以前筆者は、正座は日本の伝統的な座り方ではないことを記事にし、正座が日本人の伝統的な座り方とされる経緯を紹介しました。

正座は日本の伝統的な座り方ではなかった?なぜ「日本人の正しい座り方」になったのか?

これは、お茶の世界でも当てはまることで、元々は茶道において正座をしなければならないという決まりはありませんでした。


茶道を完成させた千利休の時代にも、茶道には正座という作法は存在しませんでした。当時は、身分によって正しい座り方というものがあり、片膝をたてたり胡坐をかいたりと、身分によって座り方はさまざまでした。

明治時代の教育で浸透?「正座」は茶道における伝統的な姿勢では...の画像はこちら >>


そういえば長谷川等伯によって描かれた利休の肖像も正座ではなく胡坐をしている(Wikipediaより)

茶道の世界において、「正座」がいつごろから正しい座り方として認識されるようになったか、詳しくはわかりませんが、少なくとも江戸時代の中頃には茶道のお作法としての正座が正しい所作だと認識されるようになったようです。

そして、それをさらに助長したのが明治時代の教育。明治期になって国民が近代教育を受けられるようになると、「体育」や「修身」の時間に正座を模範的な座り方と教育するようになり、正座という座り方が広く国民に浸透するようになったのは前にお話しした通りです。

また、「正座」という所作が広く国民に浸透するようになった結果、当時の日本家屋も正座に適した造りに変化していったということも考えられます。

「最近の日本人は正座もできない」とは年配者が若者に向かってはくお小言でもありますが、そもそも座り方の所作なんてものは、時代や文化によって大きく異なるものなのです。

最近では、生活様式の変化で正座ができなくなった人も増えてきたこと、足の不自由な人が気軽にお茶席を楽しめるように、「正座をしない茶道」というものも浸透しつつあります。

また、「立礼」といわれる作法もあるようです。これは、点茶盤と称するテーブルに風炉釜(ふろがま)・水指(みずさし)を置き、椅子(いす)に腰掛けて行う作法で、明治初めに裏千家が外国人客をもてなすために考案したとつたえれています。

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