通りではなかったでしょうし、というかこんな平和に一日を終えられたことがどれほどあったのか、そんなになかったのではないかと思います。
やんごとなき貴族たちの美しい生活もいいけれど、地べたを這いずり回って生きていく庶民たちの暮らしにも、なかなか心惹かれるものです。
今後彼らの生活がより詳しく、いきいきと描かれていくことを期待しています。
※参考文献:
- 成美堂出版編集部『見て楽しむ平安時代の絵事典』成美堂出版、2023年12月
- 倉本一宏『平安京の下級官人』講談社現代新書、2022年1月
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