読本や滑稽本で仕掛本があるように、春本(艶本)でも仕掛本はありました。歌川豊国も春本に仕掛挿絵を取り入れており、「逢夜鳫の声」(文政5年)でも、至るところに仕掛けが見られます。
歌川豊国「逢夜鳫の声」より


文政6年(1823)に非公刊の「絵本開中鏡」のある頁では、見開きで濃厚な男女の関わりが描かれたかと思うと、次の頁には上位になっている女性が骸骨になっています。
豊国には、歌川国安や歌川国貞といった優れた弟子もいました。歌川国安の春本「花勝美色結綿」では、右頁の下半分を上に折り曲げる仕掛けになっており、歌舞伎役者とオンナ浄瑠璃の竹本小傳(おでん)とのスキャンダルを描いています。
そして、春本の多さでは圧倒的な歌川国貞も、もちろん仕掛絵を手掛けています。文政8年(1825)に、春本の第一作「百鬼夜行」で、吉原遊郭の花魁がトイレにいくところを仕掛絵にしています。トイレの扉の部分を右に折ると、女郎が用を足している姿があらわになるという仕掛けだそうな。
■春画といえば恋川笑山
ほかにも、仕掛絵を描いた絵師はおり、例えば恋川笑山。彼は、春画を得意とする絵師として、知られています。「釋花八粧矢的文庫」では、男2人が女3人を相手に楽しんでいる仕掛け絵、「仮宅花の栞」では、花魁を相手に男女3組の性交図が展開するとう仕掛け絵など、様々な工夫を凝らしていました。
刊年不評、絵を描いた人もはっきりわからない「婦女熊阪精水記」には、インパクト抜群の仕掛け絵があるとか。右半分を上へ捲って左頁の下半分を開くと、縛られた2人の男が1人の女に弄ばれている図が現れるという仕組み。
こういった仕掛春本は、仕掛なしの春本と比較すると、ごく僅か。この先、ますます目にする機会はなくなるかもしれません。もし機会があったら、ぜひ仕掛絵本を見てみてくださいね。
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