あたぼう 「あたりまえだ、べらぼうめ」を短くしたもので、「言わなくてもいいってことよ」という意味が込められています。野暮なことが嫌いな江戸っ子らしい素敵なことばですよね。
とんちき とんまの「とん」といんちきの「ちき」がくっついて、「とんちき」になったそう。バカよりトンチキのほうが、なんとなく相手への愛情のようなものが伝わってきませんか?相手にバカだなぁといいたいときも、ユーモアを忘れないことばにするのが、江戸っ子らしいです。
また、江戸っ子の性格を上手く言い表している江戸ことばも、ありました。
啖呵(たんか)を切る 威勢よく話すことをこういいますが、まさに江戸っ子ですよね。でも、啖呵をきった後はグチグチといいません。つまり、いつまでもあのときはこうだったとか文句は言わないのです。
「啖呵」は咳や痰の出る病気「痰火」のことで、その病を治すことを「切る」と言いました。
宵越しの銭は持たねえ その日に稼いだお金をぱっと使うのは、気風の良さを表すこと。ケチケチするのは、とっても野暮で嫌われていたようです。江戸は仕事が分業化していたのもあり、「仕事がない」と困る人はほとんどいませんでした。

歌川広重『東都名所 芝居町繁栄之図』
江戸ことばは、心を和らげるのにぴったりのツール。近頃は、電車の中でも、足を踏まれただの踏んでいないだの、些細なことで喧嘩をする大人を見かけることもしばしば。もし、江戸っ子だったら、足を踏まれたとしてもユーモアある江戸ことばで切り返すのかもしれません。言葉は、想像力そして思いやり。そう思うのです。現代に生きる私たちは、江戸言ことばからたくさん学ぶことがありそうですね。
参考文献:柳亭左龍 (2008)『使ってみたいイキでイナセな江戸ことば』小学館.
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