■想いを血判や爪に込めて
お客への気持ちアピールの一つが、起請文(きしょうもん)です。これは、自分の行いを神仏に誓うことを記した文書のこと。熊野神社などが発行する誓紙に、指先をちょっとだけ切って血を出して血判を押していました。遊女は75枚まで発行できたというから、相当数の起請文をいろんな客に渡していたのでしょう。
遊女が自らの爪をはいで客に渡すという放爪(ほうぞう)というのもありましたが、自分の爪を本当にはいでしまったら仕事になりません。なので、妹女郎の爪をあたかも自分の爪のように渡していたのです。
断髪は、その名の通り髪の毛を切って渡すというもの。相手に直接髪を切ってもらうのが原則なのですが、妹女郎の髪を前もって切っておいたのを渡した遊女もいたとか。
■わたしの小指をあなたにあげる
もっと凄まじいものになると、切指なんてものもあります。遊女が自分の小指の第一関節から上を切って客に渡すというもので、もらった男は誰にも言わず、桐箱やお守り袋に入れて肌身離さず持っていました。中にはニセモノの指を用意する遊女もいたようです。
痛みを伴う愛の証には、入れ墨もあります。

もし、ほかの人の名前を彫りたくなったら、まず灸をすえるなどをしてケロイド状にして焼き消し、皮がむけたら次の名前を彫りました。なんとも痛そうですよね…。遊女の入れ墨は、客自身に名前を腕に直接書いてもらい、その筆跡通り彫るというのが一番喜ばれたとか。
といっても、これも偽物が多かったようです。彫らずに墨で名前を書いておき、それをちらりと客に見せていた遊女もいたそう。照明もさほど明るくないので、ばれることもなかったのです。
こういった遊女のあの手この手に引っかかるのは、野暮な武士、そして地方から出てきた商人や農民がほとんど。遊び上手ではない男子には、遊女の甘い言葉がテキメンに効いたのですね、きっと。
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