先日、こんな質問がありました。

「よく、憎らしいほど平然としている様子を『いけしゃあしゃあ』って言うけど、なんで『いけしゃあしゃあ』って言うんだろう?」

「いけしゃあしゃあ」の語源は何?調べた結果をいけしゃあしゃあ...の画像はこちら >>


言われてみればよく使う言葉ですが、その絶妙な語感に納得していたのか、語源にまで思いを至らせたことがありませんでした。
そこで今回は、この「いけしゃあしゃあ」について、興味の湧いたが吉日、とその語源を調べてみました。

さっそく「いけしゃあしゃあ」について調べた結果を、簡単にまとめます。
※諸説ありますが、ここでは解りやすいものを採用しました。

使われ始めたのは江戸時代から。 用例に「入髪で いけしゃあしゃあと 中の町」―『誹風柳多留』など。余談ながら入髪(いれがみ)とはウィッグのことで、中の町とは地名(現:東京都港区赤坂)です。

「いけ+しゃあしゃあ」で構成される。 「いけ好かない」「いけ図々しい」と同じで、「非常に『しゃあしゃあ』としている」という意味で用いられます。

「いけ」は、人や物事について激しくディする(卑下の強調)目的で用いられる接頭語。 「いけ」は「厳(いか)めしい」を語源とする「いかい」の関東訛り「いけえ」の短縮形で、若者が物事について、「(良くも悪くも)すごい」というニュアンスで「いかちぃ(厳つい)」と表現する感覚に通じます。

「しゃあしゃあ」は、水などの液体が滑らかに流れる擬音。 基本的にはひらがな表記ですが、そのケロッとした厚かましさからか、当て字で「酒々」とか「酒蛙々々」などと表記されることもあり、「蛙の面に水」的なニュアンスが感じられます。


以上をまとめると「いけしゃあしゃあ」の語源は「いかつい+流水の擬音」であり、それが転じて「とてもあっさりした態度」を表わす言葉となったようです。

そしてその背景には「そんなに平然としていられる状況や立場じゃないだろう!?」「厚かましいにも程がある!」等々の怒りや苛立ちが込められています。

■終わりに

「何だよ、この野郎『いけしゃあしゃあ』と……」連日の不誠実な報道に接するたびうんざりする言動が目に余る昨今。「正直者が馬鹿を見る」世の移ろいを、誠に寂しく感じます。

「巧詐は拙誠に如かず(意:うわべの巧みさは、拙い真心にかなわない)」

今からたった百数十年前、我利々々(ガリガリ。己の利益ばかりを求める)とした生き方を恥とした時代の奥ゆかしさが、身近な言葉のそこかしこに残されています。

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