京都・奈良・鎌倉などの古都へ観光に出かけると、神社やお寺を参拝する機会が何度も訪れます。皆さんは神社やお寺でご利益を願い、両手を合わせることでしょう。
しかしひと言で「手を合わせる」と言っても、神社とお寺ではその作法が異なっています。それぞれの正しい参拝方法について、まずは今一度おさらいしましょう。
神社
神社を参拝する際には、「柏手」を打つのが特徴です。お作法は、手水舎(ちょうずしゃ)で両手と口を漱いで心身を清めてから本殿へ進み、鈴を鳴らしてから賽銭箱に賽銭を入れ、「二拝 二拍手 一拝」が基本です。
お寺

お寺の場合も、手水舎で手と口を漱いで心身を清め、お賽銭をあげ、あれば鈴を鳴らす所は神社と同じですが、柏手は打たずに合掌して一礼するところが、神社とは異なっています。
お寺によってはお線香をあげたり、護摩木を燃やしたりする場合もあります。
■作法が異なるのはなぜ?
神社とお寺の参拝作法で最も異なるポイントは「柏手を打つか打たないか」です。なぜ、このような違いが存在するのでしょうか。
神社の場合は、中国の史書として有名な「魏志倭人伝」にある「倭人の貴人に対する風習」が参考になります。
それによると日本の昔の人達は、貴人に対して「最も敬意を表す作法」として両手を打ち、ひざまづいて拝礼をしていたとのことです。そこから、神様を祀っている神社でも神様に敬意を表すために同じように柏手を打ち、それが現代まで受け継がれ、続いてきていることが伺えます。

一方、お寺の場合も同じように両手を合わせますが、柏手は打ちません。
仏教の発祥の地であるインドでは「右手が清らかな手、左手が不浄な手」とされているのは、よく知られていますよね。仏様の前でこの2つの手を合わせるということは、「仏の象徴である清浄な右手」と、「人間を表す不浄な左手」を合わせるということで、「仏様と一体になる」という意味があるのです。
また、合掌した手で暴力的な振る舞いはできないことから「相手に対して暴力的な意思はありません」という意思を表す動作でもあります。お坊さんは挨拶をする時にも、相手に対して合掌して一礼しますが、それにはこういう意味が込められていたのです。
某TVのCMで「おててのしわとしわを合わせて幸せ。な~む~」というのがありましたが、これは非常に的を得たキャッチフレーズですね。
いかがでしたでしょうか?神社とお寺の参拝の作法を間違えてしまうと、神様や仏様がびっくりしてしまいます。寺社巡りを心おきなく楽しむために、それぞれの正しい参拝方法を確認しておきましょう。
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