オランダが世界に誇る印象派の巨匠、フィンセント・ファン・ゴッホ。彼が19世紀後半~20世紀初頭にかけてのジャポニズムという日本趣味ブームに大きな影響を受けていたことは有名です。


彼は日本から流出した浮世絵を多く収集しており、有名な「タンギー爺さん」など、自分の作品にも浮世絵を登場させました。

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そんなゴッホが、ほとんどそのまま模写した浮世絵がある事をご存知でしょうか。

その1つが歌川広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」です。今回はその作品をそれぞれ並べて見比べてみたいと思います。

■浮世絵は平面、西洋画は立体感

広重のオリジナルの作品とゴッホの模写とをそれぞれ見比べると、浮世絵に顕れた日本特有の画法と、西洋画法との違いが浮き彫りになります。

歌川広重の「名所江戸百景」とそれを模写したゴッホの作品を並べ...の画像はこちら >>


広重「大はしあたけの夕立」とゴッホの模写

浮世絵の特徴はモチーフがすべて平面に描かれることです。橋脚ひとつ取っても、広重のオリジナルは立体感をつけておらず黒に近い灰色一色で平面的に摺らせています。かたやゴッホは黄や緑、赤茶など絶妙に混ざりあった色彩を濃厚に塗り重ね、立体感を表現しています。

■水の表現にそれぞれの真骨頂あり!

隅田川の描き方に関しても、違いは一目瞭然です。広重の作品は青の色彩をじつに繊細な淡い色味で表現し、よく見ると浮世絵にしか見られない技法、木目を生かした「木目摺り」を見ることができます。

さりげなく摺られた木目の輪は、水面を雨に打たれて静かに広がる隅田川の波紋のようにも見えます。一方、ゴッホの水の表現はまさに印象派画家の真骨頂ともいうべきでしょう。


様々な濃淡の青や緑、黄色、白などが幾重にも塗り重ねられ、空の光を映してさざ波だつ幻想的な水の質感を表現しています。

■遠景も・・・

遠景を見ると、まさにゴッホが「明」、広重が「暗」ではっきりしていますね。実は広重の「大はしあたけの夕立」は、当初もう少し明るいトーンで摺って蔵の灯りなどもちゃんと描かれていました。

しかし主題となる手前側の情景を一層強調する意味で、遠景をあえて真っ暗にするという改良を加えたようなのです。そうすることで画面にメリハリが生まれ、後世に語り継がれる名作が生まれました。

さて、今回は広重の作品とゴッホの模写を見比べましたが、どちらもそれぞれ良さがありましたね!たまにはこうした見方をしてみると新たな発見もあり、浮世絵がますます面白くなるように思います。

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