大河ドラマ「べらぼう」のラスボス、実は田安賢丸(寺田心)?ほか…1月26日放送の振り返り&レビュー
美人画『雛形若菜初模様』では西村屋与八らに騙された(※)ものの、それで挫けるような蔦重ではありません。
(※)大河ドラマでは最初から蔦重が排除されていましたが、実際には短期間ながら「耕書堂」の名を連ねていた時期がありました。
時は安永5年(1776年)、蔦屋重三郎は吉原遊廓に客を呼び込むために更なる新作を世に送り出します。
その名も『青楼美人合姿鏡(せいろうびじんあわせすがたかがみ)』果たしてどんな本なのでしょうか。
■のぞいて見たい?吉原遊女の舞台裏

思い思いに遊ぶ遊女たち。『青楼美人合姿鏡』より
『青楼美人合姿鏡』が描いたのは、吉原遊女たちの日常光景。
花魁を気まぐれに指名できるような上客でも、吉原の舞台裏まではそうそう拝めるものじゃありません。
皆さんも、のぞいてみたくないでしょうか?華やかな遊女たちが、舞台裏でどんな生活を送っているのか。
もちろん都合の悪い部分は見せません。例えば梅毒に苦しみ、のたうち回ってくたばるような地獄絵図とか、脱走を図った遊女に対する折檻とか……。
そういう「上級者(マニア)向け」ではなく、皆さんが見たいのは、華やかな遊女たちが織り成す、キャッキャウフフ♪な「女の園」でしょう?
分かっています、そんな皆様の願いを、我らが蔦屋重三郎は叶えてくれました。
■絵師・本・内容どれも最高級!

花を愛でる遊女たち。『青楼美人合姿鏡』より。
作画は『一目千本』でもおなじみ北尾重政(きたお しげまさ)と、勝川派の筆頭格である勝川春章(かつかわ しゅんしょう)が豪華揃い踏みです。
吉原遊廓に軒を連ねる妓楼では、自慢の遊女たちが四季折々の味わいと共に遊び楽しむ様子が描かれます。
書画に和歌、双六(すごろく)遊びに香合(こうあわせ)、投扇興(とうせんきょう)など実に様々。
巻末には彼女たちによる発句まで載せられており、当時の遊女たちが高い教養を備えていたことを伝えています。
料紙も絵具も最高級のものをふんだんに用いた豪華版。吉原細見とはまた違った広報媒体となりました。
一般の本屋で販売されたほか、出演した妓楼にも置かれ、得意客への贈答用などに重宝したそうです。
■『青楼美人合姿鏡』の欠点?

読み書きする遊女たち。『青楼美人合姿鏡』より。
かくしてヒットを飛ばした『青楼美人合姿鏡』。しかしあえて欠点を挙げるとすれば、掲載内容に偏りがあることでしょうか。
商売の基本からすればしょうがない面もあるのですが、出資してくれた方(妓楼や遊女たち)だけでなく、吉原遊廓を余すことなく網羅して欲しい……というのは消費者のワガママと言うものですね。
偏りがあってもこれまで多くの人々にとっては未知の世界であった吉原遊廓の舞台裏がのぞけるなら文句はありません。
色鮮やかに描き出された吉原遊女たちの姿に、人々は大喜びしたことでしょう。
■終わりに
二世紀半の歳月を越えて、令和の私たちに吉原遊女のあり姿を伝えてくれる『青楼美人合姿鏡』。
果たしてNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」では、横浜流星演じる蔦屋重三郎が、どんな創作秘話を演じてくれるのでしょうか。
以前に自分を騙した西村屋与八(西村まさ彦)や鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)、鶴屋喜右衛門(風間俊介)らの鼻を明かしてくれるのか、今から楽しみにしています!
※参考文献:
- 『時空旅人別冊 蔦屋重三郎 ~江戸のメディア王と波乱万丈の生涯~』サンエイムック、2025年2月
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan