■「上品」「下品」は仏教用語!?

皆さんは、他人の身なりや行動を見て「あの人は上品ね」「あの人は下品だな」と思ったことはありませんか?

普段何気なく使っていることの多い「上品」「下品」という言葉ですが、改めてその意味や由来は?と問われると、なかなか答えにくいのではないでしょうか。

そもそも「品」とは、なんのことを指しているのでしょう?

実はこれ、どちらも仏教から来ている言葉だったのです。


■死後に極楽浄土へいくときにかかわってくる「上品・下品」

「上品(じょうぼん)」「下品(げぼん)」は、仏教の宗派の1つである浄土宗の教えの中の「九品(くほん)」から来た言葉です。

これは人間の品格を9つに分けたものですが、生前の「品格」つまりその人の「人柄・性格・言葉遣いや行い」などは、亡くなった後の「往生」にかかわってくるのだと言います。

お寺にある阿弥陀如来像を見ると、必ず独特の手の組み方をしていますよね。

浄土宗の教えによると、人間が亡くなるときには極楽浄土から阿弥陀如来がやってきて、その人の品格による往生のしかたを9種類の「印(いん)」という手の組み方で示すのです。

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その9つは、上から順に

・上品上生(じょうぼんじょうしょう)
・上品中生(じょうぼんちゅうしょう)
・上品下生(じょうぼんげしょう)
・中品上生(ちゅうぼんじょうしょう)
・中品中生(ちゅうぼんちゅうしょう)
・中品下生(ちゅうぼんげしょう)
・下品上生(げぼんじょうしょう)
・下品中生(げぼんちゅうしょう)
・下品下生(げぼんげしょう)

となり、いちばん品がいいのが「上品上生」、いちばん悪いのが「下品下生」となります。

■「上品」「下品」の他に「中品」も存在した!

ところで、あまり日常生活で
「あの人は上品でも下品でもなく中品ですね」
とは言いません。

しかしこれらのことからもわかるように、「品」には「上品」「下品」の他に「中品」も存在します。

「中品」と聞くと、まるで「凡人」のようなイメージを持ってしまいがちです。
しかし「中品とされる人」についてそれぞれ見てみると

・中品上生・・・八戒など諸々の戒律を守り、悪業を行わない者
・中品中生・・・1日24時間八戒を守り、常に礼儀正しい者
・中品下生・・・父母に孝行し養い、世間に対して仁と義を守り、慈みの心を実行する者

とあり、それなりに立派な行いをしていた人々だということが分かります。

語源は仏教用語!「上品」と「下品」だけではなく実は「中品」もあった?


「鎌倉大仏」として知られる「銅造阿弥陀如来坐像」

「上品・下品」の意味は元々のものとは変化しているものの、「品」が「人柄・性格・言葉遣いや行い」を指していたということは、現代のこの言葉の使われ方にも通じるものがあります。

仏教は現代でも、日本の文化に深く関わっているものなのですね。

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