近ごろのパワースポット流行で熱心にお参りされる方もいれば、お正月の初詣やお祭りの時くらいしかお参りしない方もいると思いますが、せっかくなので、お参りする時に屋根を見上げてみると、ちょっと面白いかも知れません。
出雲・須我神社。
一口に神社と言っても、その建物(社殿)には色々とスタイルがあり、それぞれの個性がより濃く表れているのが屋根だからです。
それぞれのスタイルを細かく紹介していくと飽きてしまうかも知れないので、ここではざっくり「仏教スタイル」と「神道スタイル」の2つに分けて紹介します。
「仏教スタイル」とは寺院に倣った建築様式、「神道スタイル」とは日本古来の建築様式にのっとった伝統的な建築様式を、それぞれ便宜上呼んだものです。
今回はその「神道スタイル」から、屋根の上にある「千木(ちぎ)」と「鰹木(かつおぎ)」について紹介したいと思います。
■千木(ちぎ)
千木とは屋根を組む際に交叉させた材木で、特にその先端部を言いますが、やがてその名残として屋根の上から載せる装飾的な「置千木(おきちぎ)」なども登場しました。

第62回神宮式年遷宮シンボルマーク。屋根から2本突き出ているのが千木。
社殿の中で最も高い位置にあることから、神様の威儀を示すパーツとして重要視され、『古事記』で大国主命(おおくにぬしのみこと)が自分の治めていた葦原中国(あしはらのなかつくに。現代の日本)を譲る条件として
「千木が高天原(たかまがはら。神々の住まう天上の世界)まで届くような神殿を造ってくれたら、私はそこで隠居しましょう(意訳)」と持ちかけたエピソードは有名です。

内削ぎと外削ぎの違い
また、千木の先端部には「内削ぎ(うちそぎ)」と「外削ぎ(そとそぎ)」の2パターンがあり、上端が水平に切られている「内削ぎ」なら女神が、垂直に切られている「外削ぎ」なら男神が祀られていることが多いです。
※複数の神様が合祀されている場合など、例外も多々あります。
■鰹木(かつおぎ)
屋根の棟(むね)と直角に置かれた材木で、元々は葺いた屋根材が飛ばされないように置いた重石の名残などと考えられています。

奥に見えるのが鰹木。Wikipediaより。
両端が細く中央の太い形状が鰹に見えるためそう呼ばれたそうですが、中には「勝男木」などと当て字されていることもあります。
鰹木の本数は神社によって2本から10本までありますが、一般に奇数なら男神が、偶数なら女神が祀られていると言われています(これも、例外はたくさんあります)。
■まとめ
神社の屋根から神様の性別が判ると、予想するのが楽しくなります。

出雲大社の境内・野見宿彌神社。よく見ると屋根の千木は外削ぎ、鰹木は3本なので、男神です。
中には「千木の削ぎや鰹木の数はあくまで俗説」という意見もありますが、けっこうな確率で当たるので、難しいことは抜きにして、ゲーム感覚で楽しめばいいのではないでしょうか。
こんな小さなことでも、知っていると神社の参拝が楽しく、愛着も湧いてくるものですから、今度お参りされた時、良かったら屋根を見上げて欲しいと思います。
※参考文献:
神社本庁監修『神社検定 公式テキスト1 神社のいろは』扶桑社
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